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日本のテレマティクスに危機?ボルボに搭載されたGoogleの新システムが凄すぎる!

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日本のテレマティクスに危機?ボルボに搭載されたGoogleの新システムが凄すぎる!

 どうやら本気(マジ)のようである。ボルボは9月1日にマイナーチェンジを行ったプレミアムSUVである「XC60」を始め、「S90」「V90」「V90クロスカントリー」にGoogleと共同開発した全く新しい「インフォテインメントシステム」を世界初として搭載した。

 CASE時代におけるカーナビも含めたインフォテインメントシステムは通信を活用することで利便性や安全性を大幅に向上させる。(※C=Connected〈コネクティッド〉、A=Autonomous〈自動化〉、S=Shared〈シェアリング〉、E=Electric〈電動化〉)

自由度が高いはずの電気自動車のデザイン!! なぜガソリン車と代り映えしないのか?

 そこに満を持して投入されたのが今回のGoogleとボルボの協業だ。これらを含め、インフォテインメントの世界は大変革の時期を迎えたと言ってもいい。将来も含めたその可能性についても探ってみることにする。

文/高山正寛 写真/萩原文博、ボルボ

[gallink]

■なぜ、Googleはボルボと(最初に)組んだのか?

Googleと共同開発したインフォテインメントシステムを世界初搭載したボルボ XC60

 今回のシステムを解説する前に、表題のような疑問が湧いてくる。

 全てを知ることは難しいが、まずIT領域において経済やテクノロジーを牽引しているのが「GAFA」であることは多くの人が知っているだろう。

 G=Google、A=Apple、F=Facebook(※現在はMetaに社名変更)、A=Amazonの略だが、最近はマイクロソフトを加えて「GAFAM」と呼ぶ場合もある。

 これらの企業の特徴はそれぞれ異なるが、共通して言えるのは何よりも決断も含めたビジネスのスピード感、いや実際に開発におけるスピードも極めて早い。

 IoTの世界においては、自動車メーカー側も従来のやり方では追いつかないことはよく理解しているが、関係者によれば、ボルボの場合は他の自動車メーカーに比べて発想の柔軟さも含め、新しく良い物はどんどん取り込んでいこうという考えがあるそうだ(実際決断も早い)。

 これまでインフォテインメントの世界で言えば、ボルボは「SENSUS(センサス)」と呼ばれるシステムをすでに展開してきた。

 これ自体の完成度は全体的に高いものの、他社が通信を積極的に活用したテレマティクスサービスを実装していたのに対し、SENSUSはどちらかと言えば従来のカーナビ+AV、これに車両制御等を組み合わせたもの。言い換えれば「スタンドアロン型」で、それが他社に比べて出遅れた格好になっていた。

 もちろんすでにクラウドを活用したインフラを構築しているメーカーよりはこれから(2017年より前)参入しようというメーカーの方が当然Googleもやりやすいし、またボルボ側もIT界の巨人であるGoogleと組めるメリットは計り知れない。

 その点ではタイミングも含め、ボルボには先見の明もあったのかもしれないが、いずれにせよ、後述する革新的なシステムを“世界初”として搭載したボルボの名誉は一生残ることになる。

 余談だが、Googleに限らず、IT企業は特定のメーカーを組むことを声高らかに謳うことはあまり良いと考えていないようだ。理由は簡単、Googleにせよ、今後世界のインフォテインメント領域を制覇するためにはひとつのメーカーの「色」が付くのは避けたいからだ。

 ただ事実は事実である。グローバルではXC40のBEV、ポールスターIIに続いてXC60と90シリーズの順で発売していたが、日本では前2車は未導入。

 すでに発表された新世代BEVであるC40と日本で最も売れているボルボ車であるXC60などに最初に導入することでブランディングも含め、ビジネス上のインパクトも十分与えることに成功するわけだ。

■スマホは不要、システム自体でGoogleの多彩なサービスが使える

ボルボ XC60。センターの縦型液晶モニターで新システムにアクセスする

 さて、この新システムは実際どのような仕組みで何ができるのだろうか。

 これまで、車載用インフォテインメントシステムでは各社独自の規格を除けば、Googleの「Android Auto」とAppleの「CarPlay」が代表的なものであることは多くの人が理解しているはずだ。

