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ステーションワゴンに“未来感”と“コスパ”を求める人へ──ボルボ V60 T6 ツインエンジン AWD試乗記

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ステーションワゴンに“未来感”と“コスパ”を求める人へ──ボルボ V60 T6 ツインエンジン AWD試乗記

「2019年以降に発売する新型車はすべて電動化する」と、北欧の自動車メーカー、ボルボが宣言したのは2017年だ。ただし、すべて電気自動車(EV)にするわけではなくて、全モデルにEV、プラグ・イン・ハイブリッド(PHEV)、もしくはマイルド・ハイブリッドをラインナップする、というのだ。

2018年10月に上陸したボルボのファミリー・エステートの真打にして主力モデル「V60」の新型にしても、2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンを搭載する前輪駆動の「T5」が、エンジンだけのモデルの最後になり、PHEVの「T8」と「T6」の両TWIN ENGINE AWDのデリバリーが2019年3月から始まっている。

ボルボのワゴンはカッコだけじゃない! 走りもイイ!──ボルボV60 T5試乗記<後編:インテリア&走行性能編>

48ボルトのマイルド・ハイブリッド仕様は現在開発中で、2019年から2021年のあいだに5台のEVを投入するという。そのうちの3台はボルボで、2台は高性能EVブランド「ポールスター」となることが明らかにされている。

ちなみに新型V60の販売は日本でも好調で、毎月300台強を登録している。このセグメントの最強は、市場の半分近くを占めているメルセデス・ベンツ「Cクラス」のステーションワゴンだけれど、V60/V60クロスカントリーは市場の4分の1を確保しているというから大健闘だろう。

PHEVのT8 TWIN ENGINE AWDは、新世代ボルボのXC90、XC60、V90、それにV60の最高性能パワートレインとも位置づけられている。PHEVは価格が高くなるから、性能も高くなければならない、と西洋人は考えるわけである。

TWIN ENGINEを名乗る通り、最高出力318psにまで性能を引き上げた2.0リッター直列4気筒エンジンと、87psの電気モーター、ふたつの「エンジン」を併せ持つ。でもって、ガソリン・エンジンは前輪のみを、電気モーターは後輪のみを駆動する。合わせて全輪駆動で、ハイブリッドのAWDではよくある話ながら、プロペラシャフトは存在せず、そのスペースにリチウム・イオン電池が細長く配置される。

T6 TWIN ENGINE AWDはT8の価格の敷居を低くした普及版で、エンジンの最高出力を318ps/6000rpm から253ps/5500rpmに、最大トルクを400Nm/2200~5400rpmから350Nm/1700~5000rpmにデチューンしただけ、というコスパの高さを誇る。

T8のエンジンにはスーパーチャージャーとターボチャージャー、ふたつの過給機が付いているけれど、そのふたつの過給機はそのままで、部品の省略は一切していない。スペックを見る限り、圧縮比もおなじで、単に発生回転数を500rpm ほど落としただけ。高回転域領域は負けるかもしれないけれど、中低速域は同等で、むしろチューンを控えめにした分、余裕が生まれている、ともいえる。

そりゃそうである。318ps出るパワーを253psにとどめているのだ。318psが100%だとしたら、253psは8割に過ぎない。165km/hを記録した大谷翔平投手が鼻歌交じりに130km/h弱のストレートを投げているようなものである。余談ながら、バッティング・センターに行くとわかるけれど、130km/hの速球ってメチャンコ速い。

T8とT6の違いはそれだけで、あとはおなじ。PHEVのシステム、リアのモーターもおなじなら、それを動かすための高価なリチウム・イオン電池の種類も個数も電圧も容量もまったくおなじなのである。

あ、違うものがあとひとつだけある。それは価格だ。

V60 T8 TWIN ENGINE AWDインスクリプションが829万円、同T6が759万円で、T6のPHEVのほうが70万円お求めやすく手に入る。70万円を大金ととらえるか、たいしたことない金ととらえるかは、ひとによるだろうけれど、ここからが本題である。

ボルボ・カー・ジャパンはさる6月11日、戦略的価格モデルとして、T6にスタンダード・グレードのモメンタムを導入したのだ。お値段は、おくさま、いまならアッと驚く659万円である。

V60のT5の場合、革内装の豪華贅沢グレードたるインスクリプション(599万円)と、布内装のシンプル・スタンダード・グレードたるモメンタム(499万円)とでは100万円の価格差がある。その価格差は内装分だけと見ることができる。T6のPHEVについても同様で、T6のモメンタムもインスクリプションに対し100万円お求めやすくなっているわけだけれど、これをお買い得といわずして、なんと申し上げましょう。

