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速さとエコランを合わせた頭脳戦「マツ耐」にロータリー車RX-8で勝ちたい!

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速さとエコランを合わせた頭脳戦「マツ耐」にロータリー車RX-8で勝ちたい!

マツダ車だけによる耐久レース「MAZDA FAN ENDURANCE(マツダファンエンデュランス)」、通称「マツ耐」が今、たくさんのエントリーを集めて賑わっている。速さとエコランの両方が必要というが、モーターマガジン編集部のカトーがRX-8で参戦し、その魅力をレポートする。

自動車雑誌の編集者という職に就きながら、最近ではさっぱり“クルマ遊び”をしなくなった。そんなことではダメだなぁ…、と思っていた矢先、とある人から「耐久レースに出てみない?」と誘われた。当然、断る理由などなく、「喜んで!」とふたつ返事で引き受けた。

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今回誘われたのは「MAZDA FAN ENDURANCE」、通称「マツ耐」というマツダ車のみによる耐久レースだ。そのレギュレーションがオモシロイ。大まかにいうと「2時間30分、無給油で走り切る」、ただそれだけ。全国6カ所のサーキットで開催されるが、どこでも2時間30分という時間に変更はない。さらにクルマによって純正の燃料タンクの容量は大きかったり小さかったりするけど、それは関係なし。そもそも燃費の良いクルマほど燃料タンクの容量が小さかったりするから、どのクルマが有利不利というのはあまり気にしなくていいというわけだ。

ここで勘の鋭い人ならお気付きだろうが、このレースは“全開”で走ってしまうと、最後は“ガス欠”してしまい完走することができない。つまり、ある程度の速さを保ちながら、燃費走行、いわゆるエコランを駆使しなければならないわけだ。それはまさに“頭脳戦”で、ピット側を含めたチーム力も問われる。ガス欠するギリギリまで速く走らせ、一番多く周回した車両が勝者となる。

さて、今回僕を誘ってくれた“ある人”というのは、僕が若い頃、レースをやっていたときのメカニックで、現在、下妻市でロータリープロショップ「リアルテック」を経営している濱口さん(愛称ハマちゃん)。実はこのレースに昨年もハマチャンに誘われてRX-8で参加したのだが、最後はトップを走りながらも無念のガス欠症状が出て優勝を逃した。それが悔しくて悔しくて、今年はこのレースで勝つためだけにまったく別のRX-8を作ってきたという。まさに“執念のオトコ”なのだ。

その参戦車両は、2004年式のRX-8(ベースモデルの5速MT)。レースだから、スポーツグレードの「タイプS」の方が良さそうなものだが、実は昨年はこのタイプSベースの限定車マツダスピードバージョンで挑戦してガス欠症状に至っている。ちなみにベースグレードの最高出力は210psで、10・15モード燃費が10.0km/Lなのに対し、タイプSは250ps、9.4km/Lとなる。ピークパワーはないけど、タイプSよりベースモデルの方が燃費が良いことからこの車両を選んだのだ。

ただ、潤沢なレース資金があるわけではなく、車両は元々部品取り車として置いてあったものとのこと。このクルマをしっかりと走れるまでにするには、かなり時間を掛けてメンテナンスしてきたはずだ。まずは感謝しながら、事前のテスト走行に臨む。

そしてタイヤ選びも今年はスムーズにいった。昨年はブリヂストンの「POTENZA RE-71R」をチョイスしたのだが、昨年いっしょに参戦したモータージャーナリストで現役86レーサーの橋本洋平氏に相談してみると、「今年はPOTENZAでもRE-12Dにした方が良さそうですよ」、とアドバイスをいただく。71Rと12D、どちらもスポーツラジアルだが、サーキットでのグリップ力は12Dの方が高いという。あまりグリップしてしまうと燃費が悪くなってしまいそうだが、橋本氏によると「グリップ力を活かしてコーナリングでがんばってスピードを稼ぎ、そのスピードをストレートにつなげた方がタイムと燃費のバランスが良いんですよ」とのこと。なるほど、納得。というわけで、POTENZA RE-12Dのサイズは前後255/40R18(純正は225/55R16)をチョイスする。なお、橋本氏には次の9月23日に行われる富士戦に参加していただく予定だ。

レースに臨む前に、決勝のシミュレーションがどんなものかも報告しておこう。一昨年の筑波戦では113周で優勝しており、実は我々もそのラインはクリアできていたのだが、昨年の優勝車の周回数は116周。今年はさらに伸びる可能性があるということで、優勝周回数のラインを118周に設定した。118周を走り切るには、事前に計算してみると、筑波サーキットを1分14秒前後、燃費は4.0km/Lで周回する必要がありそう。

そこでテスト走行では、1分13秒中盤あたりにターゲットタイムを定めてどのぐらいの燃費になるのかを探りながら走ってみる。すると燃費は3.7km/Lぐらいで、このタイムだとまったくダメダメ。しかし、事前のテスト走行はこれでタイムアップとなっていまい、あとは決勝当日に若干タイムを落として、探りながら走るしかなさそうだ。

 

さて、参戦したのは2019年マツ耐第3戦・筑波。当日、現地の気温は36度と酷暑だったが、このレースはドライバーのことを考慮して「エアコンをつけて走ること」が義務化されているので安心だ。

