メルセデスAMG由来のV8ツインターボは680ps
過去のグランドツーリング・スポーツカーのなかで、最も意味深い「大フェイスリフト」かもしれない。カナダの実業家、ローレンス・ストロール氏によるアストン マーティン買収後、初の新しいモデルになる。少量生産された、特別なモデルを除いて。
【画像】ブランドにおける最高傑作の1台 アストン マーティンDB12 競合モデル DB11も 全128枚
フェラーリから移籍した、アメデオ・フェリーサ氏とロベルト・フェデーリ氏がCEOとCTOの地位へ就任して以降でも、初めて。SUVのアストン マーティンDBXは、実際のところアンディ・パーマー氏の時代に開発されたモデルだった。
アストン マーティンが今後どのような道を歩むのか、どう変化していくのかを、指し示すモデルといえるだろう。半年ほど前にフランスで試乗した時は、従来の特長を維持しつつ、弱点を克服したように感じられた。母国、英国の公道での印象に期待がかかる。
DB11の後継となるDB12のボンネットには、メルセデスAMG由来の4.0L V8ツインターボが載る。先代のように、5.2L V12ツインターボは選べなくなった。
最高出力は、6000rpmで680psを発揮。最大トルクは、DB11 AMRのV12エンジンから15%増しの、81.4kg-mに達する。プラグイン・ハイブリッド版も、2026年に登場予定だ。
スタイリングは、真横や後方から眺めていると、DB11の面影が表れてくる。しかし、正面からの印象は明らかに異なり、全体的なプロポーションも大きく変化した。12へ数字が1つ増えたことへ、納得できる。
DB12の方が幅が広く、よりスポーティ。アストン マーティンは、グランドツアラーではなくスーパーツアラーだと表現する。「グランド」という言葉では、充分表現しきれないそうだ。
タッチモニターを獲得 システムは独自開発
シャシーは、DB11の進化版。アルミニウム材を接着したモノコック構造は、大幅に再設計され、ねじれ剛性を7%高めている。V12ツインターボ・エンジンが608psを発揮した2016年のDB11と比較して、車重は85kgも軽く仕上がった。
アストン マーティンのDBシリーズとしては初めて、トルクベクタリング機能付きの電子制御ディファレンシャルを採用。サスペンション・スプリングとアンチロールバーは先代より引き締められ、最新のアダプティブダンパーも組まれる。
ステアリングラックは、電動機械式。反応の精度とフィードバックが追求された。
インテリアでは、ダッシュボード中央にタッチモニターが備わることが、最大のトピック。ただし、ソフトウエアのデザインには改善の余地があるだろう。フォントは小さく、メニュー構造が少し複雑に思える。
とはいえ、タッチモニターだということに意味がある。しかも、メルセデス・ベンツのシステムがベースではなく、同社初となる独自開発らしい。
表示されるアイコンが小さすぎ、思うようにタップできない場合があることは、大目に見よう。ステアリングホイールやセンターコンソールには、カーソルを操作できるコントローラーがないため、頑張って正確に触れる必要があるとしても。
システムは安定性に若干欠け、稀にクラッシュする。カーナビの表示モードには、もう少しバリエーションが欲しい。タッチモニター自体も、1時間ほど動かしていたらそこそこ熱を帯びていた。今後のアップデートで、徐々に改善していくだろう。
ベントレーに迫るインテリアの高級感
大きなタッチモニターの下側には、エアコンなどの操作用に、実際に押せるハードボタンが沢山並んでいる。デジタルとアナログのインターフェイスが混在している景色は、最新感という点では及ばないかもしれないが、アストン マーティンの判断は賢明だ。
内装の素材は、インフォテインメント・システム以上に進化した。その高級感たるや、フェラーリを凌駕し、ベントレーにも迫っている。
エンジンスタート・ボタンの周囲には、ドライブモードを選ぶ触感の良いダイヤルが備わる。ヒーターやオーディオのローラースイッチも含めて、細部まで上質。高級な腕時計のような雰囲気が漂う。
車内空間は充分に広い。小物入れなどが各所に設けられ、リアシートも実用に耐える。2+2の範囲を超えないが、中学生くらいまでの子供なら、快適に座って自動車旅行に出かけられるだろう。
フロントシート側はゆったり。助手席のパートナーと、不自然に近い位置で過ごすことはない。センターコンソールは低く、うっかり肘をぶつけることもなかった。
さて、実際にグレートブリテン島の一般道へ出てみよう。2750rpmという低い回転域から、81.4kg-mものトルクを生み出すため、公道ではエンジンの主張は控えめ。聴覚的な刺激も穏やかなようだ。
この続きは、アストン マーティンDB12へ試乗(2)にて。
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