この記事をまとめると
■2021年の秋に発表された7代目となる新しいSLが日本に上陸した
野性味溢れるこれが未来のマイバッハだ! 世界に1台のコンセプトモデル「Project MAYBACH」をメルセデス ミー東京にて特別展示
■ドイツではV8ターボモデルもあるが、日本では2リッター直列4気筒モデルのみの展開だ
■軽量となったことでコーナリング性能が極上のフィーリングとなっている
V8を積まずともこのクルマは「SL」なのだ
スポーツカーレースのために開発された歴史的な最初の“SL”プロトタイプはともかくとして、多くの人にとってのメルセデス・ベンツSLのイメージは、あくまでも大人のゆとりを身にまとった洒脱なスポーツカーであり、オープンエアGT、といったところだろう。踏めばまったく不満なしに速いけど、攻め立てるような走りは似つかわしくない。心地好くラグジュアリーであり、快適さは折り紙付き。そして誰もがそれと認める存在感を漂わせている。そういうクルマであるがゆえにたまらなく気持ちをくすぐられる、という人も決して少なくないはずだ。
ところが、である。2021年の秋に発表された7代目となる新しいSLは、“メルセデス・ベンツ”SLではなく“メルセデスAMG”SLを名乗っていた。メルセデスのハイパフォーマンスモデル担当ブランドのみでの展開、ということだ。もしやこれまでのエレガンスさえ感じさせる乗り味を捨てて、AMGのエンジニアたちがゼロから走りのよさを磨き抜いて作り上げた、気合いの入ったスポーツモデルに生まれ変わったのか? と軽い戸惑いを感じたことを記憶している。
次なる当惑は、日本に上陸することになったメルセデスAMG SLが、2リッター直列4気筒モデルのみということだった。本国にはV8ターボ搭載モデルもあるというのに、である。1954年にデビューした190SL以来およそ60年ぶりの4気筒エンジン。時代が時代だからダウンサイジングもやむなしとは思うし、昨今の2リッター直4ターボを侮ってるつもりもないが、SL=マルチシリンダー、もっというならSL=V8ユニット搭載というイメージに慣れているファンたちが物足りなさを感じたりはしないか? “大きなSLK(あるいはSLC)”みたいに、妙な具合に揶揄されたりするんじゃないか? と余計な心配をしたりもした。
そんなふうにちょっとばかり複雑な想いを気持ちのどこかに秘めながら望んだSLの試乗。初めて実際に目にしたメルセデスAMG SLは、写真で見たときよりずっとエレガントなたたずまいで軽く驚いた。
とくにそう感じたのは、ここでソフトトップに回帰したそのクローズドの姿がなんとも美しく思えたからだ。3層構造の感心するほどしっかりしたトップが描くなだらかなラインがとても綺麗で、真横からシルエットを見たら流れるようなルーフラインを描くクーペかと思うことだろう。AMG SLは見ようによってはAMG GTロードスターに似てるところもないとはいえないし、もともとは300SLプロトタイプのものだったパナメリカーナグリルを備えた顔つきも少しばかりアグレッシブに感じられたりするところもあるけれど、車体に穿たれた孔の数や大きさなど細部にさまざまな気配りがなされてることも手伝って、歴代SLと同じように時代にマッチした品格を漂わせてるように見える。
インテリアでトピックとされていたのは、まずは+2のリヤシートが備わったことだろう。たしか日本には未導入ながら4代目の時代に2+2の仕様があったような気もするが、これはちょっと新鮮。身長150cm以下推奨ということだし大人が収まるには現実的とはいえない大きさだが、脱いだコートや手もとのバッグを置く場所ができたというだけで、十分に歓迎されることだろう。
そしてもうひとつはダッシュボードでもっとも目立っている11.9インチのタッチスクリーン。大きさも使い勝手もまるでタブロイド端末のようで、タッチスクリーンとしては操作もしやすいのだが、じつはこのスクリーン、結構な可動域で角度調整ができる。トップを開け放ったときに空や光の映り込みで視認性が削がれることもあるのがオープンカーの宿命。それを最大限に回避することができる。
エンジンの軽さが光る極上のオープンスポーツ
じつはトップの開閉もこのスクリーンへのタッチ操作で行うのだけど、まずはクローズドの状態で走り出すことにした。さすがにソフトトップの作りが緻密でしっかりしてることもあって、クローズドボディのモデルとまではいかないが、かなり近いといえるくらいには室内は静かだ。もちろん隙間から風が入り込んでくるような音も聞こえなければ、ボディのきしむ音が耳に入ってくるようなこともない。
もっともそれらは車体が素晴らしくしっかり作られているからこそ成立するものだ。アルミニウムの複合素材からなるスペースフレームも、リンクからナックルからハブキャリアからとほとんどが鍛造アルミニウムで構成された前後5リンクのサスペンションも、このモデル専用に新たにAMGが開発したもの。路面が荒れてるところを通過してもたわんだ感じはいっさい受けないし、どこかから妙な音だとか振動だとかが伝わってくることもない。
が、これまでのSLと較べると、乗り心地は硬い。というか強く引き締められている、というべきか。4輪それぞれにリリーフバルブをふたつずつ持たせ、伸び側と縮み側をそれぞれ無段階に電子制御するアダプティブダンパーがいい仕事をしてるのだろう。路面の凹凸をしっかり吸収してくれるし、そのときの動きも極めてスムースだから、乗り心地に粗さや荒さを感じることはない。が、優雅なオープンエアクルーズをするためにこのクルマを選ぶ人にとっては、もう少しだけ柔らかなほうがいいかも、と感じる場面がもしかしたらあるかもしれない。方向性としては、これまでよりも明らかにスポーツ志向になっている。
