現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ドライビングの楽しさを追及しCOTYも受賞!!! 三菱 FTOがそれでも初代で消えた理由【偉大な生産終了車】

ここから本文です

ドライビングの楽しさを追及しCOTYも受賞!!! 三菱 FTOがそれでも初代で消えた理由【偉大な生産終了車】

掲載 更新 3
ドライビングの楽しさを追及しCOTYも受賞!!! 三菱 FTOがそれでも初代で消えた理由【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

【RX500 MID4 S-FR…】期待に胸を焦がしていたが…お蔵入りになった幻のスポーツカーたち

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は三菱 FTO(1994-2000)をご紹介します。

文/伊達軍曹、写真/MITSUBISHI

【画像ギャラリー】あんなことがなければ、今もまだ…!? 三菱 FTOをギャラリーで見る

■三菱自動車のシェア拡大の期待を背負い送り出されたFTO

 RVブームの恩恵により、1990年代前半に国内ナンバー3のメーカーとなった三菱自動車が、RV以外の領域でもシェアを向上させ、ナンバー2の日産を追撃するために「GTOの弟分」として開発し、当初は目論見どおりの人気を博したスポーティクーペ。

 しかし、ヘビーデューティなRVのブームが終わって企業業績が悪化し、さらには総会屋への利益供与やリコール隠しの問題などが追い打ちをかけたことで、ダイムラー・クライスラーとの提携を余儀なくされ、その結果として整理されてしまったモデル。

 それが、三菱 FTOです。

 先行して1990年に発売されていた三菱 GTOの弟分的な立ち位置のクーペとして、三菱 FTOは1994年10月に発売されました。

三菱 FTO。コンパクトなボディに2LのV型6気筒DOHCを搭載、さらに最上級グレードには可変バルブタイミングリフト機構のMIVECが載せられ、200psを発生した

 ちなみに車名は1970年代の「三菱 ギャランクーペFTO」のそれを継承していますが、直接の後継モデルというわけではありません。

 基本骨格は、当時の三菱の最新FFプラットフォームに高剛性なクーペボディを組み合わせたもの。

 搭載エンジンは、可変バルブタイミング&リフト機構「MIVEC」を組み込んだ最高出力200psの2L V6 DOHCを筆頭に、同じく2L V6 DOHCながらMIVECなしの最高出力170ps版(後に180ps)と、最高出力125psの1.8L直4 SOHCの3種類。

 そしてトランスミッションは5MTのほか、Dレンジの左側にシフトアップおよびダウンの+−ゲートを備え、MT感覚でシフト操作できる「INVECS-II スポーツモード4速AT(後に5速AT)」を用意。

 このINVECS-IIには、最適なシフトパターンをコンピュータにインプットした「最適制御」や、ドライバーの運転スタイルを学習する「学習制御」も内蔵されていました。

 曲線を多用したワイドトレッドでショートオーバーハングなプロポーションもなかなか魅力的で、インテリアも「上質でありながらスポーティ」といったニュアンスの仕上がり。

 さらにリッターあたり100psを達成したMIVECエンジンや、FF車ではトップクラスの旋回性能が高く評価され、当初の三菱 FTOは月間販売目標だった2000台を大きく超える台数を受注。

 そして「1994-1995 日本カー・オブ・ザ・イヤー」にも輝きました。

4代目BB1/4型ホンダプレリュード、マツダMX-6らとともにFFスペシャリティクーペのパワーバトルを繰り広げた

 その後も三菱 FTOは2回のマイナーチェンジで商品力を高め、精力的に進化を続けました。

 しかし1990年代後半になるとFTOのセールスは大きく落ち込み、1995年には2万7000台以上だった販売台数は、1999年にはわずか680台に。

 そして2000年7月には「新たな側面衝突安全基準に適合させるだけの採算性が見込めない」ということで生産終了となり、翌2000年9月には販売のほうも終了と相成りました。

■消滅の背景はトレンドの変化とブランドイメージの凋落

 モデルライフの中盤まではそれなりに好調なセールスを続け、そして「手頃なスポーティクーペ」としての優秀な資質も備えていた三菱 FTOが、1代限りで消滅してしまった理由。

