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キーはSKYACTIV-Xか ブランド構築への重要な第一歩。マツダ3の発表会に見るその戦略

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キーはSKYACTIV-Xか ブランド構築への重要な第一歩。マツダ3の発表会に見るその戦略

いよいよ、マツダ3が発表になった。マツダ3は、マツダにとって単なる新型モデルではない。新しい世代の商品群の第一弾にして、ブランド構築のための重要な第一歩となるモデルなのだ。

 新型マツダ3が発表された。先代までの「アクセラ」の名前を捨てて、グローバルでのモデル名「Mazda 3(マツダ3)」を名乗ってのスタートである。このマツダ3がマツダの新しい商品群の第一弾となる。グローバルでもローカルでも、最重要モデルなのだ。

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 技術的なポイントは新しい車両構造技術である「SKYACTIV-VEHILCE ARCHITECTURE(スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー」と革新的な独自の燃焼技術SPCCIを採用した「SKYACTIV-Xエンジン」である。どちらもマツダが次のステップに進むための、戦略的な価値を持つ。ここ数年のマツダは、世界的に好評を得ている魂動(Kodo)デザインと新世代のディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの「SKYACTIVテクノロジー」で、自動車業界で独自のポジションを獲得してきた。万人受けではなく、クルマが好きでクルマに愛情を持つ人に向けてのブランド構築はある程度成功したと言える。


 そこで、新型マツダ3の登場となる。マツダにとっては、プレミアムな自動車メーカーへ進む大きな第一歩となるのが、マツダ3なのだ。デザインでも技術力でも高評価を得たマツダに必要なのは、「ブランド力」である。2025年に世界販売180万台を目指すマツダだが、180万台という規模は大メーカーとは言いがたい。つまり、規模でなく個性・ブランドに依って立つ自動車メーカーにならないと、生き残りは難しいのである。


 マツダが思い描く「ブランド力を持ったプレミアムメーカー」への道への第一歩がこのマツダ3。それは発表会にも表れていた。

 新型車のお披露目の発表会は、都心のホテルで開かれることが多い。ところが、今回マツダが、マツダ3の発表の場に選んだのは、品川の倉庫街、天王洲運河沿いのイベントホールだ。ここに、カフェをしつらえ、椅子やテーブルなどの調度品を選んで運び込み、マツダ3の世界観を表現するための舞台を整えた。
 会場選びから会場の設えまでを主導したのは、マツダのデザイン部だ。マツダ3のチーフデザイナー、土田康剛氏に訊くと「マツダ3の世界観をどう表現するか。会場選びからデザイン部でやりました。マツダ3だからこの場所を選んだのであって、SUVならまた違う場所を選ぶと思います」とのこと。
 会場にあるカフェはまるで常設のようだが、これも発表会1日のために特別に出店してもらったもの。カフェ選びもデザイン部が行ったという。


「マツダがブランド力を獲得するための記念すべき第一歩だ」と、あるブランドメネジメントの専門家は言う。ブランドを構築するのは長い時間がかかる。マツダは、このマツダ3から本格的にそれに着手したのだ、と。

 マツダ3は、現行のアクセラから価格を上げている。アクセラが182万5200円~331万200円だったのに対して、マツダ3は218万1000円~362万1400円に上げている。エントリーモデルは、
 1.5ℓのガソリンエンジンを搭載するファストバックで、35万5800円の「値上げ」だ。実車を前にすれば、確実に車格が上がっているから、エントリー価格が218万円なら、「安い」と思うだろう。
 ところがディーゼルエンジン搭載モデルの最上級グレードを比べてみると
アクセラ22XD Lパッケージ(4WD):331万200円
マツダ3XDバーガンディセレクション(4WD):322万1400円
 と9万円ほど「安く」なっているのだ。これは、アクセラの上級グレードのディーゼルエンジンが2.2ℓだったのに対してマツダ3では1.8ℓに一本化されたから、という見方もあるが、性能バランス的に最適化した結果と見れば、価格を上げきれてない、とも言える。


 では、マツダ3の362万1400円(Xバーガンディセレクション4WD)の価格を支えているのは何か? いうまでもなく、マツダ独自の「SKYACITV-Xエンジン」である。ディーゼルの最上級グレードより約40万円高という価格設定は、マツダ3のポジションを上げるだけでなく、「輸入車オーナーを呼び込む武器になる」と見る。

 ライバルとなりそうな輸入車の売れ筋の価格帯を見てみると

 メルセデス・ベンツAクラス:328万円~399万円
 アウディA3:296万円~403万円
 VWゴルフ:302万9000円~352万9000円

 である。マツダ3の362万円というのは、この価格帯のライバルに挑戦できる車格を得たと見ることができる。

 クルマにこだわりがある、あるいは、クルマで見栄を張りたいという輸入車購入層にマツダ3を買わせるには、特別な”何か”が必要だ。その役割がSKYACTIV-Xなのだ。

「どうしてアウディからマツダにしたの?」と友人から問われたときに、自信を持って「SKYACTIV-Xがほしかったんだ。だからマツダにしたんだよ」と答えられればいい。こだわりがあるからこそマツダ3を選んだ、と顧客が堂々と言える……今回の新型マツダ3は、そういうクルマになっているはずだ。

 懸念材料は、ディーゼルエンジン比で40万円高というのが、どう評価されるか。そして、1.5ℓエンジン搭載車がラインアップに残ったことが、メルセデスAクラスやアウディA3、VWゴルフと同じショッピングリストにあげてもらうときのハンデとならないか、である
 ファストバックの1.5ℓモデルは、じつは数が稼げる重要なグレード。ブランド力がついていく過程で、自然と上級移行していくのが望ましいが、今回のマツダ3のデビューは、その時ではなかったということか。


 2025年に向けて、後輪駆動のプラットフォームと直列6気筒エンジンという、メルセデス・ベンツとBMWしか持っていないプレミアムなクルマづくりに舵を切るマツダ。そのロードマップが計画通り実現するか、最初の試金石は、マツダ3、そしてSKYACTIV-Xにある。そして次が、ある意味大本命であるCX-30だ。この2車種がうまくいけば、そのあとのLargeアーキテクチャー=後輪駆動の次期マツダ6(現行アテンザの後継)、最上級モデル、ロータリーエンジン搭載のスポーツカー……と続くはずだ。

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