■10代目の新型「アルト」どうなる?
スズキは、2024年7月に「10年先を見据えた技術戦略」を発表しました。そこで説明されたのは、業界をあげてカーボンニュートラルを目標とする中で、スズキの持つこだわりと、次世代モデルに採用される予定の新技術でした。
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そうした説明の中で、次世代モデルのヒントを得られたのが「アルト」です。
まず、「10年先を見据えた技術戦略」で、スズキの行動理念として説明されたのが「小・少・軽・短・美」という言葉です。
これは文字通りに「小さい」「少ない」「軽い」「短い」「美しい」を目指すというもの。スズキの3つある行動理念のうちの一つとなります。ちなみに、他2つは「現場・現物・現実」と「中小企業型経営」です。
では、スズキの行動理念となる「小・少・軽・短・美」の通りのクルマを作るとどうなるのでしょうか。
まず、小さく軽いので、動くための必要なエネルギーが少なくて済みます。エンジンやモーターも小さくて済み、燃費もよくなります。
小さいから製造の材料も少なく、コストも安くなり、製造エネルギーもリサイクルのエネルギーも小さくなります。
また、軽いので衝突エネルギーも小さくて、安全なクルマにしやすくなります。さらに軽いクルマは、道路へ与えるダメージも小さいので、インフラ整備にかかる費用も安くあがります。
“小・少・軽・短・美”とすることで、様々な良いことが実現されるのです。
そして、そんなスズキの行動理念、小・少・軽・短・美を体現するモデルが軽自動車のアルトです。スズキの軽乗用車ラインナップで、最も小さく、そして安いモデルです。
アルトは、初代モデルが1979年に誕生し、日本国内だけで、すでに526万台以上が販売されました。日本だけでなく世界中でも同様のモデルが販売されており、特にインドでは1国で700万台以上が売れています。
スズキの行動理念を体現し、経営を支える大きな柱となります。
そんなスズキの小さなクルマの代表であるアルトですが、その1979年の初代アルトの車両重量は、わずか545kgしかありませんでした。
それだけ軽いから、539ccのエンジン出力が28馬力しかなくても、当時はまったく問題にならなかったのです。
しかし、その後のアルトは法規制などの対応により、徐々に重量を増やしてゆき、2009年の7代目モデルでは740kgになっていました。初代と比べると、195kgもの重量増です。
ですが、スズキは、この次に奮起します。2014年に登場した8代目モデルの車両重量は620kgになっていたのです。つまり120kgもの減量を達成しました。
実際に、8代目のアルトを運転してみたことがありますけれど、その走りの良さに驚きました。非常に素直なハンドリングで、ストレスなく、よく走ってくれました。
燃費も当時の軽自動車トップとなる37.0km/L(JC08モード)をたたき出します。まさに、小・少・軽・短・美による、良いことばかりを体現していたのです。
そして、スズキは7月の「10年先を見据えた技術戦略」において、次世代アルトの開発目標を公開しました。
それは「次世代モデルは、7世代前に相当する車両重量にする」というもの。ちなみに、最新の9代目モデルの重量は680kgです。一方、7世代前というのは1988年デビューの3代目モデルで、当時の車両重量は580kgです。つまり、現行の9代目よりも100kgものダイエットを実現するというのです。
また、スズキはパワートレインについても次世代の目標を説明しています。現状のアルトには、エンジン車とマイルドハイブリッド車があります。
燃費性能に優れるマイルドハイブリッドには、1.9kW(2.6馬力)のモーターが組み合わされています。そのモーターの電力を、次世代技術においては、現状の12Vから48Vに高電圧化し、出力も10kW(13.6馬力)に高めると言います。
それが48Vスーパーエネチャージです。ちなみに、モーター出力を高めても、バッテリー容量は大きくしない方針とか。大きなバッテリーを搭載すると、重くて高価になってしまうから当然のことでしょう。
つまり、次世代の10代目アルトは、車両重量が580kgであり、48Vのマイルドハイブリッドが搭載されているというわけです。
そうとなれば、燃費性能は現行型の33.1km/L(JC08モード)どころか、先代の37.0km/L(JC08モード)さえも上回る可能性があります。
次世代は、先代よりも軽く、ハイブリッドも優れているのですから、当然、そのくらいを期待していいでしょう。
先代の走りが良かったことを思えば、次世代は、さらに上のレベルの走りとなるはずです。かなり魅力的なクルマになることでしょう。
では、そんな魅力的な次世代アルトの誕生はいつになるのでしょうか。
2023年1月にスズキが発表した「2030年度に向けた成長戦略説明会」において日本市場には「2030年度までにバッテリーEVを6モデル展開」としか説明されませんでした。アルトに関する文言はありません。
2021年2月の「中期経営計画(2011年4月~2026年3月)」にも、「スズキハイブリッドシステム搭載車の拡大」とあるだけで、個別車種の説明はありませんでした。
そうとなれば、過去を振り返ってみるしかありません。フルモデルチェンジのタイミングを振り返れば、現行の9代目モデルのデビューは2021年12月。そして先代8代目は2014年12月です。先々代となる7代目の発売は2009年12月です。つまり、フルモデルチェンジにかかる時間は、9代目と8代目の間は7年、8代目と7代目は5年となります。
近年は、フルモデルチェンジまでの期間は伸びるのが一般的です。そうとなれば、次世代のアルトが登場するのは、2021年12月の7年後以降ということでしょうか。つまり、2028年12月です。
ずいぶんと先の話になります。しかし、良い技術が出来上がったと、先々代と同様に5年のスパンで登場する可能性もゼロではありません。その場合は、2026年12月となります。それでも、やはり間近というには遠いようです。
ちょっと先になるようですけれど、それでも登場すれば、きっと素晴らしいクルマになるはず。それが次世代のアルトです。
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