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時代の最高速モデル 2000年代 ブガッティ・ヴェイロン 16.4 W16気筒で407.1km/h

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時代の最高速モデル 2000年代 ブガッティ・ヴェイロン 16.4 W16気筒で407.1km/h

ピエヒ氏の夢を実現させたようなクルマ

かつてないほど大胆な発想で生み出された量産モデル、ブガッティ・ヴェイロン 16.4。フォルクスワーゲン・グループの元会長、フェルディナント・ピエヒ氏の子供時代の夢を実現させたようなクルマだった。

【画像】21世紀の最速モデル ブガッティ ヴェイロンとシロン 派生版のディーヴォも 全104枚

ブガッティというブランドを再生させ、1000馬力のエンジンを積み、400km/h以上の最高速度を叶えたスーパーカーだ。新車時の価格は100万ユーロに達していた。

しかし、その目標の高さ故に計画は順調に進まなかった。コンセプトが発表されたのは、1999年の東京モーターショー。前例のないW型18気筒エンジンを搭載する意欲作に、結成間もない技術者チームは手を焼いていた。

それを打開したのが、2003年に技術部門のトップに就任したヴォルフガング・シュライバー氏。元レーシングドライバーのトーマス・ブシャー氏も加わり、プロジェクト全体が再考された。最終的に、全体の95%が再設計されたという。

そして2005年、フランス・モルスアイムに復活したブガッティとして初の量産モデル、ヴェイロンが誕生する。エンジンは2気筒減り、W型16気筒になっていた。

フォルクスワーゲン・グループが、フランスの名門、ブガッティを買収したことに懐疑的な人もいた。しかしヴェイロンの発表で、創業者のエットーレ・ブガッティ氏や息子のジャン・ブガッティ氏に対する見方も改められることになった。

創業時から自動車技術に革新を与え、レーシングカーやラグジュアリー・モデルを生み出してきた歴史にも、再び注目が向けられたのだ。

W16気筒クワッドターボ・エンジンは1001ps

ヴェイロンは、今でも驚くような技術が詰め込まれている。4基のターボで過給される8.0L W16エンジンは、1001psを発生。最大トルクは127.2kg-mと3桁あり、最高速度は407.1km/hが主張された。

熱を大量に生み出す、ほぼむき出しのエンジンを冷却するラジエターは10基。怒涛のパワーを無駄なく路面に展開するため、ハルデックス・デフを備える専用の四輪駆動システムも開発されている。

トランスミッションは、変速時間が0.15秒という極めて迅速な、7速デュアルクラッチ・オートマティック。リアにはリミテッドスリップ・デフも備えている。

必要なメカニズムで膨らんだ車重は、2tに迫る重量級。400km/hから強力な減速を得るには、直径400mmという巨大なカーボンセラミック・ブレーキも必要になった。

そして何より、マクラーレンF1の386.4km/hという最高速記録を打ち破った立役者は、W型16気筒クワッドターボ・エンジンだろう。当時、最も潤沢に高度な技術が投入された量産ユニットでもある。

ベースは、フォルクスワーゲン・パサートが搭載していた狭角W型8気筒エンジン。2基を結合し16気筒とし、1対のカムシャフトが32枚のバルブを制御した。

シリンダーはスクエア構造で、ボアとストロークはともに86mm。1気筒の排気量は499.56ccだ。ターボチャージャーは各バンクに2基が組まれ、冷却水も用いた特殊なインタークーラーを介し、吸気は18psiまで加圧された。

燃費も桁違い。フルスロットルを保ち続けられれば、100Lのガソリンタンクを20分で空にすることが可能だった。

大きなゴルフのように運転できる

筆者は今回の企画まで、ブガッティ・ヴェイロンを運転したことがなかった。ズングリとしたスタイリングから、400km/hオーバーだけを目指した直線番長的なクルマだとイメージしていた。だが、それは大きな間違いだった。

内包している冷却システムと、立ち向かうべき空気の壁を考えれば、ヴェイロンのスタイリングは驚くほどシンプル。ドアを開き、精巧に仕立てられたインテリアに身を置くと、コンベンショナルな運転環境にもう一度驚く。

豪華なステアリングホイールの奥には、一般的なメーターが5枚並んだパネルが据えられている。センターコンソールは、マシンターン加工の美しいアルミパネルで飾られているが、エアコンの操作系などは使い慣れたデザインに準じている。

パネルは滑らかにカーブを描き、手前側に7速デュアルクラッチATのシフトレバーが立つ。それ以外、見慣れないスイッチなどはほぼない。

今回は340km/h以上の速度域まで出すことが許される、魔法の2本目のキーは預かれなかった。それでも、ヴェイロンを快く貸し出してくれたジョンティ・コリアー氏は、その速度以下なら能力を探求して構わないという。ありがたい。

彼が寛大な理由は、発進させてすぐに理解できた。スタートボタンを押し、豪華なシフトレバーでドライブを選択する。優しくアクセルペダルを倒す限り、大きなフォルクスワーゲン・ゴルフのように運転できる。

機敏に身をこなし、エスプリのように走る

更に右足へ力を込めると、大きく成長し洗練された、ロータス・エスプリのように走る。ステアリングホイールは情報量が豊か。機敏に身をこなし、コーナリングは反応が良い。

ヴェイロンを持ち込んだサーキットを2周ほど回る。コリアーは、4基のターボをまだ使っていないだろうと説明する。もっと速く走れるという。

彼の言葉を聞いて、よりペースを速めようと攻め立てる。しかし、筆者が40年ほど積んできたドライビング・スキル程度では、すべてを解き放つことは難しかった。

運転席で聞くヴェイロンは、4基のターボが圧力を高め始めると、ジェット旅客機のボーイング747のように唸る。短いターボラグをおいて、1888kgの質量を打ち破るように、巨大なトルクが湧き出てくる。

短いストレートで加速を試みると、あっという間に自殺行為的な速度へ加速する。ブレーキペダルへ力を込めれば、リアウイングが立ち上がりエアブレーキとして働く様子がバックミラー越しに見える。まだ死ぬのは早い。

ブガッティ・ヴェイロンを試すのに、これより長いストレートを筆者はいらない。その片鱗だけでも、疑いようのない速さだった。

協力:トム・ハートリー・ジュニア社

ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005~2011年/欧州仕様)のスペック

英国価格:92万5000ポンド(2005年時)/150万ポンド(約2億4000万円)以下(現在)
生産台数:252台
最高速度:407.1km/h
0-97km/h加速:2.5秒
車両重量:1888kg
パワートレイン:W型16気筒7993ccクワッド・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:1001ps/4200rpm
最大トルク:127.2kg-m/2200rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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