レクサスのコンパクトセダン「IS」に追加された、5.0リッターV8モデル「IS500 Fスポーツ・パフォーマンス」に小川フミオが試乗した。
V8も大切に
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セダンがやっぱり好き、しかも運転が楽しめるクルマが欲しい……というひとには、コレぐらいしかない。そう確認させてくれるクルマがレクサスのIS500 Fスポーツ・パフォーマンス。2022年8月に導入された、V8NAエンジン搭載の後輪駆動セダンだ。
「クルマを操る楽しさを追求してきた」と、レクサスが謳うIS。2020年には、足まわりを中心に大きなマイナーチェンジを受け、かなり運転が楽しめるクルマになっている。今回のIS500 Fスポーツ・パフォーマンス(以下IS500)は、ISの魅力をフルに堪能できるような仕上がりだ。
ピュア電気自動車の「RZ」も発売準備を着々と進めているレクサスだが、いっぽうで4968ccのV型8気筒をあきらめていないから面白い。クルマ好きには嬉しいんだけれど、いちおうレクサスでは、Fスポーツ・パフォーマンスで基本性能を鍛えてそれを電動車にも活かしていく、というストーリーを作っている。もちろん、それはそれで事実でしょうが。
そういえば先日の取材で、ランボルギーニ本社のステファン・ヴィンケルマンCEOに話を訊いたときのことを思い出した。
近い将来の電動化というけれどV12はどうするんですか? と、訊ねると、「あれは魂みたいなもの、載せられる最後の最後まで大切にします!」と、明快な答えだったのだ。
IS500のいいところは、ひと言でいうと、ハイパフォーマンスセダンである点にある。V8がよくて、低回転域ではトルクをたっぷり出してくれて、粛々という感じで走れる。
いっぽう、回せば、“シャーンッ”と効果音をつけたくなるように上の回転域まで気持ちよくまわり、大きな力をモリモリ出す。加速時の気持ちよさはたいしたものだ。クルマ好きなら幸福な気分に満たされるはず。
いい意味での二面性をそなえていると感じられる。
五感で楽しめるように作られているたんに力があるだけでない。V8のパワーに見合うよう、シャシーには手が入れられている。
ドライブの楽しさと同時に安定性も確保してくれる電子制御システムが充実しているのと、ヤマハ発動機と開発した「パフォーマンスダンパー」が前後にそなわった。
パフォーマンスダンパーは、走行中にたえず変型している車体を制御し、たとえば、コーナリングを安定させつつ、より速く曲がれるようにしたり、不快な振動を抑える役目を果たす。従来のISではフロントのみの採用だったが、IS500ではリアにも搭載された。
はたして、パフォーマンスダンパーの恩恵もあるのだろう。あらゆる速度域で安定して、かつ快適なのだ。354kW(481ps)の髙出力を堪能できるよう、全方位的によく出来ていると感じられる。
操舵感も繊細。電子制御のパワーステアリングは制御が緻密で、路面の状況をドライバーである私に伝えてくれると同時に、操舵時の微妙な動きに反応よく、車体がスムーズに動いていく。ノーズがすっとカーブの内側を向き、後輪が車体を押しだしていく。
外観はブラックのグリル、(5.0リッターV8搭載にあたって)パワーバルジが設けられたボンネット、大型エアロバンパー、ENKEIが開発した19インチの専用ホイールを装備。
リアにはグロスブラックのトランクスポイラーと、やはりグロスブラックで目を惹くバンパー下のガーニッシュ、そしてそこから突き出た4連エグゾーストパイプ……と、適度に勇ましい。
内装ではシートがまずイイ。身体があたるところは、スポーツ走行時でも滑りにくいよう人工スエードが張られ、ステアリング・ホイールも比較的小径のうえグリップが太く、握りの部分には人工スエードが巻かれている。
着座位置はおそらく標準モデルより低いのではないか? と、思う。4ドアセダンなのだけれど、腰を落ち着け、ステアリング・ホイールを握ると、けっこう“やる気”が出てくる。エンジン音も中音の心地よい破裂音のように聞こえて、五感で楽しめるように作られていると感じられるのだ。
搭載されていたマーク・レビンソンによる17スピーカーの「プレミアムサラウンドサウンドシステム」で再生忠実度の高い音楽が楽しめるのも、IS500のキャラクターに合っていると思う。
500台限定の特別仕様車「F SPORT Performance First Edition」(900万円)の予約は埋まってしまったというが、標準仕様(850万円)はカタログモデルとして設定された。たいへん喜ばしいことだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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