この筑波戦ではエントリー数が多く「ロードスター」と「ロードスター以外」の2クラスに分けてレースが行われた。ロードスタークラスはNA、NB、NC、NDの4世代が顔を揃えており、30台のフルグリッド参加を集めた。そしてロードスター以外クラスは、我々のRX-8のほか、アクセラ、デミオ、初代RX-7(SA22C)など全14台が参加。ちなみに2クラスに分かれるのは、この筑波と最終戦の岡山の2レースのみ。そのほかの4戦は全車混走でのレースとなる。

まずは予選だが、リアルテックのお客さんで一番速い黒田選手が担当する。黒田選手は筑波サーキットを走り込んでおり、気合い十分。というわけで、1分8秒373を出して、あっさりとポールポジションを獲得する。2位が1分11秒804のマツダスピードアクセラ、3位が1分12秒649の先代デミオだが、車両の性能を考えれば、RX-8がポールポジションを取るのは当然といえば当然だ。ただ、ポールポジションは先頭でペースをコントロールして走れるものの、最後のチェッカーを一番最初に受けなければ意味はない。ドライバーはそのあたりを考慮して決勝に臨む。

そして迎えた決勝。スタートドライバーは黒田選手が担当する。とある回転数を上限に(具体的な回転数は秘密!)、決めていた1分14秒中盤のペースを守って周回するが、予選4番手の先代デミオ(和合クロコオートザム柏デミオ号)と予選2番手の先代デミオ(トラップデミオ号)のペースの方が速く、序盤は3番手で様子を見ながら走行する。ドライバーとピットはケータイをつないでおり、ペース配分や周囲の状況を逐一報告している。ピットからは「とりあえず序盤はトップが見える位置で、淡々と走りましょう」と指示し、言われた通りに黒田選手は周回を重ねていく。しかし、これって、なんとなく童話「ウサギとカメ」の逆バージョンかぁ!? だって速いウサギが遅いカメを追いかけるって(笑)!

その後、トップ2台はドライバー交代を行うためにピットインを行い、その間にトップに返り咲くが、29周目に事件が発生。先代デミオ(K.A.MSPデミオ号)がメインストレートのウオールにクラッシュしてしまい、セーフティカーが導入されたのだ。このタイミングでドライバー交代をするチームがいる中、我がピットでは「ステイアウト(そのままコース上を走り続ける)」を指示する。というのも、筑波サーキットの場合、セーフティカー中にピットに入っても、再度コースインするときにコース入口がレッドシグナルでコース復帰できず、隊列の最後尾につかされることがあるからだ。今回の場合は、その作戦が成功し、セーフティカーが戻ってからもトップのまま走り続けることができた。

そしてレース開始から1時間が経過したところで、第2ドライバーの瀬在選手にバトンタッチする。瀬在選手はモータージャーナリストで、僕とはメディア対抗ロードスター4時間耐久レースで何回もいっしょに走ってきた仲。モータースポーツの経験も豊富で、任せて安心してのドライバーだ。瀬在選手に替わってからは、ちょっとペースを上げるように指示を出す。というのも、黒田選手の時にセーフティカーが5周も入ったおかげで、ガソリンが余り気味になってきたのだ。こうなると燃費が少々悪くても速いクルマが有利になる。というわけで、ペースを平均で0.5秒ぐらい上げたが、まだまだガソリンは持ちそうな雰囲気だ。

そしていよいよ第3ドライバーの僕に順番が回ってくる。トップでバトンを引き継ぐということでちょっと緊張したが、コースインしてからは与えられた条件で淡々と周回をこなしていく。ちなみにこのレースはドライバーは1~4名で参加することができるのだが、全車3回のピットストップ(各1分停車)が義務づけられている。ということで、僕の時にもう1回ドライバー交代なしのピットストップをこなしてコースに戻る。

義務である3回のピットを全車終えて終盤になってくると、ようやく全体の順位が明らかになってくるが、なんと2位以下を周回遅れにしているとピットから連絡を受ける。ハマちゃんからは「余計なコトしなくていいから、とにかく無事に帰ってきて!」と念を押される。というのも僕は一度やらかしてしまった過去があるからだ。

ガソリンはまだ少し余っていたので、本当は最後にファステストラップを狙いに行こうと思ったのだが、それもハマちゃんには先回りされて、「ファステストラップとか狙いに言っちゃダメよ!」とピシャリ。というわけで、なにごともなく116周を走り切りトップでチェッカーを受けることとなった。2位は和合号、3位はトラップ号で、先代デミオの2台が1周遅れで続いた。これで真面目に走ったウサギが勝つってことが証明されたのかな…(笑)。



RX-8ではマツ耐初優勝とのことで、苦労した甲斐があったとハマチャンの喜びもひとしおだ。それにしても耐久レースはドライバーだけでなく、ピットにいる人たちも含めたチーム戦で、勝ったときに喜びを分かち合うというのが本当嬉しかった。また、勝つことばかりがすべてではなく、みんなで知恵を出しあって団結して戦うということ自体、このレースの魅力の一つなのだろう。参戦車両はなにも最新型ではなく、旧型のモデルでも十分戦闘力があることを今回の結果で証明して見せた。

次戦・9/23富士ではロードスターと混走となるため、激戦必至だろう。

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