■トヨタ新型プリウスがついに5代目に! 乗って楽しい新生代エコカー
2022年11月16日に世界初公開されたトヨタの5代目となる「プリウス」は「Hybrid Reborn」をコンセプトに大きく生まれ変わりました。
歴代モデルは「圧倒的な燃費」が個性でしたが、新型は燃費がいいのは当たり前で、それとは違う個性を手に入れました。
それは一目惚れする「デザイン」と虜にさせる「走り」です。
これまでプリウスとは関係が薄かった2つの要素が盛り込まれた新型、一体どのようなモデルなのでしょうか。
【画像】走る姿に惚れるデザイン! 新型プリウスはなぜカッコいい? 実車で見る!(37枚)
今回一足先にHEV(ハイブリッド車)のプロトタイプに試乗してきました。試乗場所は何と富士スピードウェイ・ショートコースです。
これは開発陣の自信の表れだと理解すると同時に、ハードルがグンと上がりました。
まずは1つ目の個性となる「デザイン」のチェックから、エクステリアの印象は素直に「カッコイイ!!」です。
2代目から続く1モーションフォルムを継承していますが、ワイド&ローのプロポーションやルーフ頂点を後方に下げたことに加えて、低いボンネット、スポーツカーのように寝かされたフロントウィンドウ。
線ではなく面で抑揚を与えたグラマラスなサイド、薄型一文字ライトを廃したリアなどによりハッチバックというより4ドアクーペといいたくなるスタイリッシュなフォルムです。
ちなみにさまざまな場所に“隠れプリウス”が隠されています。
解りやすい場所だとフロントウィンドウやヘッドライト、フェンダーアーチなどですが、開発陣に効くと計26個とのことなので難易度は高そうです。
タイヤは1.8リッターが195/60R17、2リッターモデルが195/50R19を履きますが、ホイールのインセットも純正にしてはかなり攻めた設定(=ツライチに近い)です。
19インチは初代「86」の前期モデル用に似たデザインでスポーティさ重視、17インチはホイールカバーですがナットを見せない珍しいデザインで先進性は19インチより高く感じました。
これまでトヨタ車はデザインスケッチのときはカッコいいけど、実車になると残念というモデルが多かったのですが、プリウスはむしろ実車のほうがカッコいいと感じたくらいです。
ボディカラーは全8色が用意されますが、定番の白黒シルバーも悪くないですが、個人的にはマスタードイエロー、エモーショナルレッドのような明るい色も似合うと思います。
インテリアは最新トヨタ車共通の水平基調のコクピットデザインです。
メーターはプリウス伝統のセンターメーターをやめ「bZ4X」で採用のバイザーレスの液晶メーターを採用。
シンプルで視認性も高いですが、人によっては適正なポジションを取ったときにステアリングでメーターの一部が隠れてしまうことも。
欲をいえばメーター位置もステアリング位置に合わせて調整できると嬉しいです。
センターディスプレイはグレード別に12.3/8インチの2種類を用意、エアコンの操作パネルはクラウンと同じ物です。
さらに新型ではインパネシフトからフロアシフトに変更したことで、インパネセンター下部のレイアウトに自由度が生まれ2段式のポケットや横レイアウトのカップホルダーの装着など利便性も向上。
ちなみにカップホルダーは取り出しやすさを考慮した工夫(左右に僅かに角度をつけている)がおこなわれた優れものです。
シフト横のサイドトレイ(コンソールから電源を取った時の配線用のくぼみ付)は、ディーラーOPで非接触充電器(縦置き)も装着可能です。
センターコンソール周りは限られたスペースにさまざまなアイテムを装着しなければなならないので雑多なレイアウトになりがちですが、プリウスのそれは実にスマートです。
このスマートさ、クラウンはプリウスを少し見習ったほうがいいと思います。
エクステリアデザインから後席は割り切りだと思われがちですが、ルーフラインライニングの工夫やシート角度の最適化による頭上スペースの確保、+50mmのホイールベースによる足元スペース拡大。
そしてフロントシート形状最適化やリアドアのウィンドウ面積をできるだけ大きく取ること(そのためにリアドアに電子ラッチを採用)により閉塞感を抑えた空間にすることで、居住性は見た目以上に高いレベルに仕上がっています。
■いままでのプリウスとは全然違う! 新型プリウスの走り、魅力はドコ?
