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なぜ「旧車を貸し出す」事業は始まった? トヨタ×キントが「憧れ」を提供するに至った理由とは

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なぜ「旧車を貸し出す」事業は始まった? トヨタ×キントが「憧れ」を提供するに至った理由とは

■なぜ旧車サービスが始まったのか?

 KINTOは、クルマのさまざまな楽しみ方や魅力を発信する一環として旧車コミュニティ「Vintage Club by KINTO」を2022年4月6日に立ち上げました。
 
 そのなかで「特選旧車レンタカー」というサービスでは「初代ソアラ」「セリカLB」「27レビン」「70スープラ」のレンタルが可能です。
  
 昨今注目を浴びる「旧車」を気軽に楽しむコンテンツは、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

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 このコンテンツの面白いの部分は、オンライン上でワイガヤをするだけでなく、オフラインつまり実際に体験ができるという点です。

 立ち上げの経緯について、サービス発表時にKINTOは次のように話しています。

「現代の自動車は、とても快適でスタイリッシュですが、ちょっと昔のクルマ、いわゆる旧車は、いじる楽しみとダイレクトに機械に触れる感覚、近年のクルマにはない独特の味を持っています。

 “一人ひとりの『移動』に『感動』を”というビジョンを掲げているKINTOでは、現代のクルマとともに、旧車に気軽に触れる場をつくり、皆さまと一緒に旧車を楽しみたいと考えます」

 こうした背景により、これまで“憧れ”で終わっていた旧車、それも、KINTO×トヨタ自動車×レストア集団・新明工業のトリプルタッグで蘇ったモデルを「見て・触れて・乗る」ことができるのです。

 では、「なぜ、KINTOがこのような活動をおこなうのか?」という部分について、3社の担当者に話を伺っていきます。

―― KINTOは「新車に定額で乗れます」のサブスクのイメージが非常に強いですが、それとは真逆となる旧車サービスを展開したのでしょうか?

 KINTO 布川:KINTOはサブスクに一番力を入れているのは事実ですが、弊社の目的は「移動に感動をもたらしたい」ということで、モビリティ全般で色々なサービスを展開したいと考えており、そのひとつが旧車でした。

 実は以前から「やりたいよね」と思っていたのですが、なかなか実現できず……。

 そんななか、トヨタさんから提案があり、さらに別のビジネスでご一緒していた新明工業さんにも声をかけたとこほ、「このタッグなら何かできそうだよね」というのが経緯になります。

―― 最近トヨタも旧車用パーツの復刻など熱心に活動をしていますが、提案はその流れの一環でしょうか?

 トヨタ担当者:トヨタとしては、これからも魅力あるクルマを作るために、古いクルマから学ぶことがあると考えました。

 例えば、「今のクルマは嫌い」という人がいますが「なぜ嫌いなの?」ということに真剣に向き合えていたかというと、正直できていなかったと思います。

 昔のクルマをヒントに新しいクルマに活かす、そんなコミュニケーションができるプラットフォームがあれば……と考え、KINTOさんにお声がけをしました。

―― 「旧車を使って何か面白いことをしたい」という想いが繋がったわけですね。

 KINTO 布川:打合せをすると、みんな話をしたいのか全然終わらず、その延長戦で飲みに行こうか……みたいな(笑)。

 そんな『誰でも気軽に旧車話ができる緩いコミュニティがあったら』というのが、ヴィンテージクラブの原点になります。

 ただ、喋るだけではつまらないので、「何かサービスはできないか?」と考えたのが旧車レンタカーでした。

―― 旧車に興味を持っていても、新車と違って試すのはハードルが高いです。旧車趣味は敷居が高いですが、その入り口を気軽に体験できるのが旧車レンタカーであると。ただ、レンタカーとして運用するためには、車両は万全の状態にしておく必要がありますよね?

 KINTO 布川:その通りです。車両を車検に適応する状態にするステージはトヨタさん、お客様にシッカリと使ってもらえる状態にするステージは、愛知県豊田市にある新明工業さんにお手伝いいただいています。

―― 新明工業といえば、トヨタ博物館の展示車両のレストアも手掛ける職人集団で、レストア業界でも一目置かれる存在です。

 新明工業 石川:レンタカーとして運用するわけですから、単に綺麗に修復するだけではダメで、普通に乗っている限りは「壊れない」というレベルにする必要があります。

 その辺りはノウハウをたくさん持っていますので心配ありません。

 ただ、今のクルマと同じように……とはいきませんので、KINTOさんに独自の説明書を作ってもらっています。

 KINTO 布川:今のクルマのように「ボタン一つで始動」とはいきませんので、トヨタさんに監修していただきながら説明書を作成しています。

 エンジンの掛け方、メーターの役割、給油口の開け方などなど……。

 古い世代にとっては当たり前ですが、若い人にとっては新鮮ですよね。

 なので、貸出の時は20~30分かけてワイワイガヤガヤ喋りながら、やっと走り出す……と。

 普通のレンタカーではありえない感じですが、それを含めて楽しんでいただいています。

■第1号に「セリカLB」が選ばれたワケは? どんな人が利用している?

