“最後の”スカイラインGT-Rと、最新現行モデルのR35GT-R、さらに初代NSXと現行型(そして“最後の”)NSX。
日本が誇るスーパースポーツモデルの時空を超えた進化の足跡にレースドライバー山野哲也氏がじっくりと乗り比べ。時代を超え脈々と受け継がれる名車の魅力を再確認する!
ほんとにSUVになっちゃうの? 世相とともに振り返るスカイラインの64年
※本稿は2021年7月のものです
文/山野 哲也 写真/ベストカー編集部 撮影/奥隅 圭之
初出:『ベストカー』2021年8月10日号
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■山野哲也がR34&R35GT-R、初代&現行型NSXを駆る!
R34スカイラインGT-Rも初代NSXも懐かしい! 今回の個体は、ともに1999年式なので、22年も前のクルマ。
それなりに古さは感じさせるものの、しっかりとメンテナンスされていて、コンディションは悪くない。
この初代NSXはNA2型と呼ばれるモデルで、3.2Lエンジンになった中期型のタイプS。ホンダアクセスの足回りとリアスポイラーなどのエアロパーツが装着されている。
レーシングドライバー山野哲也氏。R34GT-R&R35GT-R、NSXの初代&現行型に乗って走って、それぞれの魅力をお伝えします!
ボクは全日本ジムカーナ選手権にNA2型で参戦して、その年全戦優勝をしたという、思い出深いクルマ。
2004年の全日本GT選手権ではやはりNA2型NSXでシリーズチャンピオンを獲っている。とても慣れ親しんだクルマだ。
NSXのデビューは1990年、R34GT-Rは1999年のデビューだが、エンジンやパワートレーンはもちろんのこと、シャシーの基本は1989年に登場したR32型から大きな変更は受けていない。
つまり、両車ともに設計は昭和時代ということだ。
よくぞ昭和のあの時代にこれだけのクルマを企画し、設計し、開発をしたものだと今、振り返れば驚きだ。
4台並んでの走行は本当に壮観! 眼福なり
■R34GT-R vs. R35GT-R
R34GT-Rはパッケージングやエンジン形式などは大きく変更されているものの、R32GT-Rからの「公道を走るレーシングマシン」という基本コンセプトを色濃く受け継いだ正常進化版だ。
久しぶりにR34スカイラインGT-Rをドライブしたが、ガッチリとした頑強なボディ剛性は今の基準で見ても充分だし、足回りもしっかりしていて、操舵に対しスパッと切れ味鋭くノーズが反応し、車体の重さを感じさせない。
長く重たい直6エンジンを積むため、フロントの重さを感じるのはR32以来のウィークポイントで、コーナリング中にギャップを超えるとバウンドしてフロントが煽られるように上下動を大きくし、安定性を乱す場面があった。
それでもサーキットなどフラットな路面では操縦性のよさを実感できる。
“GT-R”という意味では一世代の間柄の2モデル。R35GT-Rもデビューからすでに14年が経過しているものの、毎年の改良により古さを感じさせないのはみごと。さすがにR34は古さを感じさせる
ターンインでのノーズの入りのよさがあり、アクセルを踏み込んでコーナーを脱出する場面ではリアの超理想的な前後バランスでイン側にへばりつきながら操舵角ゼロで立ち上がっていく。
アテーサE-TSのGT-Rだけではなく、FRのGT系でもそれを感じるので、サスジオメトリーやボディ剛性など素性がいいのだろう。
ライトウェイトスポーツのような、ヒラリヒラリという感じとは対極だが、人馬一体のドライブフィールを味わえる。
直6ターボは中速以上ではグググとトルクが盛り上がって吹け上りのフィールも気持ちいいが、3000rpm以下ではターボラグがやや大きく、レスポンスに欠ける。
もっともこのRB26DETTは性能に余裕があって、もっとパワー出せるものをあえて抑え込んでいる。
R35GT-Rは「スカイライン」の名を冠しないが、連綿と受け継がれる丸形テールランプはスカイラインの血統を印象付けるものだ