また、PHEVのT6 TWIN ENGINE AWDモメンタムの価格は659万円で、ガソリン・エンジン、T5インスクリプション、つまり高いほうの価格は599万円。その差は60万円である。60万円を大金ととらえるか、たいしたことない金ととらえるかは、ひとによるだろうけれど、60万円といえば、わたし的には大金だ。しかるに、この60万円の価格差は実際上、60万円ではないのである。

なんとなれば、T6は「エコカー減税」および「クリーンエネルギー自動車導入促進対策費補助金」の対象車だからだ。ボルボの試算によれば、「エコカー減税」で、自動車取得税100%減の16万4700円、自動車重量税100%減の6万1500円、自動車税75%減の2万5900円、合計25万2100円が優遇される。でもって、「クリーンエネルギー自動車」ということでPHEVには一律20万円の国庫からの補助がある。さらに東京都の場合、PHEV購入者には個人だと30万円、法人だと20万円の助成金が出る。けっこうですなぁ。

あなたがボルボV60 T5インスクリプションの購入をたまさか検討しておられるとしたら、そして一方でグローバル・ウォーミングを憂い、CO2の排出量が少ないとされるPHEVに関心があるとしたら、T5の代わりにT 6にすれば、そのときなおかつ減税、補助金等がついてくるので満面笑みが浮かんでしまう、ということになる。皮算用だけでも楽しいパイプ・ドリームのタネをボルボ・カー・ジャパンは提供してくれている。そう考えると、T6 TWIN ENGINE AWDへの興味はますます津々たるものになる。

それって、ボルボの思うツボともいえるわけだけれど、正解である。一番お求めやすいPHEVを出すことで、PHEVへの関心を一気に高めたい、というのがボルボの思惑なのだ(といっても、実際の販売台数はたいした数ではないらしい)、とわたしは考える。

ただし、今回ここで紹介するのはモメンタムではなくて豪華贅沢本革仕様のインスクリプションである。

じつのところV60のインスクリプション率は7割を超えているという。読者諸兄も、T6のモメンタムをボルボのディーラーに見に行って、やっぱ革内装がいい~と心変わりされるかもしれない。インスクリプションにはフロント下部の両サイドにメッキのパネルがつくので、外からでもわかっちゃう、ということもある。メッキ好きにはたまらんのである。

ここではV60 T6 Twin Engine AWD インスクリプション、車両本体価格759万円に試乗したわけだけれど、果たしてこのPHEVはV60のなかでも、より静かで、より速くて、より快適で、より気持ちのよいV60なのであった。いわゆるドライブ・モードをもっぱら「ハイブリッド」で走行しての第一印象である。

細かいことはさておき、ドライブ・モードにはこのほかEV走行のみの「ピュア」と、つねに電気モーターの助けを借りる「パワー」モード等がある。

T5の直列4気筒ガソリンターボ・エンジンは、254ps/5500rpm、350Nm/1500~4800rpmに対して、T6はカタログ上、最大トルクは互角、最高出力では1ps負けている。車重は電気モーターと電池その他が付加されるため、T5より350kgも重い2050kgに達している。いかにも重い。

でも、安心してください。T6のガソリン・エンジンにはターボだけではなくて、スーパーチャージャーも付いている。カタログ数値には出てこない、みっちりした低中速トルクを発揮しているはずだ。「はずだ」というのは、じつのところ、よくわからないからである。なんとなれば、リアを駆動する電気モーターが助太刀しているからだ。

このモーター、最高出力87psを7000rpm時に、最大トルク240Nmを0~3000rpm 時に生み出す。「ハイブリッド」モードでも、バッテリーがビンビンであれば、発進時は電気モーターのみで走行する。電気モーターの特性として、たいへん静かで、力強い。あるところからガソリン・エンジンが起動するわけだけれど、その連携はきわめてスムーズで、サッカー日本代表の、よかったときの南野と堂安のごとしである。

ちなみに2020年モデルからバッテリーに改良が図られるとのことで、EVモードでの走行距離はおよそ40kmから48kmに延びる。ギアボックスは8速オートマチックながら、Bポジションというのがあって、EVモード時にこれを選ぶとエネルギー回生が強くなり、アクセルオフ時の減速Gが高くなるそうだ。

以上、横浜みなとみらい地区での試乗会でチョイ乗りしただけゆえ、多くは語れないけれど、V60 T6 Twin Engine AWDが興味深い存在であることは疑いない。それがT5インスクリプションとほとんど変わらない価格で手に入る。控えめなイギリス人でも、こう表現するだろう。悪い話ではない。

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