 これらは基本スマホと対応する車載機器を有線または無線により接続することで、スマホ内にインストールされているカーナビアプリやエンターテインメント系、さらにSNS系アプリなどを車内で活用できるもの。とはいえ、これ自体は認知度自体は高まっては来たものの、まだまだ“発展途上”の段階である。

 一方、今回の新システムは2017年5月にボルボとGoogleが共同開発した「Android Automotive OS」がベースとなっている。

 ざっくりと言ってしまえば、従来スマホ側に組み込まれたOSを車載器側に持たせることでスマホ無しでGoogleのサービスをワンストップで利用できるわけだ。

 このために、今回ボルボでは待望のテレマティクスサービスである「Volvo Cars app(ボルボ・カーズ・アプリ)」をスタートさせた。通信は4Gで専用モジュール(日本国内におけるキャリアはソフトバンク)を搭載することで、後述するGoogleの各種サービスのほか

【1】緊急通報サービス
【2】故障通報サービス
【3】盗難車両検索機能
【4】ドライビング・ジャーナル(ドライブログ自動作成機能)
【5】ビークルダッシュボードモニター(車両情報確認機能)
【6】リモートドアロックおよびアンロック機能
【7】エンジンリモートスタート

 が使えるようになる。

 ちなみに【1】と【2】に関しては新車登録時から15年間、それ以外は4年間無料で使えるが、その後は有償となる。ボルボはサブスクリプションを活用した料金プランを計画しているようだが、詳細な内容はまだ未定である。

 ただ、プレミアムブランドといえ、いきなり高額のサービス料金が請求されるのはユーザー側も納得できないはず。現状イメージできるのは他のプレミアム輸入車ブランドが展開しているサービスの金額に準じてくるといったところだろう。

■話題のOTAに対応する

これから対応予定の機能もあるが、Google謹製だけに機能の向上やデバッグにもスピーディに対応するはずだ

 前述したサービスだが、実は【3】と【4】に関しても今回の試乗時には対応できていなかった。また自慢の音声認識システムにしても残念ながら日本語には未対応だった。

 だからと言ってこのシステムがイマイチと考えるのは早計だ。冒頭から言っているように、今回通信機能を搭載することでソフトウエアのアップデートを車両側で行うことができる「OTA(オーバー・ジ・エアー)」に対応することで【3】と【4】に関しては2022年度中、音声コマンドの日本語対応に関しても2022年1Q中(初頭)に対応するとのことだ。

 確かに現状ではやや未完成の部分はありながらも、これがIT企業の強みであり、今後の機能向上や逆にバグなどに対してもスピーディにアップデートできる点が大きな強みと言える。

■ミドルスペックのスマホ並みのパワー

Androidを基本としたOSを採用。もちろんスマホで見慣れた音楽サービスなどにも対応する

 期待を持って迎えられたこの新システムだが、車両に乗り込んだ瞬間はそれほど大きな変化は感じない。実際、センターコンソールに設置された9インチの縦型ディスプレイもパッと見た目の変化はわからない。

 しかし中身はこれまでのSENSUSとは全く異なる。今回、このシステムの基本はIHU(インフォメーションヘッドユニット)4.0と呼ばれ、基本OSをAndroidで開発している。

 スペックに関しては、CPUに2.4GHzのクアッドコアを採用、これに3Dコアグラフィックス処理を可能にするためのGPUを搭載する。この他にもアプリケーションの作業領域に影響するRAMの容量は4GB、各種データを格納するROMの容量は128GBと、現在のミドルクラスのスマホと同等の性能をもつ。

 さらに今回メーターも新設計されたが、これを動作させるのはAndroid OSではなく「AUTOSAR」と呼ばれる車内のモジュール間を双方向でやりとりする共通プロコトルで動かしている。

■すべてではないが、Androidアプリが動かせるのは大きな魅力だ

「Google Playストア」からアプリを本体にインストールして使える。AndroidベースのOSならではのメリットだ

 Androidをベースに開発したOSゆえに、スマホやタブレットではおなじみの「Google Playストア」からアプリを本体にインストールして使える点は大きなメリットと言える。