ワインディングロードを前にトップを開け放つことにして、信号で停止したのを機にタッチパネルを操作した。次の瞬間に信号が青に変わってしまったが、走行中でも60km/hまでは開閉が可能だし、そもそも開閉に要する時間はそれぞれ15秒。そのまま走り出しても問題は何ひとつない。ヒーターは強力、シートのベンチレーターも大きな味方になってくれるし、ステアリングヒーターもある。襟元に温風を送ってくれるエアスカーフもある。さほど寒さを感じることもない。それに厳寒の日には閉じておけばいいだけの話だ。
気持ちのいいカーブが表れてきて、少しペースを上げる。悪くはないんだろうなと予想していた2リッター直4ターボは、いやいや、悪くないどころではなかった。パワーは381馬力/6750rpm、トルクは480Nm/3250-5000rpm。その数字を見るだけでもなかなかの力強さだと推測はできたが、その数字には表れてこない武器を備えてるのだ。エレクトリックエキゾーストガスターボチャージャーと呼ばれる、いわゆる電動ターボである。タービンとコンプレッサーの間の同軸上にモーターを挟み込んで直結していて、一般的なターボエンジンなら過給圧の低い低回転域やスロットルをオフにして過給圧が下がったときでも、モーターが直接駆動することで過給圧を維持できる。
つまり、ターボラグは発生せず、常に素早い反応を得ることができるのだ。そのモーターの電源にはBSGことベルトドリブンスタータージェネレーター、つまり48Vのマイルドハイブリッドシステムを活用し、13.6馬力に58Nmと決して大きな数字ではないが、エンジンのスタート&ストップや発進時のアシストを担っている。ただの2リッター直4ターボじゃない、といことだ。
それだからして、ゼロ発進の段階からトルクは豊か、一般道の走行でも比較的軽く仕上がったとはいえ1780kgの車体を軽やかに前へと進ませる。全域にわたって好レスポンスだが、とりわけ低中速域では鋭いといってもいいほどで、コーナーの立ち上がり加速、中間加速などでよく使う回転域では、音質はそう悪くないけど明らかに4気筒のものであるサウンドがコクピットに飛び込んでこなければ、排気量の小ささを疑いたくなるほど。そのくらいキレのあるパンチを見舞ってくれる。トップエンドに近づくにつれて盛り上がり感が少しずつ穏やかになってはいくものの、7000rpmあたりまで気持ちよくシャープにまわってくれるのも事実。しかもそのパワーとトルクとレスポンスを、トルクコンバーターではなく湿式多板クラッチを使った9速のAMGスピードシフトがダイレクト感たっぷりに素早く繋いでいくのだ。
このパワーユニットにトランスミッション、そしてスポーツ志向を強めた新しいシャシー、である。その組み合わせが生む走りっぷりをひと言で表すなら、軽快。とにかく軽快なのだ。いい意味で“これはSLKか?”とすら思えたほどで、これまでの重厚といえたSLのイメージはもはやそこにはない。長いノーズの下に収まるのは軽い4気筒ユニットなのだから、鼻先はスイスイと気持ちよくイン側に入ってくれるのだが、といって過度にクイックなわけでもなく、ステアリングの操作に対して素直に自然に反応する感覚。だから狙ったラインにピタリと乗せやすい。もちろんパワーとトルクのある後輪駆動だから、その気になればリヤをブレイクさせるような走り方も可能は可能だ。けれど、それよりむしろ後輪にいい具合にトラクションを送り、安定した姿勢でパワーユニットの持つ瞬発力とチカラを活かして次のコーナーへとダッシュしていくほうが似つかわしいし、何倍も楽しいように思う。
SLはそういうお話ができるクルマになった。あるいは、なってしまった、か。これまでと少し路線を変えて、ワークスチームのプロトタイプレーシングカーとして1952年のカレラパナメリカーナメヒコで勝った300SLプロトタイプの方向にほんの少し寄ったような、明確なスポーツテイスト。先代までのような重厚さやたおやかさのようなものが若干希薄になったのも、たしかだ。けれど大人のゆとりを身にまとった洒脱なスポーツカーでありオープンエアGT、という範疇にはちゃんと留まってはいる。
そしてこれだけはハッキリお伝えしておきたいと思うのだが、メルセデスのSLと名の付くクルマでこうした場所を走らせてみて、この新型SLがもっとも楽しく、そしてもっとも爽快だったと感じてる。僕は往年のSLに憧れめいた気持ちを持ち続けてきたからブースカと文句みたいなものを並べたい気持ちもあるのに、有り体に言うなら、このメルセデスAMG SL43を気に入っちゃったのだ。まいった……。
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みんなのコメント
BMWも同様にハイブリッドの技術を開発して多様な車種を展開している。
しかしアウディは開発費用と技術がない為全車種をイキナリEVにすると発表。
しかも全車種中国生産。終わったね。
中国アウディは以前、発癌性物質を内装に使用して実際に癌で2名が死亡。にもかかわらず
徹底的に非を認めず逃げた。最悪な企業だね。そんなのが日本に入ってきて大丈夫なのかね。