 旧車レンタカーの1台目は1975年式の「セリカ・リフトバック2000GT」です。

 そのシルエットは、クーペに対して長く、低く、短いスタイルは、大人のスペシャリティカーといった印象で、当時の若者には憧れの存在だったといいます。

 レンタカーとなるこのモデルは。完全なオリジナル状態ではありません。

 エクステリアは、オーバーフェンダーやフロントスポイラー(当時流はチンスポ)、リアウインドウルーバー、ハヤシ製アルミホイール&ワイドタイヤなど、当時流行ったカスタマイズも施されているほかに、エンジンやトランスミッションは現代流にアップデート済みです。

 では、「なぜセリカ・リフトバック2000GT(1975年)」が最初の1台に選ばれたのでしょうか。 KINTO 布川氏は次のように話しています。

「車種を決めるとき、各々の想いが強くて全く決まりませんでした(笑)。

 そこで旧車のイベントで人気投票をしてみたのですが、面白いくらいバラバラ。憧れのクルマって人それぞれなんですよね。

 そんななか、KINTO社長の小寺信也が『ここで社長の特権を使わせてもらう』ということで、セリカLBになりました。

 完全なノーマルではない理由としては、当時のカスタマイズ事情を感じてもらう……という意味もありますが、随所に小寺の強い想いが反映されています」

 小寺氏の想いにより、最初の旧車レンタカーとなったセリカ・リフトバック2000GT(1975年)ですが、2022年7月現在には「カローラレビン」(1974年)、「ソアラ2800GTリミテッドエディション」(1982年)、「スープラ2.5GT」(1992年)がラインナップされており、2022年8月から10月までの3か月間限定で「初代ソアラ」「TE27レビン」「セリカLB」「70系スープラ」の4台を東京の「GR Garage 東京三鷹」店にてレンタルすることが可能です。

 また、今後の予定として、KINTO 布川氏は「現在準備を進めている最中です。すでに『トヨタスポーツ800(ヨタハチ)』と『スターレット(KP61)』のレストアが完了しており、現在『MR2(AW11)』のレストアが進行中です」と話しており、「KP61スターレット」と「トヨタスポーツ800」は新明工業にて2022年8月22日から貸出開始(予約は8月1日から)となっています。

 このように過去のトヨタ車をレストアしていくにあたって、年式により苦労する部分は変わるのでしょうか。新明工業 石川氏は次のように述べています。

「大変さは変わりませんね。部品供給に関してはトヨタさんの協力もあって比較的出てきますが、強いていえばキャブレターと電子制御では勝手が違うことですかね。

 デジタルの出始めの部品は修理がきかない物もありますが、そこを何とかするのが我々の仕事です」

 またトヨタの担当者は「弊社でできることは、ヘリテージパーツの充実ですが、継続させるためには利益を出していく必要もあります。慈善事業だけではどこかで淘汰されてしまうので……」と語っています。

※ ※ ※

 古いトヨタ車をレストアしてレンタカーとして貸し出すという「特選旧車レンタカー」ですが、実際にどのような人が利用しているのでしょうか。KINTO 布川氏は次のように話しています。

「一番多いのは40代から50代で、かつて所有していた人が借りていくケースが多いですね。

 なかには『昔父が乗っていたので、プレゼントとして』と娘さんが借りにきたこともあります。

 共通しているのはステアリングを握った瞬間に表情が若返ること、そんな姿を見ていると『やって良かったな』と思います。

 逆に30代は『旧車を買いたいので、まず試してみたい』という人が多いですね。

 また、もしレンタカーを気に入って頂き『欲しい!』ということであれば、もちろん、販売することも可能です」

 クルマ好きのなかには「旧車はいいよ!!」という人はたくさんいますが、それをリアルで提供するというのは、あまりなかったサービスです。

 しかもそれが、メーカーが主導となってやるということはそれなりのビジネス的な規模感が求められ、なかなか展開していきません。

 そうした部分を3社が上手く補うことで旧車コミュニティ「Vintage Club by KINTO」の誕生や、レストアで蘇った名車を「特選旧車レンタカー」として利用出来るのです。

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みんなのコメント

10件
  • 新明工業ですが、
    トヨタ博物館の展示車両は、基本的に車両製造当時の状態に戻して展示する動態保存(走らせようとお思えば走ることができる)。博物館を作る時、新明工業が随分と苦労と協力をしたらしい。その結果、レストアできる技術やその範囲が随分と広がったのだろう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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