現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 売れなかったが日本の自動車市場にデザイン革命を巻き起こした! スカイラインスポーツの功績とは

ここから本文です

売れなかったが日本の自動車市場にデザイン革命を巻き起こした! スカイラインスポーツの功績とは

掲載 更新 5
売れなかったが日本の自動車市場にデザイン革命を巻き起こした! スカイラインスポーツの功績とは

元祖オラ顔「チャイニーズアイ」採用のスカイラインスポーツ

 スカイラインといえば、クルマ好きならば誰もが1度は耳にしたことがある日産を代表するスポーツセダン。サルーンとして十分な基本性能を兼ね備えながら、走ればスポーツカーを凌駕する。そのようなイメージを持っている方が多いのではないだろうか? ただし、それは1963年に登場した2代目のS50系から。

570万円のエンジンが2年待ち! 岡山の「神職人集団」オーエス技研って何もの?

 1964年の第2回日本グランプリでわずか1周ながら、本格レーシングカーであるポルシェ904の前を走った。この出来事が、現在に継承されるスポーツセダンとしてのイメージを定着させた。俗にいう「羊の皮を被った狼」の誕生である。

初代はスポーツセダンではなくアメ車風味の高級セダンとして誕生

 では、ルーツとなる1957年4月登場の初代プリンス・スカイラインはどのようなクルマだったかというと、トヨタ(トヨペット)・クラウンと真っ向勝負する6人乗りの高級セダンであった。テールフィンを持ったリヤビューは当時自動車業界をリードしていたアメリカ車の縮小版といったイメージで、2代目以降のモデルとはまったく異なる。ちなみに同じシャーシを持つ兄弟車がグロリアで、スカイラインの上級車として1.9Lのエンジンを搭載し、3ナンバーの車格が与えられた(1960年までは1.5L以上が3ナンバーとなった)。

 しかし、1960年以降は5ナンバーの規格に変更あり、2L以上が5ナンバーとなったため、グロリアと同じ1.9Lエンジンが搭載されたことでグロリアとの棲み分けが微妙になってしまう。そこでスカイラインは2代目で排気量、ボディサイズともにダウンサイジングされ、高級セダンとしての初代スカイラインはグロリアに吸収される格好になった。

スカイライン初のスポーツモデルはイタリア人のミケロッティがデザイン

 このように2代目以降のスポーツ路線ではないポジションにあった初代だが、スポーツモデルも存在した。それが1962年に登場したプリンス・スカイラインスポーツで、クーペとコンバーチブルの2モデルが用意された。ただし、2代目のようなモータースポーツ直系のハードな志向ではなく、ラグジュアリー路線の高級スポーツであったが、2代目とは異なるカタチで日本自動車史にしっかりと爪痕を残している。

 誕生のきっかけは1955年、当時プリンス自動車の取締役設計部長である中川良一氏が欧米の自動車産業の視察旅行で見た、イタリアのカロッツェリアによるスポーツカーの美しさに感銘を受けたことにある。その後、同社のデザイナーをイタリアに留学させるとともに、イタリアのカロッツェリアにスポーツカーのデザインを発注することを決めた。白羽の矢が立ったのが「ジョバンニ・ミケロッティ」で、同氏にデザインを、現地のコーチビルダーに2台のプロトタイプの製作を依頼。それがスカイラインスポーツ誕生へと繋がっていく。

1960年に日本車として初めて海外でワールドプレミアを実施!

