現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > もうS2000のようなクルマは作れない…ホンダが時折見せる「やりすぎ」を褒める

ここから本文です

もうS2000のようなクルマは作れない…ホンダが時折見せる「やりすぎ」を褒める

掲載 30
もうS2000のようなクルマは作れない…ホンダが時折見せる「やりすぎ」を褒める

 ホンダ自慢のVTECエンジンにオープンボディ、高剛性シャシー、2シーター、後輪駆動、さらには6速MTのみという刺激的な内容で、クルマ好きを熱くさせていたピュア本格スポーツカー、ホンダ「S2000」。特に最終仕様の「Type S」などは、「カタログモデルでここまでやるか!??」と思ってしまうほどの派手なエアロパーツを装着し、もちろん中身もホンダならではのこだわりがとことん詰め込まれていた。

 平成の名車「S2000」について振り返りながら、ホンダがこの「S2000 Type S」でみせてくれた「やりすぎぶり」についても振り返ろう。

もうS2000のようなクルマは作れない…ホンダが時折見せる「やりすぎ」を褒める

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:HONDA、ベストカー編集部

黄金時代のホンダがこだわりぬいたピュアスポーツ

 1999年4月に発売となったS2000。2.0L 4気筒の自然吸気エンジンながら、最高出力は250ps/8,300rpm、レブリミットは9,000rpm、最大トルク22.2kgm/7,500rpmを発揮。リッターあたり125PSは、当時としては相当にポテンシャルが高いエンジンだが、それでも当時の排出ガス規制値をはるかに下回る、先進的な環境対応エンジンだった。

初期モデルのS2000。オープンボディでありながらクローズドボディと同等以上の剛性を持つシャシーでピュアなハンドリングが楽しめた

 シャシーは、ボディ中央部に位置するフロアトンネルをメインフレームの一部として活用し、フロアトンネルを前後のサイドメンバーと同じ高さで水平につなぐ「ハイXボーンフレーム」を採用することで、オープンボディでありながら重量を増加せず、クローズドボディと同等以上の高剛性と衝突安全性を実現。

 電動ソフトトップは、スイッチ操作で開閉が可能で、開閉にかかる時間も約6秒と、気軽にオープンエアを楽しむことができた。また、タコメーターも左から右に流れるルデジタルタイプで未来を感じたし、ステアリングまわりにスイッチを集中させ、プッシュボタン式エンジンスターターを採用したことで、フォーミュラカーを彷彿とさせるインテリアにも仕上がっていた。このあたりの演出は、当時のホンダはとてもうまかったと思う。

 2001年にはマイナーチェンジが実施され、サスペンションの改良、オーディオの出力向上などブラッシュアップが図られた。2003年の2度目のマイナーチェンジでは、ヘッドライトやリアコンビネーションランプ、前後バンパーのデザイン変更、インテリアのデザイン変更、新デザインの17インチアルミホイールの採用、ブレーキ性能の強化、ボディ剛性の強化など大きな改良が加えられた。

 2005年に再び実施されたマイナーチェンジで、エンジンは2.2Lに排気量アップ。DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)の採用と合わせ、より日常での走りの質感を高めた。シート形状の変更や内装材の色調変更などにより、インテリアの品質も向上されている。

 そして2007年10月、「Type S」が登場する。これがピュアスポーツS2000の集大成であり、特別な「ファイナル仕様」となった。

[usedcar-search brand_cd="1020" body_cd="4" car_cd="10201026" keyword="S2000" limit=30]

極限まで追求された空力性能

 S2000 Type Sの派手なエアロパーツは、もちろん見た目だけではなく、開発にあたって掲げられたテーマ「オープンスポーツとしての操安性能追求」を達成するため、風洞実験室での基礎的な研究と、徹底した実走テストによって突き詰められた形状だ。車両全体のCL値(揚力係数)の低減を目指すとともに、理想的な前後リフトバランスを追求するために装備されていた。

 たとえば、大きく左右に張り出したフロントスポイラーは、高速走行時にボディを路面に押し付ける方向に力を発生し、ボディを浮き上がらせようとする揚力との相殺を図っている。リアスポイラーは翼断面形状とすることで、CL値を大幅に低減。中央部を大胆に持ち上げた形状になっているのは、オープン時、クローズ時どちらの場合でもシート後方の乱流を積極的に整流するためだそうだ。

