2021年11月13日、トヨタ、スバル、マツダ、ヤマハ、川崎重工の5社が、内燃機関を活用したカーボンニュートラル(脱炭素)の取り組みについて発表。その席上で、ヤマハの5リッターV型8気筒の水素エンジンが披露され、大きな注目を集めました。
レクサスLC500/LC-Fに搭載される5リッターV8ガソリンエンジンを、水素エンジンに改良したこのエンジンは、最高出力455.5ps、最大トルクは55.1kgmを誇ります。クルマ好きとしては胸アツなV8水素エンジンですが、まだ課題が多いのも事実。V8水素エンジン登場の意義と将来性について、考察します。
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文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、YAMAHA、MAZDA、ほか
[gallink]
内燃機関でありながらカーボンニュートラルを実現できる水素エンジン
まずはじめに、水素エンジンの利点について、確認しておきましょう。
・水素エンジンは、基本的にCO2を発生しないカーボンニュートラルエンジン
→従来のエンジンの技術が活用できるため、将来的にも自動車に関わる雇用を維持できる
・燃料電池車FCVよりも安価に製造可能
→FCVと水素インフラを共有化できるので、水素自体のコストを抑制できる可能性もある
・カーボンニュートラルの実現を目指すには、バッテリーEVだけでなくエンジンの活用も必須
→LCA(ライフサイクルアセスメント)の視点からは、バッテリーEVだけではカーボンニュートラルの実現は不十分であり、水素や合成燃料、バイオ燃料などを利用したエンジンの投入が必要
ヤマハ発動機の日高祥博社長は、「2050年にカーボンニュートラルを目指す。しかしその一方で、社名に「発動機」とあるように、内燃機関への思いとこだわりを人一倍強くもった会社でもあります。水素エンジンはその両方を同時に叶える可能性を秘めた技術だ」としています。
また、トヨタの豊田章男社長はかねてより、近年のバッテリーEV一辺倒の動きに、警鐘を鳴らしていました。今回の水素エンジンに関わる発表も、「すべての自動車が電動車になればOK」という簡単な話でないことを、自ら実践する覚悟の表れとみることができます。
ヤマハが世界で初めて公開した5リッターV8水素エンジン。レクサスLC500、LC-Fのエンジンをベースに、シリンダーヘッドやインジェクター、排気マニホールドなど水素エンジン用に変更
水素エンジンは、ポテンシャルは高いが、まだまだ課題も多い
水素エンジンの歴史は古く、日本では、武蔵工大(現、東京都市大)の教授らが1970年代に研究を進め、試作車を製作。2000年頃には、欧州でBMW、日本ではマツダが水素エンジンの開発に注力し、水素エンジン車を発表しました。しかし、BMWは2009年に開発を中止、マツダも水素ロータリーエンジンの開発を凍結しています。
その理由は、水素エンジンには、多くの課題があること。なかでも、実用化の障壁となっている課題が、次の3つです。
・燃焼速度が、ガソリンの約7.6倍と圧倒的に速く、プレイグ(熱面着火)や異常燃焼の発生リスクが大
・単位容積あたりの発熱量がガソリンの約1/3.7なので、満タン時の航続距離がガソリン車より圧倒的に不利
・水素インフラの整備が不十分
2021年11月に「スーパー耐久シリーズ」に参戦したカローラスポーツの改造水素エンジン車は、プレイグを回避するために出力を抑えています。さらに、頻繁に水素充填を繰り返したことから、レース結果は優勝車の約半分の距離しか走行できず、半分以上をピット作業に費やしました。
参戦の目的は、勝つことではなく、あくまでポテンシャルを見極めることですが、水素エンジンの実用化には、まだ時間が必要であることを示唆しています。
2004年に一般公開されたマツダのRX-8ハイドロジェン。水素だけでは航続距離が短いので、ガソリンでも走行できるようにデュアルフューエルシステムを採用
バッテリーEVはLCA-CO2が多く、カーボンニュートラルを実現できない
カーボンニュートラルを実現するために、今後バッテリーEVが中心となることは確かですが、すべてのクルマがバッテリーEVになればいいという、簡単な話でもありません。バッテリーEVは走行中の排出CO2は確かにゼロですが、LCAで考えると、多くのCO2を発生させています。
また、EVのLCA-CO2排出量は、発電の際に何を燃料とするかに、大きく左右されるという問題もあります。たとえば、燃焼時のCO2排出量が多い石炭や石油を燃焼させる火力発電では増え、原発や再生エネルギーを使えば低減します。
日本の電力構成は、LNGガス、石油、石炭による火力発電が約77%、原発・再エネが23%です。ちなみに原発推進国のフランスは、火力発電が11%、原発・再エネが89%であり、同じバッテリーEVを作っても、バッテリーEV投入によるCO2低減効果は、フランスが大きく、日本は小さいことになります。
CO2排出量の多い石炭火力に頼っている中国は、バッテリーEV投入が必ずしも有効と言えませんが、その中国がバッテリーEV先進国であることは、チョットした矛盾ですね。
鈴鹿S耐で走行中のカローラスポーツの改造水素エンジン車。エンジンは、GRヤリスの1.6リッターエンジンを水素用に改良
実用化には、技術的課題の克服とインフラ整備が必須
水素エンジンの当面の技術的課題は、プレイグの回避ですが、現状では有効な手立てがないため、出力を下げて対応するしかありません。燃焼が速いため燃焼温度が上がるのは必然なので、従来のガソリンのような燃焼でなく、燃焼速度を緩慢にする水素エンジンのため新しい燃焼方式の開発が急務です。
水素インフラについては、日本政府が今のところ積極的でないのが実情。2030年に1,000箇所の水素ステーションを設立する、という目標は、バッテリーEV用の急速充電器の3万台に比べて、心もとないのは否定できません。今後のインフラ整備は、今回旗揚げしたトヨタらの活動が、どれだけ政府をやる気にさせるかにかかっているといっても過言ではありません。
バッテリーEVを30車種投入!! 「選択肢を広げる」トヨタ
今回の発表で重要なのは、この水素エンジンがどのような技術を使い、どれだけの性能を発揮するかということではなく、水素エンジンに本格的に取り組むことを公に宣言したことであり、ヤマハの水素エンジンは、いわばその本気度を表す狼煙だということです。
トヨタは以前から、バッテリーEVに消極的なのでは、と思われてきましたが、その話を打ち消すように、トヨタは2021年12月14日、新たな電動化戦略を発表。2030年までにグローバルで30車種のバッテリーEVの発売、同年には350万台のバッテリーEVを販売するという非常にチャレンジングな目標です。
これらの動きを見る限り、トヨタはバッテリーEVを筆頭にFCV、水素エンジン車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車、バイオ燃料車など、全方位でカーボンニュートラルに取り組む覚悟であることがよくわかりますね。
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