来年アタマにも日本で上陸する予定の新型トライトン。これが超絶カッコいいのだが、振り返ってみればかつて期間限定で国内販売していた時期もあったが、正直ヒットしたとは言えず。たしかに日本はハイラックスの独壇場となっているが、そもそも再上陸させるワケってなによ。
文:渡辺陽一郎/写真:池之平昌信
かつては厳しい結果に……それでも新型トライトンが再上陸するワケって!? 価格次第でハイラックスの牙城崩せるかも
■ハイラックス人気が後押し!? トライトン今度はヒットなるか
国内復帰以降、地道に改良を続けているハイラックス。今やGRスポーツモデルもあるなど勢いがスゴい!! トライトンも続け~!!!
2023年7月に三菱のピックアップトラック「新型トライトン」が披露された。トライトンはタイで生産され、日本でも12年ぶりに輸入販売する。ボディは後席を備えたダブルキャブのみで、駆動方式は4WDだ。
ちなみに先代トライトンは、2006~11年にタイ製のモデルを輸入販売したが、1か月の平均登録台数は30~40台に留まった。
不人気車だったのに改めて輸入販売する理由は何か。開発者に尋ねると「輸入する背景には複数の理由がある。まずは釣やキャンプなど、近年はアウトドア指向が強まったことだ。トライトンは幅広いお客様が購入するクルマではないが、悪路を走るような使い方にはピッタリだ」。
そして先代型の販売が低調だったのに、新型が売れる見込みがあるのか。
それに対し「新型トライトンは、ラダーフレームを新開発して、エンジンは直列4気筒2.4Lツインディーゼルターボだ。装備も先進的なピックアップに仕上げた。また近年では、トヨタハイラックスサーフの売れ行きも堅調で、20代の若いお客様が購入されている。ジープラングラーも人気が高く、野性的な4WDの魅力が見直されるようになった」。
ハイラックスは、以前はビジネス向けのシングルキャブも売られていたが、売れ行きが下がって2004年に一度国内販売を終えた。
その後、2017年に需要の新たな掘り起こしを狙って国内販売を復活させている。
復活したハイラックスは、ダブルキャブの4WDのみでビジネス指向は弱い。2.4Lディーゼルターボを搭載して、価格はベーシックなXでも352万7000円と高く、売れ筋のZは388万2000円だ。Z・GRスポーツは431万2000円に達する。
このハイラックスが堅調に売られ、2023年の登録台数も、1か月平均で約1000台に達する。決して多くないが、カムリを上まわってGR86と同程度だ。
三菱としては、設計の新しいトライトンで、改めてピックアップにチャレンジする価値はあるだろう。
■国内に本格4WD久々投入!! これキッカケでパジェロも……??
東南アジアを中心に大ヒット中のパジェロスポーツ。こちらも是非国内投入を!!!!!!
実はコレ三菱のSUVラインナップも関係している。
以前の三菱は、駆動力を高められる副変速機を加えたパジェロなど、悪路向けのSUVを用意していた。ところが今は、副変速機を装着する純粋な悪路向けの4WDは、国内には投入されていない。
トライトンはパジェロの代わりにはならないが、4WDやサスペンションを悪路向けに設計したことでは共通だ。本格的なオフロードSUVに位置付けられる。
そして三菱はもともとSUVの強いメーカーで、今はセダン、ワゴン、クーペ、OEMを除くコンパクトカーはすべて廃止された。
軽自動車以外の小型/普通乗用車は、SUVのアウトランダー/エクリプスクロス/RVRと、デリカD:5のみになる。
これらの内、デリカD:5は2023年も1か月平均で約1800台が登録され、三菱の国内販売を支える基幹車種だ。
問題はそのほかの車種で、アウトランダーは1か月平均が約1100台、エクリプスクロスは約800台、RVRは約150台まで下がる。
そして三菱の軽自動車比率は約50%だから、車両販売で得られる利益は少ない。価格の高い新型車が必要で、開発者は「トライトンの復活は販売会社からも望まれていた」と述べた。
■三菱らしさが必要!! トライトンには凝縮されていたっ
アウトランダーPHEVと同じセンターモニターが!! ピックアップでも今や高級SUV並の質感なのだ
ちなみに三菱の小型/普通乗用車で販売1位のデリカD:5、2位のアウトランダーには、ライバル車を見つけにくい共通点がある。
デリカD:5は今でも悪路走破力がミニバンの中で最も高く、SUV風の外観を含めて唯一無二の存在だ。
アウトランダーも前後に2個配置されたモーターで4輪を駆動するプラグインハイブリッドのSUVになる。
独自のメカニズムで、モーターは駆動力の増減を素早く行えるため、良く曲がるスポーティな性格に仕上がった。
峠道などを走ると、過剰に曲がる感覚も生じて好みは分かれるが、ほかのメーカーには見られない独特の運転感覚を実現させている。
今後も三菱が国内市場で存在感を保つには、小型/普通乗用車では、デリカD:5やアウトランダーのようなユーザーから共感の得られる強い個性が必要だ。
トライトンには、ハイラックスというライバル車が存在するが、機能は異なる。
ハイラックスはパートタイム式4WDだから、カーブを曲がる時に前後輪の回転数を調節する機能が備わらず、舗装路は後輪駆動の2WDで走る。
その点でトライトンにはセンターデフが装着され、舗装路を含めて4WDで走行できるから、峠道から高速道路まで安定性を常に高められる。
またトライトンは、グラベル(未舗装路)/マッド(泥道)/ロック(岩場)/スノー(雪道)といったドライブモードも採用した。つまりピックアップでありながら、乗用車のSUVと同様の先進的なメカニズムを備えることが特徴だ。
そして実際に、ピックアップながらステアリング操作に対する車両の反応が正確で、進行方向を変えやすい。乗り心地も突き上げ感を抑えた。
デリカD:5やアウトランダーと同じく独自の個性が備わり、そこがトライトンを国内に導入する一番の理由だ。
■価格に期待大!! ハイラックスより割安なら大ヒットの予感
ただしトライトンを堅調に売るには、いくつかの条件を満たさねばならない。まずは価格だ。
トライトンは機能を充実させたが、ハイラックスZの388万2000円以下に抑えたい。トライトンはハイラックスだけでなく、オフロード指向の強いトヨタRAV4アドベンチャー(368万4000円)などとも競うからだ。
三菱内部の価格バランスでも、400万円を超えるとデリカD:5の価格帯に入る。その意味でも380万円以下が理想だ。
2つ目は用品類を充実させること。ピックアップの荷台は屋根がないから、積んだ荷物が雨に濡れる。
荷台のソフト/ハードトノカバー、さらに荷室に装着してワゴンのように使えるキャノピーが欲しい。
ハイラックス用に加工を加えるなどの工夫を凝らし、アフターパーツを豊富に用意すると、ユーザーもトライトンを選びやすい。ハイラックスやハイエースなどは、アフターパーツに魅力を感じて車両を購入するユーザーも多いのだ。
3つ目はメーカーのホームページなどを活用したユーザーの紹介だ。ピックアップは日本ではマイナーな存在だから、一般のユーザーが使い方をイメージしにくい。
そこで実際に使っている人達を通じて、遊び方や使い方を提案することも大切だ。このようなソフトウェアを充実させると、トライトンは堅調に売れるだけでなく、三菱ブランド全体のイメージアップにも貢献するだろう。
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