2007年10月に発表されたS2000 Type S。インパクトのあるエアロパーツについ目がいってしまう

Type Sのフロントスポイラー。ボディを路面に押し付ける力を発生させ、揚力を相殺する効果がある

Type Sの派手なエアロパーツは、空力特性をとことん追求した高機能なもの。これにより理想的な前後リフトバランスを手に入れている

本当にクルマが好きな人たちがつくったクルマだった

 もちろん空力性能だけでなく、サスペンションもフロント・リア共にダンパー、スプリング、スタビライザーが強化・最適化され、ロール剛性と応答性を向上。ステアリング操作に対するレスポンスのクイックネスもさらに突き詰めることで、高速コーナーでの安定性を保ちつつ、中・低速コーナーでの切れ味鋭い旋回という、相反する要素を同時に実現していた。

 極めつけは「徹底した軽量化」だ。Type Sが登場するタイミングで、S2000はバネ下重量の軽量化のため、アルミホイールのデザインを変更しているが、Type Sではそこからさらに、スペアタイヤとジャッキを廃し、応急パンク修理キットを搭載することでも軽量化を図った。リアスポイラーも中空化することで重量増を最低限にとどめている。

 正直、多くの人が公道でしか乗らないカタログモデルでここまで必要なのかと思えるほどのこだわりぶりだが、そんなものはどうでもいいのだろう。クルマが好きでたまらない人たちが、やりたいことをすべて実現させたような、「やりたいからやる」というホンダの姿勢を存分に味わうことができたクルマだった。

◆     ◆     ◆

 中古車市場では、程度の良い個体なら500万円以上と、新車販売価格よりも高い価格で取引されている。電動化うんぬんもそうだが、何事にも効率が求められる現代では、このように無駄にも思えるほどのこだわりが詰め込まれたクルマがこの先登場する可能性は低いと思われ、そう考えるとこの中古車相場も高くはないかもしれない。