 ベースとなったのはスカイラインではなく、より大きな排気量を搭載したグロリアで、1960年にまず2台分のシャシーをイタリアに送りプロトタイプを製作。そして、同年11月の第42回トリノショーでワールドプレミアを果たしている。この海外でのお披露目は日本車としては初の試みであった。

 デザインは「チャイニーズ・アイ」と呼ばれる斜めにツリ上がったややアクの強い丸目4灯のヘッドライトが特徴。ホイールベースはグロリア/スカイラインと同じだが、前後のホイールベースが延長された伸びやかでクリーンなスタイリングは、ドアの後ろでキックアップすることで躍動感も演出している。そのほか、キャビンに配されたピラーは細身で繊細に見せるなど、当時の日本車にはなかった斬新なデザインは1961年の第8回東京モーターショーでも話題となった。

ボディはすべてハンドメイドながら豪華な装備と高性能で人々を魅了

 発売は1962年で、プロトタイプと同じくクーペとコンバーチブルの2タイプをラインアップしたプリンス・スカイラインスポーツ。ボディの製造はすべてハンドメイドで、職人をイタリアからプリンスの工場に招き、指導を受けながらの作業であった。発表から1年以上遅れての発売となったのは、生産体制を整えるために入念な準備が必要だったからだ。そのため販売価格はクーペが185万円、コンバーチブルが195万円と、プリンスのトップブランドであるグロリアの上級車が110万円台であったことを考えると、いかに高額だったが分かるだろう。

 エンジンはグロリア用の1.9Lを搭載し最高出力94㎰を誇った。これは当時の国産車としては最強で、1.4tに迫る車重ながら4速コラムMTを駆使すれば150km/hを記録するなど、GTカーとしては十分な性能を兼ね備えていた。内装もほとんどが専用品で、シートには本革を採用するなどラグジュアリースポーツに相応しい豪華絢爛なものであった。また、その高いパフォーマンスからモータースポーツに参戦しているが、目立った記録は残せていない。

日本のデザイン史の転機となったエポックメイキングなクルマ

 最終的にはコスト高であったことや、ベースのグロリアが1962年10月にフルモデルチェンジしたこともあり、約60台(クーペは35台、コンバーチブルは25台)を販売しただけで生産終了。北米への輸出も検討されていたらしいが、その望みは叶うことはなかった。

 後継モデルも生産されることもなく、1代限りとなったスカイラインスポーツだが、カロッツェリアの技術を習得できたことはデザイン、ボディメイクに生かされたこともさることながら、デザインという点で国産他メーカーに強く影響を与えている。その証拠にスカイラインスポーツの登場以降、各メーカーがこぞってイタリアのカロッツェリアにデザインを依頼し、学んだことでモノマネではない独自のカーデザインが開花していくきっかけとなった。

 商売的には失敗であったが、マイカーがまだ夢だった時代にパーソナル性の強いデザインを提案したスカイラインスポーツは、日本の自動車史におけるエポックメイキングな1台であったことはまぎれもない事実である。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