 それは、マクロにはもちろん「スポーティカーというジャンルそのものの求心力が低下したから」という理由があります。

 しかしそれ以上に大きかったのが、「三菱自動車という会社自体が苦境を迎えてしまったから」でしょう。

 1990年代初頭までの三菱は、RVブームに乗ってパジェロなどが売れに売れたことで「我が世の春」を謳歌していました。

 さらにはディアマンテが売れ、ランサーエボリューションもよく売れるという、そんな時代だったのです。

 しかし1990年代半ば頃からミニバンが台頭すると同時に、頼みのRVはパジェロのようなヘビーデューティなものではなく「もっとライトなもの」に人気の中心が移動しました。

 これにより三菱自動車の業績は国内も海外も、大きく悪化していきました。

GRのコクピット。国産車として初となるスポーツモード(マニュアルモード)付きのATを装備。当初は月間販売目標の2000台を大きく超える台数を受注するも、7年間トータルでの生産台数は3万8028台に終わった

 そんな時期、泣きっ面に蜂ではないですが1997年に「総会屋利益供与事件」が表面化し、企業イメージは著しく悪化。さらに2000年には「リコール隠し」も発覚し、三菱自動車のブランドイメージは「地の底」と言っていいぐらいの位置まで落ちてしまいました。

 これにより連結決算の赤字は1000億円を超え、有利子負債も約1兆5000億円に。

 こうなるともう自主再建は難しくなりますので、結局三菱自動車はダイムラー・クライスラー(当時)と資本・業務提携を結ぶことで生き延びるというか、助けてもらうことが決まりました。

 そして会社がこのような事態になれば、実際の出資を受ける前に「不採算車種」はバッサバッサと整理されるのが常。

 それゆえ当然のようにFTOは、2000年の側面衝突安全基準をクリアするための改修やモデルチェンジなど受けられるはずもなく、あえなく整理の対象となったのです。

 リアルスポーツではありませんが、「手頃なスポーティクーペ」としては魅力的だった三菱 FTO。それだけに、2代目・3代目のFTOを見ることができなかったのは、仕方ないとはいえ、やはり少々残念に思います。

■三菱 FTO 主要諸元
・全長×全幅×全高:4320mm×1735mm×1300mm
・ホイールベース:2500mm
・車重:1170kg
・エンジン:V型6気筒DOHC、1998cc
・最高出力:200ps/7500rpm
・最大トルク:20.4kgm/6000rpm
・燃費:―km/L
・価格:228万7000円(1994年式 GPX 5MT)