こんな記事も読まれています

商用車から登場した名車!! ミニカは三菱のクルマを世に知らしめた名作だった!
商用車から登場した名車!! ミニカは三菱のクルマを世に知らしめた名作だった!
ベストカーWeb
アルトの元祖は商用車?! 軽にインタークーラー付ターボ・チャージャーはイカツイて! 茨の道をパワーで突き抜けた「漢」初代アルトワークス
アルトの元祖は商用車?! 軽にインタークーラー付ターボ・チャージャーはイカツイて! 茨の道をパワーで突き抜けた「漢」初代アルトワークス
ベストカーWeb
フェラーリ ランボルギーニ マクラーレン ポルシェ……MAX900ps・385km/h超!!? スーパーカー超絵巻
フェラーリ ランボルギーニ マクラーレン ポルシェ……MAX900ps・385km/h超!!? スーパーカー超絵巻
ベストカーWeb
邪道とされた4シーターモデルが人気爆発!! ロータスに異端児「エラン+2」って知っている?
邪道とされた4シーターモデルが人気爆発!! ロータスに異端児「エラン+2」って知っている?
ベストカーWeb
5代目シビックのVTiグレードはテンロクのSiRを上回るコスパ? シュンシュン回る1.5LVTECで爽快な走りは白眉だった!!!
5代目シビックのVTiグレードはテンロクのSiRを上回るコスパ? シュンシュン回る1.5LVTECで爽快な走りは白眉だった!!!
ベストカーWeb
アウトドアテイスト満点な新設[HuNT]がイカす!!! ホンダの中核コンパクトSUV[ヴェゼル]が満を持してマイチェン!
アウトドアテイスト満点な新設[HuNT]がイカす!!! ホンダの中核コンパクトSUV[ヴェゼル]が満を持してマイチェン!
ベストカーWeb
お尻良ければすべてヨシ!!? スイフト GT-R アヴェンタドール…… 魅惑のバックシャン世界選手権
お尻良ければすべてヨシ!!? スイフト GT-R アヴェンタドール…… 魅惑のバックシャン世界選手権
ベストカーWeb
スズキソリオの「とりあえずこれ買っておけば間違いない」感じがすごい
スズキソリオの「とりあえずこれ買っておけば間違いない」感じがすごい
ベストカーWeb
見かけによらず超じゃじゃ馬!! 唯一無二の3ローター搭載市販車 ユーノスコスモの衝撃が忘れられん!!
見かけによらず超じゃじゃ馬!! 唯一無二の3ローター搭載市販車 ユーノスコスモの衝撃が忘れられん!!
ベストカーWeb
デカすぎ……レクサスLMは48インチのディスプレイ採用!! もう「高級車=セダン」は時代遅れ? 高額なミニバンやSUVが登場するワケ
デカすぎ……レクサスLMは48インチのディスプレイ採用!! もう「高級車=セダン」は時代遅れ? 高額なミニバンやSUVが登場するワケ
ベストカーWeb
ランクル250にも負けてない……2024年秋の日本導入が待ち遠しいスバル[新型フォレスター]! ワイルドな[ウィルダネス]もぜひ日本に導入して~!
ランクル250にも負けてない……2024年秋の日本導入が待ち遠しいスバル[新型フォレスター]! ワイルドな[ウィルダネス]もぜひ日本に導入して~!
ベストカーWeb
モーガン・プラスシックス 詳細データテスト 操縦性はクラシックとモダンの中庸 侮りがたい動力性能
モーガン・プラスシックス 詳細データテスト 操縦性はクラシックとモダンの中庸 侮りがたい動力性能
AUTOCAR JAPAN
「SLS AMG」の偉大さをメカニズムから検証。速さだけでないメルセデスの安全思想も注ぎ込まれた最高傑作の1台でした
「SLS AMG」の偉大さをメカニズムから検証。速さだけでないメルセデスの安全思想も注ぎ込まれた最高傑作の1台でした
Auto Messe Web
新型スイフトは質感が爆増!! ヤリスは驚異の燃費36km/Lを記録! ベーシックコンパクト最新勢力図
新型スイフトは質感が爆増!! ヤリスは驚異の燃費36km/Lを記録! ベーシックコンパクト最新勢力図
ベストカーWeb
ボルボっていうよりも……なぜかホンダ感漂うハッチバック「ボルボ480」ってナニモノ?
ボルボっていうよりも……なぜかホンダ感漂うハッチバック「ボルボ480」ってナニモノ?
WEB CARTOP
V型4気筒エンジン搭載!! ホンダ「VF750F」に注ぎ込まれた先鋭のメカニズムとは?
V型4気筒エンジン搭載!! ホンダ「VF750F」に注ぎ込まれた先鋭のメカニズムとは?
バイクのニュース
イタリアーンないすゞ車?! 当時の国産車の倍もしたのにヒットしたクルマ いすゞ117クーペがオシャレすぎた!
イタリアーンないすゞ車?! 当時の国産車の倍もしたのにヒットしたクルマ いすゞ117クーペがオシャレすぎた!
ベストカーWeb
超ガチ仕様だし今思えば激安じゃない!? [ランドクルーザー250も70]も超絶魅力的!! でもでも[メガクルーザー]こそ誇るべきモデルじゃないか説
超ガチ仕様だし今思えば激安じゃない!? [ランドクルーザー250も70]も超絶魅力的!! でもでも[メガクルーザー]こそ誇るべきモデルじゃないか説
ベストカーWeb

みんなのコメント

30件
  • エガちゃんねらー
    転んでもタダでは起きないホンダ
    そもそも転ぶような真似はしないトヨタ

    って楠センセが作中で表現したけど
    この時代はホンダイズムがまだ残ってたと思う
    そりゃ今でもタイプRは作ってるけど
    ん?これが?って気がしてならない
  • santaku
    程々の価格帯のFRを作ってくれたらなぁ〜とは思ってたんだが。
    2LNAで尚且つ2シーターに400万出せる人はひと握りだったはず。でも今のスポーツカーの価格みてるともう当時のS2000の値段なんて普通くらいだもんなぁ…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

386.4399.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

158.0935.0万円

中古車を検索
S2000の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

386.4399.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

158.0935.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村