 冒頭に述べたように「Google Playストア」で展開しているアプリの数は膨大だ。これが車内でスマホ無しで使えるというだけでもワクワクしてくるが、実際そんなには甘くはない。

 例えば、音楽系のサブスクリプションサービスで見ると「Spotify」や「YouTube Music」、またラジオ(音声系)アプリには対応しているが「YouTube(動画)」の再生には非対応だ。

 何かしらルールや通信料の問題もあるだろうが、こればかりはGoogle側とアプリベンダーとの取り決めなどで変わってくるので現状では何とも言えない。それでも好みのアプリをインストールすることで自分専用のシステムが構築できるのはスマホ同様、圧倒的に利便性を向上させる。

■ナビだけでない音声認識の可能性

ナビはもちろんGoogleマップがベース。車載用大画面向けにコントラストなどにチューニングが加えられている

 搭載されているナビは基本Googleマップをベースとしている。普段見慣れているGoogleマップだが、大画面でコントラストも含めた各種チューニングが行われているようでスマホやタブレットより圧倒的に視やすい。

 また今回は英語で発話にはなったが走行中、それもマスクをした状態でも音声コマンドの認識率は高かった(個人差は当然ある)。

 探索したルートの品質で考えるとまだ?の部分もあるが、これに関してもGoogleが持つビッグデータを活用することでどんどん賢くなっていくはずだ。でも、現状はもうひと頑張りしてほしい。

 この他にもGoogleアシスタントを使うことで車内の空調コントロールや、最近話題のスマートホームに対応した機器(筆者も使っているSwitch Botなどがメジャー)のコントロールも可能だ。帰宅前にエアコンや電気などの操作も車内から音声コマンドひとつで行えるのだから便利な世の中になったものである。

■目指すは世界制覇なのか?ガラパゴス化が心配?

ナビが選んだルートの信頼度は正直もう一歩と感じたが、Googleが持つビッグデータを活用することで正確さは向上していくはずだ

 今回、このシステムの登場は日本だけではなく、世界におけるインフォテインメントシステムの流れを大きく変えるだけのポテンシャルを持っていると感じた。

 もちろん国によってはGoogleをブロックしている場合もあるのでその場合は独自のシステムで対応することになるが、少なくとも日本では携帯電話同様、Googleの実力は今更説明の必要は無いほど強大だ。

 では独自のテレマティクス&インフォテインメントシステムを持つメーカーは今後どのように対応していくのだろうか。

 例えばホンダはGoogleとの協業で2022年後半に北米で発売する新型車に搭載を開始し順次グローバルに展開する、と発表している。

 ホンダには「HONDA CONNECT」と呼ばれるテレマティクスサービスを展開しているが、いきなりこれを辞めるとは考えにくい。またAmazonの音声認識サービスである「Alexa」に関しても日産や国内のカーオーディオメーカーがすでに対応を始めており、これらも含めると未来予測は非常に難しい。

 ただ携帯電話の世界がスマホの登場により純国産端末が「ガラパゴス」と揶揄されたことも考えると独自路線を強行して突き進むのは得策ではないだろう。

 その辺はどのメーカーもわかっていることでとっくに手は打ち始めているだろうが、自社のシステムとGAFAなどとバランスを取りながら運用していくのはコスト面でも厳しい部分がある。

 その点でも今回のボルボの決断は評価には時間がかかるとはいえ、テレマティクス&インフォテインメントシステムのコアとなるソフトウエアをGoogleに委ねた(協業だが)ことで全体のコスト低減と同時によりスピーディに新しいサービスをユーザー側が享受することができるはずだ。

 2022年以降、車載インフォテインメントシステムの世界は新たなステージ、いや、そんなものではない。大きな嵐が吹き荒れそうな予感がしてならないのである。

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みんなのコメント

20件
  • まだまだコネクティッドも発展途上、過渡期の現在のシステムを知りながら、carview!民は何を怯え吠えているのか・・・

    何が正解かなど誰も分からない。
    そんな中でGoogleがボルボと手を組んだ。まだそれだけだろう?
  • ボルボの名誉となるようなユーザーへの利点がさっぱり分からないんだけど、何がそんなに優れているんだろう?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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