この記事をまとめると
■マイルドハイブリッドの電圧は基本的には高電圧=大出力と計算できる
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■12Vはコスト重視の軽自動車などに向いているシステムだ
■48Vではクルマのスペックを高められるので付加価値につながる
マイルドハイブリッドの電圧による違いとは
ハイブリッドについて、「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に区別することがある。前者はパワフルなモーターを積んでいてEV走行できるシステムで、後者はモーターがエンジンをアシストするシステムといったような基準で区別することが一般的。
また、エンジンとベルトでつながり発電を行うパーツを、ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)と呼ばれるタイプへアップグレードして、それによって減速エネルギーで充電したり、加速時にはエンジンをアシストしたりするタイプをマイルドハイブリッドと分類することもあるが、ISGがマイルドハイブリッドの絶対条件というわけでもない。
たとえば、マツダがCX-60などに採用している「M Hybrid Boost」は、トランスミッション内に薄型モーターを配し、それをクラッチで挟むといった凝ったシステムだが、同社はこれをマイルドハイブリッドだと分類している。
エンジンとトランスミッション間にモーターを配置するシステムで、ストロングハイブリッドと呼ばれるタイプも存在しているため、マイルドとストロングの区別は構造に由来しているわけではない。その区別は、ハイブリッドシステムが使う電圧(V=ボルト)によることが多い。
電圧(V)×電流(A)=電力(W)という関係にあるのは、ご存じのとおり。つまり高電圧となれば、それだけ高出力のハイブリッドシステムが成立する。そして、自動車の安全設計などの基準でいうと、60V以上が高電圧に分類される。そうなるとストロングハイブリッド車でおなじみのオレンジ色の配線など高電圧に対応するための要素がコストアップ要因になる。
そうしたコストアップを避けることができる電圧の上限が、48V以下のハイブリッドシステムとなっている。そこで、48V以下のシステムをマイルドハイブリッドと区分することが多い。ただし、こうした分類については世界共通の絶対的なルールが存在しているわけではなく、メーカーや市場によって微妙な判断の違いもあったりする点はご注意いただきたい。
12Vはコストに厳しい軽自動車にピッタリ
それはさておき、マイルドハイブリッドの電圧は48V1本というわけではない。前述したように、マツダのM Hybrid Boostは48Vだが、同社のMAZDA3などに搭載されるM Hybridは24Vとなっている。また、スズキや日産・三菱の軽自動車にはマイルドハイブリッドとなっているモデルが多いが、それらは12Vの低電圧タイプとなっている。
はたして、マイルドハイブリッドにおける電圧の違いはどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。
前述した電圧(V)×電流(A)=電力(W)という計算からもわかるように、電圧が高いほどモーター出力(W)を稼ぎやすいのは明らか。つまり、マイルドハイブリッドのなかでもモーターアシスト量を稼ぎたい重量車では48Vを採用することがメリットになる。
逆に12Vマイルドハイブリッドは高出力化には向かないが、コスト面でのメリットが大きい。いうまでもなく、ほとんどの乗用車において電装系は12Vで設計された汎用的な部品を使っている。ナビやオーディオだけでなく、パワーウインドウ、ワイパー、メーターなどなど、電装品の多くは12Vで動く設計だ。
冒頭で記したようにISGを使うマイルドハイブリッドでは、システムの電圧がジェネレーターの発電する電圧となる。つまり、48Vマイルドハイブリッドで12Vの電装系を動かすためには電圧を下げるためのコンバーターが必要になる。しかし、12Vマイルドハイブリッドであれば、そうした「余計な部品」は不要となる。つまり、コストを下げることができるのだ。それは軽自動車のようなカテゴリーにおいてメリットとなるのは明確だ。
逆に、電装系を高電圧で動かすことのメリットもある。たとえば電動ブロワーで吸気を送って過給する電動ターボというアイディアにおいて、48V化はメリットになる。そのほか、モーターを利用したスタビライザーや4輪操舵など高電圧化を利用してクルマのシャシー性能を高めるアイディアも数多くある。高価格帯のマイルドハイブリッドにおいて、48Vを採用することは付加価値につながる判断ともいえるだろう。
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