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ベース車両は「220カブリオレA」!──ヒロ・ヤマガタ作のオールド・メルセデス・ベンツのアートカーが日本で販売中!

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ベース車両は「220カブリオレA」!──ヒロ・ヤマガタ作のオールド・メルセデス・ベンツのアートカーが日本で販売中!

画家のヒロ・ヤマガタが手掛けたメルセデス・ベンツのアートカーが、日本国内で販売されている。この超希少な1台を武田公実が解説する。

構想から完成まで約8年

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自動車を表現のキャンバスとして、画家や造形作家が美術作品として手掛けたものを一般的に「アートカー」と呼ぶ。今回紹介する「アースリーパラダイス(Earthly Paradise:地上の楽園)」シリーズも、かつて話題を呼んだアートカーである。

日本出身の現代アート作家であるヒロ・ヤマガタが、メルセデス・ベンツ「220カブリオレA」をベース車両として製作した連作がアースリーパラダイス・シリーズだ。

ヒロ・ヤマガタは1983年、「人類飛行200周年記念財団」公式ポスターを手掛けたのを皮切りに、1986年にロナルド・レーガン元大統領本人から「自由の女神100周年記念」公式ポスターを受託。1988年のカルガリー冬季オリンピック、1989年にはエッフェル塔100周年記念公式ポスターを制作するなど、20世紀末に一世を風靡した。

アースリーパラダイス・シリーズもヒロ・ヤマガタの代表作だ。もともと彼が、愛車である純白のメルセデス・ベンツ220カブリオレAの後部に大きな蘭の絵を描き、当時の居住地であるカリフォルニアで日常使いしていたのが大評判となったことが着想源。南太平洋の自然や動物をモチーフとしたアート作品として、制作を決意したといわれている。

ヒロ・ヤマガタはヨーロッパをはじめとする世界中を訪ね、まずはベースとなる220カブリオレAの収集からスタートした。ところが本モデルは、1951年から5年間で1287台しか製造されなかった希少車。当時ですら生産終了から既に30年以上が経過していたことから収集は困難を極め、シリーズ作品として充分な数のベース車両を集めるには、のべ20年もの歳月を要したという。

なんとかベース車両を集めて、それぞれのコンディションに合わせたレストアを施したのち、“走るキャンバス”として息を吹き返した220カブリオレAの1台1台には、アクリル絵の具でていねいに彩色が施された。

まずボディ全面にサンドペーパーをかけた上で白い塗料で下塗り。それから丹念に筆描きしたとの由。普通のキャンパスとは違って、最低でも5~6回は塗り重ねていく必要があったそうだ。

作品制作は当初、ヒロ・ヤマガタと助手の2人でおこなったそうで、ドア1枚を仕上げるのに2カ月以上もかかったという。 その後、約2年を費やして1台目が完成したのち、全米から気鋭のイラストレーターたちを協力者として招集し、数台同時に作業を進めた。

構想から8年もの歳月を経て、アースリーパラダイス・シリーズは誕生した。1980年代後半に最初の1台が完成し、年月を重ねながら2台目、3台目と作品が増えて、1990年代半ばまでに、それぞれ異なるテーマの24台が完成したといわれている。

そして、ロサンゼルス市立博物館の企画展を皮切りに世界巡回展をスタート。翌年以降も箱根彫刻の森美術館や、イタリア・ヴェネツィアの文化とコミュニケーション展、モナコ王立博物館アンティークカーコレクション展、そしてスウェーデン国王の招待によるストックホルムロイヤルミュージアムなど、そうそうたるステージで展示されてきた。

くわえて、アースリーパラダイス・シリーズを題材としたシルクスクリーン作品やアートブックもヒロ・ヤマガタ自身の手によって制作された。

2000万円はリーズナブル?

埼玉県加須市にある「ワクイミュージアム」おこなわれた第2回名車継承販売会にて展示・販売されたのは、アースリーパラダイス・シリーズ最終期の作品「ウェディング(WEDDING)」だ。

1994年から制作工程に入ったとの記録が残されており、リアフェンダーにはヒロ・ヤマガタのサインとともに“1996”の文字も描き込まれているから、完成には約2年を要したと推測される。

本革と天然ウッドで構成されるインテリアは、約30年前にレストアされたまま、現在でもほぼ完ぺきなコンディションを保っている。いっぽう、アクリル絵の具で描かれたボディのペイントは、順当に“枯れ”を帯びてきている。

現オーナーは手に入れたのちもいっさい路上で走らせなかったそうだ。とはいえ、直列6気筒エンジンやコラム式マニュアルのトランスミッションなどのメカニカルパートは完調に保たれている。

「偉大なアーティストが製作したアイコニックなアートカーを所有する、ある種の責任感に基づくもの」と、現オーナーは語ってくれた。

ヒロ・ヤマガタの描いたアートワークを守るために直射日光を浴びさせない、あるいは水には濡らさないなどの“ルール”を自らに課し、これまで大切に保有してきた。ただ入手から長年の月日を経て、そろそろ次代の“文化財預かり人”に継承する時期を迎えたと考え、今回売りに出すのを決意したそうだ。

はたして、この稀代のアートカーに、今回の名車継承販売会では2000万円のプライスが設定された。

近年の国際クラシックカー市場で、220カブリオレAの相場価格は1500~2000万円前後で推移している。ベース車両の良好なコンディションにくわえ、作品の知名度とカリスマ性を考慮すれば、販売価格はリーズナブルと言えるだろう。

文・武田公実 写真・小塚大樹

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