【画像ギャラリー】あんなことがなければ、今もまだ…!? 三菱 FTOをギャラリーで見る

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

アイザック・ハジャルがF1昇格。RBが2025年の起用を発表「チームのためにベストを尽くす準備はできている」
アイザック・ハジャルがF1昇格。RBが2025年の起用を発表「チームのためにベストを尽くす準備はできている」
AUTOSPORT web
計29サイズ! ブリヂストンが新型タイヤ「REGNO GR-X III TYPE RV」を発売へ! ミニバン・コンパクトSUV向けに深みを増したタイヤとは!?
計29サイズ! ブリヂストンが新型タイヤ「REGNO GR-X III TYPE RV」を発売へ! ミニバン・コンパクトSUV向けに深みを増したタイヤとは!?
くるまのニュース
ヤリス・クロスの韓製ライバルの実力は? ヒョンデ・バイヨンに試乗 6速MTで軽快な走り!
ヤリス・クロスの韓製ライバルの実力は? ヒョンデ・バイヨンに試乗 6速MTで軽快な走り!
AUTOCAR JAPAN
メルセデスAMG本社へはドイツ版新幹線「ICE」の1等車で! 優雅な旅を堪能できるかと思いきや、元気なオバサマたちに邪魔をされ…【みどり独乙通信】
メルセデスAMG本社へはドイツ版新幹線「ICE」の1等車で! 優雅な旅を堪能できるかと思いきや、元気なオバサマたちに邪魔をされ…【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
ホンダ「0シリーズ」SUVが来月初公開へ 米CES 2025でプロトタイプ2車種を出展
ホンダ「0シリーズ」SUVが来月初公開へ 米CES 2025でプロトタイプ2車種を出展
AUTOCAR JAPAN
大人好みに進化したアウトランダーPHEV【九島辰也】
大人好みに進化したアウトランダーPHEV【九島辰也】
グーネット
“トヨタのなかでトップレベルで戦えるドライバー”平川亮のF1テストは「コースをはみ出すことすらなかった」と中嶋TGR-E副会長が評価
“トヨタのなかでトップレベルで戦えるドライバー”平川亮のF1テストは「コースをはみ出すことすらなかった」と中嶋TGR-E副会長が評価
AUTOSPORT web
2025年始動、世界初の水素燃料ワンメイク競技『エクストリームH』がFIAのワールドカップ格式を取得へ
2025年始動、世界初の水素燃料ワンメイク競技『エクストリームH』がFIAのワールドカップ格式を取得へ
AUTOSPORT web
【ドイツ】プリウス顔な新型「ハイパークーペ」がスゴイ! 5リッター「V8」搭載のナラン・オートモーティブの新モデルとは
【ドイツ】プリウス顔な新型「ハイパークーペ」がスゴイ! 5リッター「V8」搭載のナラン・オートモーティブの新モデルとは
くるまのニュース
上海汽車傘下のMG、「半固体電池」搭載EVを2025年発売 コスパ強調
上海汽車傘下のMG、「半固体電池」搭載EVを2025年発売 コスパ強調
AUTOCAR JAPAN
国産最高級ミニバン『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEVが登場。1065万円から
国産最高級ミニバン『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEVが登場。1065万円から
AUTOSPORT web
新SUV時代に挑むトヨタ、ミツビシ、シボレーの全15チームに対し異例の“ドラフト制”で布陣が確定/SCB
新SUV時代に挑むトヨタ、ミツビシ、シボレーの全15チームに対し異例の“ドラフト制”で布陣が確定/SCB
AUTOSPORT web
日本の道路事情にピッタンコ!? 旧型「ミニ」生産終了から四半世紀 なぜ高値安定なのか?
日本の道路事情にピッタンコ!? 旧型「ミニ」生産終了から四半世紀 なぜ高値安定なのか?
乗りものニュース
【メキシコ】日産の新型「キックス」が人気スギ!? 8年ぶり全面刷新で“大胆顔”に!全長4.3m級ボディ&「クラス超え上質内装」の「小さな高級車」が売れてる
【メキシコ】日産の新型「キックス」が人気スギ!? 8年ぶり全面刷新で“大胆顔”に!全長4.3m級ボディ&「クラス超え上質内装」の「小さな高級車」が売れてる
くるまのニュース
ホンダが大型スクーターの「X-ADV」をアップデート! 新型ヘッドライトや先進装備の採用で「カッコよさ&快適性」が大幅アップ
ホンダが大型スクーターの「X-ADV」をアップデート! 新型ヘッドライトや先進装備の採用で「カッコよさ&快適性」が大幅アップ
VAGUE
輪留めは物理的なブレーキであると共に気もちのブレーキとしても重要! 輪留めがプロドライバーの意識を高めていた
輪留めは物理的なブレーキであると共に気もちのブレーキとしても重要! 輪留めがプロドライバーの意識を高めていた
WEB CARTOP
グーマガ 今週のダイジェスト【12/14~12/20】池田直渡氏、吼える!
グーマガ 今週のダイジェスト【12/14~12/20】池田直渡氏、吼える!
グーネット
[DSP大全]「イコライザー」をプロ並みに使いこなすスペシャル・テクを紹介!
[DSP大全]「イコライザー」をプロ並みに使いこなすスペシャル・テクを紹介!
レスポンス

みんなのコメント

3件
  • 様々な自動車雑誌で、FTOの4WDターボが出る出ると騒がれ、出るのを待って買い控えているうちにモデル消滅してしまった、そんな車だった気がする。

    オオサンショウウオかウーパールーパーか、そんなヌメッとした感じの両生類顔が好きだったけどなぁ。
  • クーペフィアットに似てるとか当時言われたり言われなかったり
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

164.0245.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

99.0190.5万円

中古車を検索
FTOの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

164.0245.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

99.0190.5万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村