R35GT-RはそれまでのスカイラインGT-Rが積み上げてきた走りの魅力を新しい技術でいっきにレベルアップさせたクルマだ。
V6エンジンはフロントミドに搭載していて、R34以前で感じたフロントの重さに起因するバタつきはまったく感じない。
20013年のビッグチェンジでGT-Rはサスペンションをソフトにしてラグジュアリー路線に転換したが、あれは残念だった。
しかし、その後現在の最新モデルに向けて、再びハードな走りのGT-Rを目指して再度進化してくれた。
今回試乗したR35GT-Rは紛れもない、骨太な本格派のロードゴーイングレーシングマシンだ。
R34GT-Rを10点とした場合、R35GT-Rは10点という結果に
■初代NSX vs. 現行型NSX
正常進化を感じたGT-Rに対し、NSXは名前とミドシップレイアウトは受け継いだものの、まったくのベツモノに生まれ変わっている。
初代NSXは軽く、しなやかでエンジンはNAで高回転まで気持ちよく回るが、今改めて乗ってみると、あの当時感じたほどのパワフルさはない。
運転席に座るとボンネットが低く、まるで戦闘機のキャノピーのように視界が広がる。
軽快で人馬一体感を味わえる初代NSXに対し、現在のNSXはフロントを駆動する2基のモーターのトルクベクタリングなどで豪快に曲げていく印象
視界のよさはドライビングに大きなメリット。路面がよく見えるので一般道はもちろん、サーキットやジムカーナでも走らせやすいのだ。
改めて現在のNSXと並べると、初代NSXは華奢。タイヤも小さいしブレーキも小さい。
しかし、当時の開発陣はベストなタイヤサイズを選択しており、NSXは太いタイヤを履くとむしろ遅くなってしまった。1320kgの車重には、ブレーキもこのサイズで問題ないのだ。
対する現行型NSXはフロントが245、リアが305という大きなタイヤを履いてブレーキも巨大。見るからにマッスルで迫力ある外観だ。
初代NSXはしなやかな足で路面をしっかりとつかんで姿勢を乱さない。
初代NSXのハンドリングはしなやかにして正確! 高速コーナーでの高いスタビリティは、今の基準で見てもハイレベルだと評価する
ステアセンター付近のアソビが大きく感じるのだが、これは新車時もそうだった。
ヘアピンコーナーではフロントを軸にクルリと向きを変えるのだが、鈴鹿の130Rのような高速コーナーではリアがグッと踏ん張って高いスタビリティを発揮するので、安心して飛び込んでいける。
この絶妙なハンドリングをよくぞ作り上げたものだ。サスジオメトリーのよさだろう。
この軽快にしてしなやかな初代と対照的に、現行型NSXはV6+ツインターボ+3モーターの“全部乗せ”エンジンにSH-AWDなどの制御技術を駆使し、力業でグイグイ曲げていく。
ハンドルを切ってアクセルを踏み込むとLSDを入れたFFのようにフロントが切れ込んでいく。ここは他のクルマにはないエキサイティングなところ。
ただミドシップとしてはフロントが重いこともあり、コーナリング中のギャップで車体の上下動は大きくなる。これは初代NSXではまったく感じなかった挙動だ。
エンジンとモーターで叩き出されるパワーは強烈だが、R35GT-Rのようなエンジン単体が醸し出す強烈パワーとは異なり、モーターでアシストされる感覚はちょっと異次元で、未来的。
だが「人馬一体」感という点では、初代NSXが今でも勝っていると思う。
新旧NSXを並べると、そのボリューム感の違いに驚かされる。現行型NSXは強烈な走りを見せつけるが、まだまだ進化の途中と表現していい。廃止が本当に悔やまれる
初代NSXを10点とした場合、R35GT-Rは9.5点という結果に
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みんなのコメント
かわいそうに…
さすがベストカー。
外歩いてる時にこんな集団通っていったらどんな顔して目で追ってしまうか想像つかない(笑)
GT-RとNSXは日本が世界に誇るスーパースポーツブランドのツートップやと思います。
NSXは生産終了してしまうけど、またいつか帰ってきて欲しいですね。