■「コンパス」のマイナーチェンジは見た目以上に大きな変化
2017年に2代目として登場したジープ「コンパス」が、マイナーチェンジを受けた。ファーストコンタクトとなる試乗会は、JR田町駅の芝浦側に位置するプルマン東京田町が起点。
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ジープの試乗会といえば、オフロードコースが用意されているのが当たり前のようなところもあるが、かつてウォーターフロントと呼ばれていた芝浦エリアが今回のステージだ。もちろん、それには理由がある。
●キープコンセプトされた外観
初めて実車を目にしたコンパスは、洗練度に磨きがかかったことは伝わるのだけれど、「どこが」「どう」変わったのかを自信を持って説明できるほど外観が大きく変わったわけではない。明らかにキープコンセプトだ。
変更されたのはフロントとリアのデザイン。フロントではセブンスロットグリルの下に水平に一直線に伸びる開口部が設けられた。そのため、マイナーチェンジ前よりも車幅が広くなったような印象を受ける。つまり、車格がひとつアップしたように感じてしまうのだ。この時の印象は、後ほど解説する運転席に座ったときに受けた印象にもつながっている。
一方のリアまわりでは、リアコンビネーションランプとバンパーガーニッシュの意匠が変更されるにとどまっている。いうならば、すでに完成度の高かったエクステリアには手を加えなかったということだろう。
実は、今回のマイナーチェンジのトピックはインテリアにある。そこで、オンラインでおこなわれたラウンドテーブルで、チーフ インテリアデザイナーのクリス・ベンジャミン氏から説明を受けていたキーポイントを、ひとつずつ確かめながら試乗することにした。
●横方向にシームレスなデザイン
さっそく運転席に座ってみる。ドアを開けて最初に目にするインストゥルメントパネルのデザインが水平に伸びていることから、シートに座ってもタイトな印象は一切なく、視覚的にも心理的にも広く感じられる。
実は、左右のAピラーをつなぐ、ジープが「ボルスター」と呼ぶ横一直線に貫くエリアは、クロームのアクセントでぐるりと囲まれており、この伸びやかなクロームがあることで、実際よりも広く感じる空間になっているのだ。
さらにこのシームレスなデザインは、運転席と助手席をつなぐだけでなく、エクステリアからもデザインがつながっていることに気がついた。
Aピラーの付け根からAピラーを伝ってルーフラインに沿って伸びるクロームのラインは、リアガラスの下部をなぞるようにして反対側のサイドへと回り込み、今度は逆にルーフラインに沿ってAピラーへ伸びている。このいわばルーフをぐるりと囲むクロームのラインと、コックピットのボルスターを囲むクロームのラインが、コンパスの外と内で呼応しているのである。
マイナーチェンジ前モデルのコックピットのレイアウトは、機能ごとに要素を独立して集約させたアイランド型であった。真円のダイヤルを効果的にアイランドに配置し、各アイランドは丸みを帯びたラインで囲まれ筋肉質でボリューム感あるデザインだった。
こうしたエルゴノミクス的に考えられたデザインは、ドライバーが意識せずとも意図する操作をおこなえるという利点もある。
しかし時代は──iPhoneを例に喩えると分かりやすいが──シンプルなデザインへと移行している。大型のタッチスクリーンに代表されるように、スイッチ類を極力少なくし、操作をタッチスクリーンに集約するというのがトレンドだ。iPhoneなどはもはやテンキーどころか円形のスイッチすらも存在しなくなった。こうしたデザインの潮流はクルマのコックピットにも確実に押し寄せていている。
ただし、水平基調で広く感じるコックピットにあっても、それはあくまでも視覚的効果であって、実際には10.1インチ(「スポーツ」では8.4インチ)のタッチスクリーンをダッシュボードに埋め込むことは困難なため、フローティングすることでスペースの確保が図られている。
■バブル期の「チェロキー」のような存在になる資質は十分
さっそく、新型コンパスのエンジンに火を入れる。エンジンスターターのスイッチを押す行為は、ドライバーを運転という行為へと意識を切り替えるためにも必要な儀式でもある。このあたりはジープもよく理解しており、エンジンスタートボタンでスペシャル感を演出しているというわけだ。
●愛着の湧くテクスチュア
水平基調となったコンパスのダッシュボードは、時代の空気を上手く掴み、洗練されたものとなった。しかし、いくらデザインが優れていても、手に触れるテクスチュアがチープであれば、志半ばといわざるを得ない。
果たしてコンパスは、この課題をクリアしているだろうか。
結論から先に述べると、もちろん「イエス」。マイナーチェンジに際して、インテリアの個々のパーツや素材は上質になり、テクスチュアは数段のアップを果たした。さらに、ダイヤルなどの指でつまむ部分に関してはリブを設けるなどして、テクスチュアがリフレインされるというこだわりだ。