カワサキのスーパーネイキッド、『Z900』がフルモデルチェンジ…EICMAで実車初公開へ
カワサキのスーパーネイキッド、『Z900』がフルモデルチェンジ…EICMAで実車初公開へ
レスポンス
478万円! BMW プレミアムな新型「コンパクトカー」誕生! “BMW初”の斬新デザイン採用! 次世代の進化を遂げた「1シリーズ」とは
478万円! BMW プレミアムな新型「コンパクトカー」誕生! “BMW初”の斬新デザイン採用! 次世代の進化を遂げた「1シリーズ」とは
くるまのニュース
『これはシンデレラフィットだわっ!』アルパインからジムニー、キャラバン、WR-Vなど車種専用モデルが多数発表
『これはシンデレラフィットだわっ!』アルパインからジムニー、キャラバン、WR-Vなど車種専用モデルが多数発表
レスポンス
いざデイトナ! IMSAテスト参加の太田格之進、アキュラLMDhのシート獲得に繋げられるか「レーサーとして生きるなら、世界を見たい」
いざデイトナ! IMSAテスト参加の太田格之進、アキュラLMDhのシート獲得に繋げられるか「レーサーとして生きるなら、世界を見たい」
motorsport.com 日本版
MotoGP、豪雨被害のバレンシアでの最終戦開催を最優先か。開催スケジュール変更の可能性も
MotoGP、豪雨被害のバレンシアでの最終戦開催を最優先か。開催スケジュール変更の可能性も
motorsport.com 日本版
トラックの屋根上にある「仮眠スペース」って目から鱗の便利装備! じつは現場のトラック乗りからは不評なワケ
トラックの屋根上にある「仮眠スペース」って目から鱗の便利装備! じつは現場のトラック乗りからは不評なワケ
WEB CARTOP
「使い勝手が良すぎる」「軽貨物始めたい」ホンダの軽商用EV『N-VAN e:』ついに発売、SNSでの反響は
「使い勝手が良すぎる」「軽貨物始めたい」ホンダの軽商用EV『N-VAN e:』ついに発売、SNSでの反響は
レスポンス
2025鈴鹿8耐トライアウトは鈴鹿サンデーの1回のみ。全日本ロード第1戦もてぎやEWCル・マン24時間と同日程に
2025鈴鹿8耐トライアウトは鈴鹿サンデーの1回のみ。全日本ロード第1戦もてぎやEWCル・マン24時間と同日程に
AUTOSPORT web
ノリス、逆転タイトル獲得に向けたジレンマ。物議を醸すフェルスタッペンとのバトルは今後も要注意?
ノリス、逆転タイトル獲得に向けたジレンマ。物議を醸すフェルスタッペンとのバトルは今後も要注意?
motorsport.com 日本版
「2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー」今年のノミネート車31台が発表
「2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー」今年のノミネート車31台が発表
レスポンス
「洗車のしすぎ」で塗装は剥げる? 色が落ちる「放置厳禁な原因」ってなに? 知ってトクする“ボディを守る”為の方法とは?
「洗車のしすぎ」で塗装は剥げる? 色が落ちる「放置厳禁な原因」ってなに? 知ってトクする“ボディを守る”為の方法とは?
くるまのニュース
GMの次世代装甲車両『サバーバン・シールド』が完成、乗用車の技術を軍事応用へ
GMの次世代装甲車両『サバーバン・シールド』が完成、乗用車の技術を軍事応用へ
レスポンス
ハミルトン、マクラーレン・ホンダMP4/5Bでセナ追悼ラン実施へ「話を聞いて飛びついたよ!」ヒール&トゥにも郷愁
ハミルトン、マクラーレン・ホンダMP4/5Bでセナ追悼ラン実施へ「話を聞いて飛びついたよ!」ヒール&トゥにも郷愁
motorsport.com 日本版
トヨタの「走る秘密基地」! レトロ顔の斬新「小型商用バン」なぜ大人気に!? 30年前のトヨタ「デリボーイ」いま欲しくても手に入らない理由とは!
トヨタの「走る秘密基地」! レトロ顔の斬新「小型商用バン」なぜ大人気に!? 30年前のトヨタ「デリボーイ」いま欲しくても手に入らない理由とは!
くるまのニュース
スタッドレスのレンタルに注目! トヨタモビリティパーツが愛知県で36店舗展開
スタッドレスのレンタルに注目! トヨタモビリティパーツが愛知県で36店舗展開
レスポンス
フェルスタッペンから学びたい……角田裕毅、レッドブル昇格の可能性は?「今は目の前のやるべきことに集中するだけ」
フェルスタッペンから学びたい……角田裕毅、レッドブル昇格の可能性は?「今は目の前のやるべきことに集中するだけ」
motorsport.com 日本版
写真で見るニューモデル プジョー「208」
写真で見るニューモデル プジョー「208」
日刊自動車新聞
特別なハーレーダビッドソンが出た! Edition 1とは?
特別なハーレーダビッドソンが出た! Edition 1とは?
GQ JAPAN

みんなのコメント

5件
  • このクルマ、ウルトラQの最終回「あけてくれ!」にご出演なさっています。
  • ハンドメイドだったから左右でライトの角度が違ったと聞いたことがあった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村