国務大臣や地方自治体の首長らが公務で使うクルマ
民間企業における社用車にあたり、政府機関や地方自治体などの公的機関が使用する自動車のことを「公用車」と呼びます。
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広い意味ではパトカーや消防車などの緊急自動車、行政組織が保有する業務用のバスやトラック、職員が移動や連絡に用いるコンパクトカーや軽自動車なども公用車ですが、今回は政府機関の政務官以上の役職(首相や国務大臣を含む)に就く国会議員、自治体の首長などに与えられた専用車、衆参両院の国会議員が移動に使用する乗用車について紹介します。
これら公用車は、行政施設への乗り入れや公的式典への参加などを踏まえて、排気量2000cc以上のフォーマルなセダン、あるいはミニバンが使用されるのが一般的です。ボディカラーは黒が基本ですが、地方自治体の首長が使用する公用車には、数は少ないものの白やシルバーなども存在します。
行政機関が保有する公用車のうち、「内閣総理大臣専用車」だけは、テロ対策として防弾ガラスや装甲板が内蔵された特別仕様車となっています。一見するとフロントグリルの内側に青色のLED点滅灯が装備されている以外、外観こそ市販車とほとんど変わりないものの、一定の耐弾性能や防爆性能を有しています。なお、その詳しい性能については明らかにされていません。
逆にいうと、国務大臣や自治体の首長などに与えられた専用車、国会議員が使用する公用車は、「内閣総理大臣専用車」とは異なり、特殊な装備は持たない市販車と同じ車両です。
国会議員なら無料で使える公用車って?
国政の中枢である永田町でよく見かける公用車の多くは、衆参両議院が所有する国会議員が公務に使用する公用車です。2024年現在、衆議院には133台、参議院には97台の公用車があり、専用車があてがわれる正・副議長と各委員長を除くと、各政党には所属議員の数に応じて割り当てられています。なお、割り当てられた公用車は所属政党の議員のみが使用することになっており、うち1台は党首専用車として使用されることが多いようです。
車種はトヨタ「クラウンセダン」や「プリウス」などの4ドアセダンのほか、最近では「ノア」などの5ナンバーサイズのミニバンの導入も増えています。また、昨今増えつつある身体に障害のある国会議員にも対応できるよう、車椅子のまま乗り降りできる福祉車両も公用車として導入・運用されています。
国会の公用車は衆参両院それぞれで管理しており、運転手は衆参それぞれの職員が務めます(一部外部委託もあり)。彼らは公務員のため守秘義務が課せられていることから、公務中に見聞きしたことは外部に漏らすようなことはないようになっています。また、公用車の運行経費はすべて税金で賄われているため、旅客運送を目的としたタクシーやハイヤーとは異なり、どれだけ利用しても国会議員に運賃が請求されることはありません。
なお、公用車の利用規約として「利用時間は3時間以内」というルールが一応設けられていますが、運用は柔軟でスケジュールが空いていれば時間をオーバーしても問題とならないようです。
また、政党に割り当てられた公用車が空いていれば国会議員なら誰でも利用できることから、マイカーを持たない議員のアシとして重用されています。
公用車の使い方で過去、問題に
「内閣総理大臣専用車」の場合は例外的に公私問わず利用が認められていますが、国務大臣や自治体の首長、国会議員の場合は公用車の私的利用は違法であり、認められていません。
ただし、「公用車による送迎の場合、移動経路が大きく外れることがなければ、私的な立ち寄りや首長や議員以外の同乗者を乗せても問題ない」とされています。すなわち、「自宅→私用→公務」と「公務→私用→自宅」の経路での公用車使用は問題ないといえるでしょう。
これに関して2016年には、東京都知事だった舛添要一氏が家族同伴の野球観戦やコンサート鑑賞、湯河原の別荘へ毎週のように公用車を使って移動していたことが発覚し、問題となりました。そのようななか、舛添氏は別荘を「事務所である」と主張し、「静かな場所で仕事をするための移動手段として利用した」と述べたことで、これが私的利用か公的利用かで意見が分かれました。
2017年には当時、自民党の国会議員だった金子恵美氏が子どもを保育園へ送迎するのに公用車を利用したことが問題になりました。ただし、金子氏の場合は登院の途中で保育園に立ち寄っていたので、公用車の利用規約に反したわけではありません。
問題発覚後、金子氏は世論に配慮して「公用車での子供の保育園への送迎は控える」と声明を発表しましたが、彼女の場合は前述したようにルールに則って使用していたので、あくまでも自粛という形です。逆に、的外れな批判によって国会議員が過度に公用車の利用を避けるようになると、本来必要な議員活動にも支障が生じる恐れもあるため、その点では議員の自制と国民の一定の寛容さ、双方が必要といえるでしょう。
国会の公用車に乗ってみた
このように、一般人にはあまり馴染みのない国会議員向けの公用車に、筆者(山崎 龍:乗り物系ライター)は相乗りしたことがあります。
今から15年ほど前のことですが、とある与党所属の参議院議員にインタビュー取材を申し込むと、先方は多忙のため移動中に車内でハナシを聞くことになりました。
議員会館の駐車場にマイカーを停め、クルマ寄せで議員と落ち合ったあと当該議員の目的地まで1時間ほど同乗しました。車種は「クラウンセダン」で、装備や乗り心地などはタクシーとまったく変わりません。
なお、乗車前に総務省に確認を取ったところ「経路を外れての送迎は許されないが、国会議員に用事のある人が回送車に同乗して議員会館へ戻る分には問題ない」との回答だったため、議員を送り届けたあと、筆者はそのまま公用車で議員会館へと戻ることになりました。
一般人だと、まず乗る機会のない公用車の後部座席に一人で乗るという貴重な経験をさせてもらいましたが、誰にも気兼ねする必要がないにもかかわらず、タクシーとは違いそこまでリラックスできませんでした。
※一部修正しました(11月11日21時00分)。
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みんなのコメント
後ろに乗せてる人間が国会議員ともなると、運転手まで偉くなった様に錯覚してしまうのだろう。
国会議員のイメージを下げる原因の一つになってる。