もう1つの個性である「走り」はどうでしょうか。
ハイブリッド車のパワートレインは2タイプ用意されており、1.8リッター/2リッター共に電動化ユニットが刷新された「第5世代THSII」を搭載します。
なかでも2リッターのシステム出力は先代比1.6倍となる196psを発揮しながら燃費は先代同等レベルと走りとエコを高次元でバランスさせたユニットです。
2リッターは応答性の高さやEV領域が増えたモーター走行などはもちろんですが、それ以上に「速い」と感じさせる力強さが印象的です。
先代はアクセル開度が増えるにつれてエンジンだけが唸り加速は伸びずでしたが、2リッターはその領域でもパワフルなだけでなく伸びのあるフィーリングは電動車というよりもエンジン車のそれに近いと感じました。
ダイレクト感はガソリン車同等とはいいませんが、ビヨーンという感じは少なめで「結構いいよね!!」と思えるレベルです。
低音が強調されたエンジン音は賛否が分かれるかもしれませんが、筆者は濁音の多い音質のダイナミックフォースエンジンのなかで、クラウンのデュアルブーストハイブリッドに続いてサウンドと呼べるレベルに来ています。
1.8リッターは出力アップした第5世代THSIIにより、先代よりもアクセルを踏んだときの力強さ、EV領域の粘りが向上しているだけでなく、少しだけ電動車感も増しているように感じました。
アクセル開度が大きいとエンジンが唸るのは先代と同じですが、制御の進化や静粛性アップなどによりそのレベルはかなり抑えられています。
乗る前は「2リッターの圧勝かな!?」と思っていたものの、30-40km/hくらいでアクセル開度の少ない領域での力強さは意外と負けてないなと感じました。
フットワークはどうでしょうか。
プラットフォームは先代も採用するGA-Cですが、これまでの知見や他のモデルからのフィードバックを活かし「第2世代」へと進化。
ボディ剛性は数値云々よりも「弱い部分がないか」、「綺麗にねじれるのか」といったような剛性の連続性に着目した最適化がおこなわれています。
その1つがフロント周りの剛性アップで、ステアリングを切ったときの変形を抑える構造になっています。
ステア系は直結感にこだわった第3世代EPS制御、サスペンションはこれらに合わせて最適化がおこなわれています。
さらに床下に採用された空力操安アイテムやカローラ5000万台記念車で話題となった除電スタビライジングシート(2リッター)も採用。
その走りは7年前に乗ったときに「(3代目以前)の直進安定性・旋回性がイマイチだったプリウスが普通になった」と驚いたはずの4代目が一気に色あせたのはもちろん、フォルクスワーゲン「ゴルフ」とガチンコ勝負できる実力を持つカローラシリーズをも超える、つまり実用車の領域を超え、スポーティモデルと呼べるいい走りです。
■なぜこれほどまで乗り心地が良いのか? もはや高級車並のレベルとは
ステア系は軽めの操舵力(ノーマル)ですが正確性や雑味のない滑らかなフィール、そして路面の状況の解りやすさ(直結感)はGA-Cモデル群のなかではナンバーワンです。
ハンドリングはコーナー進入時では操作に対してスッとノーズがインを向く回頭性の良さと車両応答の高さ。
旋回中は路面に張り付くような安定したコーナリング姿勢と無駄な動きを出さないフラット感の高いバネ上の動き、そして予測操作せずに行きたいラインを狙えるトレース性の高さ。
コーナー脱出時はアクセル操作に対してシッカリ応えるトラクションの高さなどを実感しました。
試乗車のタイヤはヨコハマ・ブルーアースGTと決してハイグリップな銘柄ではありませんが、旋回Gはかなり高いだけでなくタイヤのグリップギリギリまで使える懐の深さから、シャシ性能のポテンシャルはかなり高い所にあります。
それに加えてコーナリングの一連の動きが自然で素直、そして連続性を持っており、ドライバーとクルマとの一体感やコントロール性は下手なスポーカー顔負け。
その結果、運転にも余裕ができるしクルマとの信頼関係も上がるので、安全・安心に繋がるでしょう。
