■トヨタは「#いつまでハイブリッドを作り続けるんだ...」 その答えが5代目プリウス!
1997年に初代「プリウス」の誕生してから25年。2022年11月17日には5代目となる新型「プリウス」がワールドプレミアしました。
世界初の量産ハイブリッド車として誕生したプリウスはどのような進化を遂げたのでしょうか。
【画像】これが5代目の新型プリウスだ! 全面刷新された実車がめちゃカッコいい!(36枚)
新型プリウスのワールドプレミアでは、トヨタのクルマ開発センター デザイン領域 統括部長・サイモン・ハンフリーズ氏が壇上にあがり、プレゼンテーションをおこないました。
そこで、サイモン氏は「いま、BEVが注目を集めるなか、この言葉を聞かない日はありません。『#いつまでハイブリッドを作り続けるんだ…』そんななか、新型プリウスに込められた情熱について、社長の章男さんと開発陣の『おもしろい闘い』とともに、お話しできればと思います」と語り始めました。
1997年にデビューしたプリウスの名前はラテン語の「開拓者」に由来しています。
トヨタは、初代プリウスの発売以来、グローバルで合計2,030万台のハイブリッド車を販売し、累計、約1億6200万トンのCO2を排出削減しました。
日本では、20年前と比べてCO2排出量を23%も削減。これは国際的に見ても高いレベルになります。
また北米では、トヨタ単独で520万台以上のハイブリッド車を販売し、約8200万トンのCO2排出削減に貢献しています。
しかし、プリウスの最大の功績はそれらの数字ではなく、ガソリンやディーゼルに代わる現実的な選択肢を広めたことにあるといいます。
ハイブリッド技術はトヨタだけでなく、自動車業界全体に受け入れられ、発展しました。プリウスは、これまでとは違う考え方の扉を開いてくれました。
また、サイモン氏はカーボンニュートラルへの道のりについて、次のように語っています。
「2022年、時代は変わり、カーボンニュートラルへの道のりが語られない日はありません。
ハイブリッドだけでなく、BEVも大きな技術的ブレークスルーを果たし、将来のスタンダードとしての地位を固めつつあります。
1年前のBEVイベントで、章男社長が『すべての人にEVを』と話したように、トヨタはBEVを商品ポートフォリオの重要な一部と考えています。
我々はエキサイティングなBEVをフルラインナップで発表。
世界中の多様な顧客ニーズに対応するとともに、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、燃料電池車についても同様に取り組んでいます。
章男社長も常々話すように『BEVは重要な解決策の一つだが、それが全てに勝る選択肢ではない。多様化した世の中には、多様な選択肢が必要』と考えているからです」
このように昨今の世界的な流れは、EVシフトを加速させていますが、トヨタはあくまでも「需要な選択肢のひとつ」として捉え、多様なパワートレインを同時に普及させる取り組みをおこなっています。
そして、サイモン氏は新型プリウスについて、次のように続けます。
「しかし、こうしたトヨタの説明とは裏腹に『#いつまでハイブリッドを作り続けるんだ…』という声も大きくなっています。
でも、章男社長は『プリウスは、どうしても残さないといけないクルマ』だとこだわりました。
なぜか。それは、プリウスは『みんなの手が届くエコカー』だからです。
カーボンニュートラルの実現には、世界中のみんなで協力しなければならない。
だからこそ、みんなの手が届くエコカーが必要なのです。そして、それは明日からではなく、今日から始める必要があるのです。
トヨタには『エコカーは普及してこそ環境への貢献』という考えがありますが、プリウスはマジョリティのための、多くの人に手が届くクルマなのです。
一部の人だけではなく、すべての人が運転できるクルマ、それが最大の強みであり、存在理由です。だからこそプリウスは、絶対に失ってはならないブランドなのです。その点は全員が同じ想いでした。
でも手段はどうあるべきか。熱い議論が交わされました。
次のプリウスは『コモディティ』」か『愛車』か、章男社長は真の『コモディティ』にするべきでは、と提案しました。
『プリウスを、タクシー専用車にしてはどうか』。走行距離の長いクルマとして台数を増やしてこそ、環境貢献につながるという発想です。
そしてもう1つは、『OEM車として、他メーカーからも販売してはどうか』。
長年培ってきたプリウスの環境技術を、トヨタだけに留まらず、メーカーの枠を超えて普及させることでカーボンニュートラル社会に貢献するというアイデアでした。
しかし、開発陣は『コモディティ』ではなく、別の考え方がある。と思ったのです。
合理的なベネフィットだけではなく、エモーショナルな体験で選んでほしかったのです。
確かに、これまでのプリウスのように合理性や燃費性能などの数字を追求すると、制約が増えてデザインは簡単ではありません。
しかし、お客さまへの訴求力を高めるためには『妥協のないクルマ』をつくらなければならない、と心から信じていました。数字だけでなく、愛されるクルマ。
章男社長は、過去の苦労から、それが実現できると思っていなかったと思います。
でも章男社長は、我々開発陣を否定しませんでした。
逆に、闘うチャンスをくれ、コモディティではなく愛車を選んだ開発陣に『この喧嘩おもしろいね』といいました。そしてデザインを見たとき、彼は、「カッコいいね!」といってくれたのです。私たちは愛車を選びました。
これが新しいプリウスです」
※ ※ ※
現在、ハイブリッドはプリウスを起点として、コンパクトカーからSUV、ミニバン、商用車に至るまで、ほぼすべての車種に搭載されています。
このように幅広い車種でハイブリッドが普及したことで、これまでプリウスが担ってきたハイブリッドのけん引役という役割はひとつの節目を迎えました。
自動車産業が100年に1度の大変革期を迎え、次世代のパワートレーンとしてさまざまな選択肢が生まれるなかで、ハイブリッドであるプリウスがこれからの時代も選ばれるのか、新型プリウスの強みである高い環境性能に加え、「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」を兼ね備えたクルマとして、日本をはじめに、北米・欧州をはじめ順次グローバルに展開されます。
日本では、ハイブリッド車を今冬、プラグインハイブリッド車を2023年春頃に発売を予定しています。
最後にサイモン氏は「『コモディティが勝つか』『愛車が勝つか』。この質問の答えを知っているのはお客さまだけです。勝負の行方、みなさんはどうなると思いますか」と投げかけています。
発売された後、歴代モデルに並ぶヒット作となるか、世界から注目されること自体がまさにプリウスのブランドが確立された証といえそうです。
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