■ワゴン低迷時代にスバルがワゴンに力を入れるのはなぜ?
最近はワゴン(ステーションワゴン)の売れ行きが減っています。2015年頃には、新車として売られる小型/普通乗用車の16%前後をワゴンが占めましたが、今は約8%です。
ボンネットに穴が開いたターボ車が減少! なぜスバルはわざわざ大きな穴を開けているのか?
ワゴンの販売低迷と併せて、車種の数も減りました。トヨタ「カルディナ」や日産「ステージア」、ホンダ「アコードツアラー」、三菱「レグナム」といったワゴンは、すべて過去のクルマになってしまいました。
その結果、現在購入できるワゴンは、スバル「レヴォーグ」、マツダ「マツダ6」、トヨタ「カローラツーリング/カローラフィールダー」、ホンダ「シャトル」程度と、選択肢が減少しています。
このワゴンが欠乏する時代に、開発と販売に力を入れているメーカーがスバルです。
とくにレヴォーグは、2020年10月に現行型へフルモデルチェンジされ、2021年には2万5439台(1か月平均で2120台)を登録しています。
ちなみに、ワゴンの最多販売車種はカローラツーリングで、2021年には4万530台(1か月平均は3378台/セダンやフィールダーは除く/トヨタ調べ)を登録しています。
なお、カローラツーリングの価格帯は約200万円から約300万円です。
一方レヴォーグの価格帯は約310万円から470万円とカローラツーリングよりも100万円以上価格が高いのですが、堅調な販売を維持しています。
また、カローラを販売するトヨタのディーラーは、全国に約4600店舗を展開していますが、レヴォーグを販売するスバルの店舗数は約460店舗です。
スバルの販売網はトヨタの10%であるものの、レヴォーグの2021年の登録台数は2万5439台(1か月平均は2119台/自販連データ)となり、カローラツーリングと比べても立派な人気車といえるでしょう。
スバルはレヴォーグ以外にも、SUVとワゴンの中間に位置する「レガシィアウトバック」や、「インプレッサスポーツ」はワゴンではありませんが、ミドルサイズの5ドアハッチバックで後席と荷室が広いため、ワゴンに近い性格を備えています。
さらに、インプレッサスポーツをベースに、SUV風にアレンジされた「XV」もあり、これはレガシィアウトバックのコンパクト版にも位置付けられます。
スバルの車種数は他メーカーと比べても少ないので、ワゴンとミドルサイズハッチバックを含めた「ワゴン比率」は、他社よりも高いといえるでしょう。
なぜスバルはこのようにワゴンに力を入れるのでしょうか。スバルの開発者は次のようにいいます。
「スバルは長年にわたり、グランドツーリング思想を大切に育ててきました。運転を楽しめて、なおかつ長距離の移動を安全かつ快適にするクルマ造りです。
このグランドツーリング思想を具体化するには、ワゴンが最適です。荷室の使い勝手などの実用性も、SUVに負けない実力を備えています」
■ワゴンの特徴がスバルの思想とマッチしている!?
ワゴンは居住空間の後部に荷室を備え、ボディの最後部にはリアゲートも装着されるため、荷物の積載や出し入れをしやすいです。荷室はミニバンほど広くありませんが、日常的に使いやすく設計されています。
その一方でワゴンは全高を低く設定。レヴォーグは1500mmに抑えられ、重心もセダンと同等です。
リアゲートの開口部などは剛性を入念に高めたので、走行安定性も優れています。実用的で、運転を楽しめて、長距離の移動も安全で快適です。
このレヴォーグの特徴は、ワゴンボディとの相乗効果で達成されました。表現を変えると、ワゴンはスバルのグランドツーリング思想を商品に反映させるうえで、もっとも親和性の高いボディスタイルに位置付けられているのです。
スバルは1980年代初頭に発売された「レオーネ」の時代から、4WD(AWD)と併せてツーリングワゴンに力を入れてきました。
1989年には「レガシィツーリングワゴン」を発売し、2014年には初代(先代)レヴォーグへと伝統を引き継いでいます。
ワゴンはスバルの考え方と特徴を表現しやすいカテゴリーなので、ワゴンの人気がSUVやミニバンに押されて低下しても、商品開発を続けているのです。
国内ではレヴォーグ、海外では前述のレガシィアウトバック(海外名:アウトバック)が用意されています。
もともとアウトバックも、レガシィツーリングワゴンをベースに開発されたワゴンとSUVの中間的な車種でしたが、いまはレガシィツーリングワゴンが廃止されてアウトバックのみになりました。
2021年9月にフルモデルチェンジして登場した新型アウトバック(6代目)は全長が4870mmに達するラージサイズのボディを備えますが、ワゴン風のSUVなので、最低地上高は213mmを確保しながら全高は1700mm以下です。
直進安定性が優れ、重心があまり高くないので、左右に振られる感覚も受けません。スバルらしいワゴン感覚のSUVに造り込みました。
レヴォーグやアウトバックを運転すると、スバル車の良さと併せて、ワゴンの特徴も良くわかります。
そして、なぜスバルがワゴンにこだわるのか、という理由も見えてくるでしょう。
そこには大規模メーカーを相手に、スバルが生き残るための「ワゴン戦略」も秘められているというわけです。
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みんなのコメント
もう、あらかたクロスオーバーになってしまって、レヴォーグしかないじゃないか。
インプレッサも、ワゴンじゃないよね?