これらの印象は17インチ、19インチどちらも基本的には同じですが、乗り味の違いは若干あります。17インチは安心感を高める「穏やか」、19インチはワクワク感を高める「機敏さ」がプラスされているように感じました。
このように走りは先代よりもスポーティな味付けですが、快適性も先代よりもレベルアップしています。
サーキットはフラットな路面なのでわざと縁石を跨いで走らせましたが、アタリの優しさだけでなくいかなるときも乗員をシッカリとホールドし揺すらないシート構造とバネ上のフラット感の高さが印象的でした。
もちろん、硬い柔らかいでいえば17インチはギャップを包み込むような柔らかさ、19インチは17インチより僅かに引き締められているもののエアボリュームが小さいタイヤとは思えないいなしほうで、思わず電制ダンパー付きだと勘違いしてしまったくらいでした。
新型は2リッター/1.8リッター共に四輪駆動のE-FOURを設定していますが、これも大きく進化しています。
モーターの出力は先代に対して6倍となる30kwとなり全車速域でトラクションを掛けられるようになっただけでなく(先代は発進時から低速域のみ)、コーナリング時に駆動力制御を活用し、旋回のアシストもおこなっています。
今回の試乗ではどちらも安定性を持ちながらも、旋回軸が少し後ろに下がった感じで、より四輪全体でグ曲がる印象でした。
とくに2リッターは高出力を上手に活かしてスロットルで曲げることも可能に。1.8リッターはそこまでではありませんが、より楽に旋回ができるようになっています。
乗り味は、車両重量や前後バランスも変わっており、どちらかというと軽快な動きなFFに対して重厚な印象です。
パワートレインとのバランスという意味では、2リッターはFFよりマッチングは良好、1.8リッターはちょっと鈍重な動きになるのでFFのほうが合ってるかなと感じました
このようにハンドリングと快適性のバランスの高さは、第2世代のGA-Cをはじめとするシャシ性能のレベルアップに加えて、プリウスの低重心&ワイドトレッド、ロングホイールベースの基本素性の高さが効いていると思います。
■「トヨタで一番つまらないモデル」が「トヨタで一番面白いモデル」に生まれ変わった? そのワケ
ハード的には先代から大きな差がありませんが、乗るとここまで違うのはなぜでしょうか。
開発責任者の大矢賢樹氏に聞くと次のように教えてくれました。
「基本素性の良さやTNGAの熟成も大きいと思いますが、一番は開発の進め方でしょうね。
従来は極端にいえば『領域ベストを最後に整える』でしたが、新型はクルマベストを目指すために『ワンチーム開発』おこないました。
その結果、領域を超えた議論ができ完成度も増したと思っています。
さらに開発や生産技術のメンバーに早い段階でデザインを見てもらい、『このデザインに見合う走りとは?』、『このデザインを実現させるには?』など方向性の統一をシッカリおこなったことも大きかったです」
見た目/走りから総じていうと、「トヨタで一番つまらないモデル」が、「トヨタで一番面白いモデル」に生まれ変わった、それが素直な感想です。
そして、クラウンと同じようにクルマ好きにとって初めて自分事になったプリウスかもしれません。
よりパワフルなPHEVは後日試乗予定ですが、HEVの実力を知ってしまったら、期待しかありません。
トヨタは現在“群”でビジネスをおこなっていますが、GA-Cシリーズという意味いえば、新時代のスタンダードになった12代目カローラに対してよりスタイリッシュ&スポーティなキャラが与えられたモデル、つまり「現在版カローラ・セレス」のような存在なのかなと。
となると、よりヤンチャなモデルも欲しくなってきます。
例えば、BEVを黙らせるパフォーマンスを備えた高性能PHEV「GRプリウス」などはいかがでしょうか。
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