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リアム・ローソンの陰で奮闘するふたりの外国人ドライバー、ジェム・ブリュックバシェ&ラウル・ハイマンの現在地:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

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リアム・ローソンの陰で奮闘するふたりの外国人ドライバー、ジェム・ブリュックバシェ&ラウル・ハイマンの現在地:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

 今季のスーパーフォーミュラは、ルーキーでF1候補生であるリアム・ローソンの活躍が話題を独占しています。しかし、スーパーフォーミュラを戦う外国人ドライバーは他にもいます。ジェム・ブリュックバシェとラウル・ハイマンです。今回はそんな彼らふたりの戦いぶりを紹介します。

■まだフォーミュラ3年目。成長を続けるブリュックバシェ

■【スーパーフォーミュラ】富士ともてぎ、一見異なるふたつのサーキットに共通項はあるのか?「富士で速ければもてぎでも速い印象」と野尻智紀

 まずトルコ人のブリュックバシェについて話しましょう。彼は昨年、ローソンと同様にF2で戦っていましたが、今年は日本に戦いの場を求めたドライバーです。ただ、eスポーツで頭角を現し、シングルシーターのカテゴリーに本格参戦を始めてまだ2年目だったということもあり、F2での成績は印象に残るものではありませんでした

 2021年にユーロ・フォーミュラ・オープンに参戦したブリュックバシェは初戦で勝利を飾るなど、一定の活躍を収めました。ただ上級カテゴリーで戦うにはまだ準備が必要という状況の中、彼のスポンサーがステップアップを求めたため、2022年にF2デビューを果たしています。

 しかし第2ラウンドのジェッダでクラッシュに見舞われて肋骨を骨折、これによりインシーズンテストとイモラ戦を欠場することに。復帰後も成績は足踏み状態のままでした。

 そんな状況の中で、メンターであるリチャード・ブラッドリーの助言の下、ブリュックバシェはスーパーフォーミュラを新たな選択肢としました。そして彼のスポンサーは、レッドブルとの提携が終了となり資金源を失っていたTEAM GOHと接触。その事実上の後継チームであるTGM Grand Prixからの参戦にこぎつけました。

 そしてブリュックバシェは、開幕戦富士で8位入賞を果たすなど願ってもないような形でシーズンのスタートを切り、第3戦鈴鹿でも9位に入りました。しかしそれ以降は予選でのミスが続き、流れに乗れずにいます。例えば第4戦オートポリスの予選ではターン4で大きくスライドして最後尾スタートに。第5戦SUGOでの予選でもレインボーコーナーでクラッシュしてしまい、同じく最後方からのスタートとなりました。

 そして前戦の富士では、マシンの問題によりQ1で予定していたフロントタイヤのスクラブ(皮むき)ができず、タイヤのウォームアップが十分でないままでの予選アタックとなってしまい19番手に。これまでの決勝ベストグリッドが17番手であることを考えても、今後はタイヤのウォームアップをマスターし、予選パフォーマンスを改善することが必須になってくるでしょう。

 ただ、オープニングラップで順位を上げられるのは彼の強みです。それがスタートポジションの悪さをある程度リカバーすることができており、ここまで2度のポイント獲得にも繋がっています。

 ブリュックバシェはまだ学びの途中であり、彼のような経験の少ないドライバーにとってはある程度のミスは避けられないと言えます。ただ彼は新興チームのTGM Grand Prixで伸び伸びと育っており、日本での生活も楽しんでいるようです。資金調達の問題さえクリアすれば、彼は来年もスーパーフォーミュラに留まって入賞争いの常連になる可能性が十分あると言えるでしょう。

 ただ残念ながら、南アフリカ生まれのイギリス人ドライバー、ラウル・ハイマンにも同じことが言えるかと言われれば、そうではありません。

■悪夢のようなシーズンを過ごすハイマン

 ハイマンは昨年、フォーミュラ・リージョナル・アメリカズでチャンピオンに輝き、ホンダ・パフォーマンス・デベロップメントからの60万ドル(約8731万円)のスカラシップによってスーパーフォーミュラのB-Max Racing Teamのシートを確保しました。これは黄金のチケットのように思われましたが、彼はここまで入賞0回、最高位16位と、悪夢としか言いようのないシーズンを過ごしています。

 B-Maxは今季、松下信治が乗る50号車とハイマンが乗る51号車の2台体制を敷きました。同チームが2台走らせたのは2019年と2020年の2年間。この2年間は名門モトパークとの提携によってチームが運営されていました。

 2021年以降、B-Max Racing Teamでは田坂泰啓エンジニアが松下を担当していましたが、今季は田坂エンジニアがチームを離れたため、エンジニアが不足していました。結果としてハイマンはインディカーでの経験豊富なティム・ネフにエンジニアを依頼しましたが、ネフはスーパーフォーミュラの経験がない上に、自身がオーナーを務めるTJスピードでの活動もあるため、第5戦と第6戦には帯同できていないといった状況です。加えて、隣のガレージ……つまり僚友の50号車サイドからのサポートはほとんど受けられていないようです。

 なおかつ、ハイマンの車両には根本的な問題があると言われています。6月の富士テストではホンダ陣営のリザーブドライバーである大津弘樹がハイマン号をドライブしましたが、大津もハイマンと同じ症状を訴えたといいます。

 51号車が抱えている問題は、あらゆるセットアップ変更にマシンが反応しない、いわゆる“感度”の問題と、慢性的にタイヤが温まらないということのようです。

 ハイマンも、時には速さを見せる場面がありました。例えばオートポリスでは最速ラップが全体で3番目に速かったのです。しかしチームはその理由を解析できず、好タイムの再現はできませんでした。加えて予選ではニュータイヤをうまく機能させられず、常に後方グリッドからのスタートとなってしまっています。

 ただハイマンはそのキャリアを通して、自分が“遅い”ドライバーではないことを証明してきています。2014年にはイギリスのBRDC F4で現F1ドライバーのジョージ・ラッセルとタイトル争いをしていますし、2019年のトヨタ・レーシング・シリーズではローソンやルーカス・アウアーらと互角に渡り合い、現在KONDO RACINGからスーパーフォーミュラを戦う小高一斗には勝ち越しました。GP3やF3の成績も、下位チームであることを加味すればまずまずだったと言えます。

 単刀直入に言えば、彼ほどのドライバーがシーズン折り返しを過ぎた段階でこれほど他から離されるはずがない、ということです。そしてハイマンが苦い経験をしているという現状は、今季のフォーミュラ・リージョナル・アメリカズ王者に2024年のスーパーフォーミュラ参戦を思い止まらせるという、好まざる材料になるかもしれません。

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