常に目に触れ手に触れる部分の質感が向上したことは、日常的にコンパスをドライブするオーナーにはもっとも嬉しい進歩に違いない。とくにダイヤルなどのテクスチュアは、そこからクルマへの愛着へと結びつくだけになおさらである。
●ジープが提唱するテーラードコンフォートとは
見た目もよく、手触りなども申し分なし。インテリアに求められる残された要件はフィット感であろう。
クリス・ベンジャミン氏によると、テーラーメードのスーツを着たときのようなジャストフィット感を、コンパスのコックピットでは目指したという。ジープでは、これを“テーラード コンフォート”と称している。
米国車のステレオタイプなイメージは、おおらかでゆったりしたサイズ感だろう。確かに、北米をクルマで旅したことがある人なら実感として分かるだろうが、ルーズな感じでちょうどよかったりする。北米大陸の道路環境とサイズ感にピッタリなのだ(加えて、米国人の多様なサイズ感にも対応している)。
しかし、新型コンパスのシートに座ったときのフィット感は、欧州車に通じるものがある。ジーンズのようなアメリカンカジュアルなインテリアは、全体的にラグジュアリー指向へと方向転換され、シンプリシティに洗練されている。
信号待ちで、新型コンパスのシートから見渡す高層マンションが建ち並ぶ街の景色と、コンパスの新しくなったインテリアが、違和感なく馴染んでいることに気がついた。つまり、コンパスは明確に都市型SUVになったといって差し支えないだろう。
いまさら悪路走破性をアピールせずとも、そこはジープブランド基準でクリアされていることは分かりきった事実。コロナ禍ということを考慮したとしても、試乗会が芝浦エリアで開催されたことによって、結果的に新型コンパスのもっとも魅力的な部分がクローズアップされることになった。
●もはや別モノ感漂う新型「コンパス」
プルマン東京田町を出立して、1990年前後にウォーターフロント開発で脚光を浴びた芝浦海岸エリアを、まったく新しいインテリアになったコンパスを走らせながら、ふと気がついた。
サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフなどのウォータフロント開発を参考に、芝浦あたりの倉庫街や古くなった港湾施設の再開発として注目を集めていたエリアも、気がつくと倉庫街のロフト文化から高層マンションが建ち並ぶ街へと大きく変貌を遂げていた。
日々、クルマで通っている旧海岸通りや海岸通りも、改めて試乗会で走ってみると、普段は気にもしていなかった変貌に気づかされる。同じくジープと聞けば、前世紀のイメージを今なおどこかで期待してしまう世代にとって、新型コンパスはもはやまったくの別モノののように感じられた。そしてそれは、いい意味での別モノ感である。
そして、別モノ感漂う新型コンパスの車両価格がさらに魅力的だ。車両価格(消費税込)は、4WDの「リミテッド」で435万円、2WDの「スポーツ」「ロンジチュード」がそれぞれ346万円と385万円。欧州メーカーのSUVと比べてもバリューあるプライスであることはもちろん、国産SUVの競合としても新型コンパスは十分に検討できる範疇にある。
クロカンブームの1980年代後半、XJ型「チェロキー」は魅力的なプライスもあって、流行に敏感な若者の支持を受けていた。“渋カジ”に代表されるように、アメリカン・カジュアルファッションが幅をきかせていた時代の後押しもあっただろう。
多様性が尊重されている2020年代のいま、デザインのトレンドはグローバル化しており、それは自動車産業でも例外ではない。新型コンパスはまさしく、“北米”でも“欧州”でも、まして“アジア”でもないユニバーサルなデザインといっていい。もはやどのようなライフスタイルにもマッチするSUVとして、かつてのチェロキーのように、日本の若者に支持される日もそう遠くないだろう。
●JEEP COMPASS LIMITED
ジープ コンパス リミテッド
・車両価格(消費税込):435万円
・全長:4420mm
・全幅:1810mm
・全高:1640mm
・ホイールベース:2635mm
・車両重量:1600kg
・エンジン形式:直列4気筒マルチエア
・排気量:2359cc
・エンジン配置:フロント横置き
・駆動方式:4輪駆動
・変速機:9速AT
・最高出力:175ps/6400rpm
・最大トルク:229Nm/3900rpm
・公称燃費(WLTC):11.5km/L
・燃料タンク容量:60L
・サスペンション:(前)マクファーソン式、(後)マクファーソン式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ソリッド・ディスク
・タイヤ:(前)225/55R18、(後)225/55R18
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みんなのコメント
良くも悪くも、外車とすら認識されないでしょうね。
そういう意味でも、お値段435万円〜は、ぶっちゃけ100万円高い。。。
ところで、
>ジープ新型「コンパス」はファーストSUVの最適解!
なんてことは特に書いてないんだが、タイトルつけた担当者は、記事に目を通したのか?