この記事をまとめると
■平成時代のホンダはぶっ飛んだコンセプトカーを数多く排出した
トヨタのEVコンセプト軍団は「パフォーマンス」じゃなく現実にこれだけ「市販される」のか?
■スタイルや機能はぶっ飛んでいたがコンセプトは時代を先どったものが多かった
■コンセプトを継承して市販化されたモデルもあったが失敗も多かった
いま振り返ってもホンダのコンセプトカーはおもしろい
2023年、東京モーターショーが「ジャパンモビリティショー」に生まれ変わることはご存じでしょうか。自動車メーカーだけでなく、広く次世代モビリティの姿を示すショーになることが期待されていますが、やはりショーの華といえばコンセプトモデルといえます。はたしてジャパンモビリティショーでは、令和という時代にふさわしいコンセプトモデルが登場するのでしょうか。
平成時代の東京モーターショーを振り返れば、とくにホンダのコンセプトモデルが斬新だったことを思い出します。その代表格といえるのが、2001年の第35回 東京モーターショーに出展された「UNIBOX(ユニボックス)」ではないでしょうか。
ほぼスケルトンな樹脂製のモジュールパネルとトラス構造のボディを組み合わせたボディは写真だけではサイズ感がまったくわからないかもしれません。ちなみに、数値でいうと全長3420mm・全幅1740mm・全高1890mm。軽自動車をちょっと長く、超ワイドにしたサイズ感といったところでしょうか。
さらに足もとを見ると、前2輪・後4輪の6輪シャシーとなっているのは超絶ユニーク。後輪が4輪となっているのはキャビンへの張り出しを抑えるための小径化に貢献するアイディアといえますが、小さなタイヤを半分以上カバーで隠しているスタイルも非常にユニークです。
ドア部分に小型電動バイクである「MOBIMOBA (モビモバ)」や「CAIXA(カイシャ)」を収納できるようになっているのは、1980年代にモトコンポとセットで登場した初代シティを思わせる部分。ユニークなだけでなくホンダのDNAも感じさせるコンセプトモデルでした。
2001年のモデルながら、カメラとミリ波レーダーを併用した先進運転支援システムを想定しているのはしっかりと先読みしてコンセプトが練られている証。ジョイスティックによる運転スタイルというのも自動運転時代を見据えたアイディアと感じる部分です。
ジョイスティックにより操作するといえば、2011年の第42回 東京モーターショーに出展された「MICRO COMMUTER CONCEPT」を思い出すというホンダファンも少なくないでしょう。
最高出力16.7kW・総電力量3.3kWhのリチウムイオン電池を積んだコミューター的モビリティのコンセプトは『未来都市型ケータイ・パワースーツ』というもの。
両手でジョイスティックを使って操縦する様は、あたかもロボットを操っているような気分になれそう。古いアニメ好きならば“パイルダーオン”しそうなモビリティといったら共感いただけるでしょうか。
デザイン的にいうと大径・狭幅タイヤを履き、それを広範囲にわたってカバーしているのは歩行者との共存を意識したもの。市街地での使用を考慮した、まさに未来のシティコミューターといえます。
ホンダのモビリティといえば、世界的なインフラとまでなったスーパーカブが原点ともえいますが、やはり街中で使う乗り物については、独自の思想が積み重ねられてきていることが、このコンセプトモデルから感じられるのではないでしょうか。
トレンドを先取りしすぎでいまだ時代が追いついていない
そんなユニークなホンダのコンセプトモデルにおける、ある意味での最高傑作といえるインパクトを持つのが、1999年 第33回 東京モーターショーに出展された「不夜城」かもしれません。
こちらのコンセプトモデル、名前もユニークですが、スタイルも独特すぎるもの。全長3050mmと軽自動車より短いボディですが、全幅は1650mmと小型車並みのサイズ感。しかし、後ろヒンジのドアを開けると、その短いボディの中に4つのシートが備わっていることがわかります。
そのシートは、カウンターチェアのように座面は高くなっているのが特徴。「セミスタンディングシート」と名付けられたことからもわかるように、軽く腰かけて移動するといったイメージとなっています。衝突安全思想からするとNGな座らせ方かもしれませんが、完全自動運転のコミューターと考えれば、合理的なパッケージ。時代を先取りしすぎていたコンセプトモデルといえます。だからこそ、「不夜城」については定期的にリスペクトされる記事が登場しているのでしょう。
ここまで紹介してきたコンセプトモデルに比べればいくぶん大人しいスタイルですが、ミニバンの新提案として注目を集めたのが「SKYDECK(スカイデッキ)」です。
2009年の第41回 東京モーターショーに出展されたコンセプトモデルで、ハイブリッドカーの可能性を広げる、6シーターの低床ミニバンというのが、そのプロフィール。
フロントがバタフライドア、リヤがスライドドアでBピラーがない大開口というデザインは、ドアを開けたときにキャビンの見栄えを考慮したものでしょうが、そこから覗くことのできたシートレイアウトはとにかくユニークなものでした。
2列目シートは1列目シートの下にスライドするようにして格納でき、3列目シートは床下にダイブダウンして格納することが可能。このあたりホンダが量産車で培ってきた低床設計のノウハウが存分に生かせているという印象です。さらに全面ガラスルーフとしたことで、どの席においても開放感は抜群。ミニバンの新しいスタイルとして期待が高まるものでした。
筆者個人としては、2列目シートのユニークなスライドや3列目でも開放感が感じられるガラスルーフといったアイディアは、のちに市販車「ジェイド」につながったと感じています。具体的には、ジェイドの3列仕様に採用された2列目のV字スライド、3列目用のエクストラウインドウといった要素が、それにあたります。
とはいえ、日本市場においてはジェイドが商業的には成功したとはいえません。大いに話題となったユニークなコンセプトモデルであっても、その要素を量産に展開したときに、ユーザーが受け入れるとは限らないかもしれません。
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