ロールス・ロイスの「ゴースト」に設定されている「ブラック・バッジ」の魅力を、今尾直樹が考えた。
最高のドライバーズ・カー
最強の最新ゴースト ブラック バッジは、最高のドライバーズ・カーだった。
現行ロールス・ロイスの主力モデル、ゴーストのブラック・バッジが追加されたのは2021年の秋である。同年11月、東京大手町の「将門の首塚」の隣のビルで開かれた発表会の模様は当GQ WEBでも紹介しています。ちなみに。
ブラック・バッジ・シリーズは単なる高性能版ではない。ロールス・ロイスのアルター・エゴ、もうひとつの自我であり、ダーク・サイドのロールス・ロイス、とメーカーみずからが規定する。ひらったくいうと、ロールス・ロイス内の反逆児である。
ゴースト・ブラック・バッジの場合、まずもって6.75リッターV12ターボ・エンジンは最高出力571psから600psに、最大トルクは850Nmから900Nmに引き上げられている。29psと50Nmがプラスされた分、8速オートマチック・トランスミッションとスロットルに独自のプログラムが与えられ、足まわりではボディの動きを抑えて、俊敏方向のチューニングが施されている。
もうちょっと具体的には、より容量の大きなエア・サスペンションを組み合わせ、アンチ・ロール・バーをちょっぴり太くし、ブレーキのペダル・ストロークを減らして早めに作動するようにしている。
これまでトランスミッションの制御が変わるだけだったLOWモードは、エグゾースト系のフラップが開いてバリトンのサウンドが強調され、ブレーキとスロットル、ステアリングのレスポンスがより鋭くなる、統合制御が初採用されている。
後席ではなく、運転席に座ってステアリングを握るオーナー向けに、よりエモーショナルな、いわゆるエモい仕掛けが加えられているのだ。
内外装については受注生産のロールス・ロイスゆえ、お好み次第だけれど、ブラック・バッジの証として、スピリット・オブ・エクスタシーとパンテオン・グリルなどのステンレス・スチール部分がダーク仕上げとなる。これがフツウのロールスとはひと目で違っていて、まことにカッコいい。
21インチのホイールも外見上の見どころのひとつで、バレル(樽)部分はカーボン・ファイバー製になる。フツウのゴーストは19インチだから2インチ・アップ、タイヤ・サイズは前後ともに255/50なのに対して、黒のゴーストは前255/40、後 285/35の極太扁平を標準とする。
試乗車は、筆者の記憶に間違いがなければ、昨年11月の発表会で展示された車両のうちの1台と同じ内外装で仕立てられている。外観の赤は光の加減によって、派手にも地味にも見える。
ドアを開けると、鮮烈な赤と黒、2トーンのシートがまず目に飛び込んでくる。臆することなく運転席に座り、ドアの閉め方に少々つまずく。大きなドアが外側に大きく開いていると、内側のノブに手が届かない。
しかして、センター・コンソールの電動ウィンドウの下のスイッチで、運転席側のドアの開閉もできちゃうのである。
猛然と、しかし、あくまでエレガントにそして走り始めるや、う~む……と、意外の感にうたれる。ブラック・バッジなのに、メチャクチャ静かで、その静かさときたらまるで電気自動車もかくや。しかも、乗り心地はフワフワで、ぜんぜん硬くない。ブラック・バッジなのに。
出発地点の虎ノ門の高級ホテルをあとにして、一般道をまずはウロウロする。印象的なのは、あいかわらずものすごく静かなことで、聞こえてくるのはエアコンの風の音のみ。その風の音も、そよそよという柔らかい感じで、エンジン音はささやきもしない。もしや29psと50Nmの余裕によって、フツウのゴースト以上の静かさがもたらされているのかも……と思ったりする。
アクセルを軽く踏むと、V12は少々過敏に反応し、ドライバーの想定よりフワッと前に出てしまう。サスペンションは基本的にフワフワで、乗り心地を切り替えるモードはついていない。LOWにしても脚の設定は変わらない。
それゆえ、加速のたびに軽くノーズを持ち上げる。それを避けるには上品かつ丁寧に運転するしかない。といって、ドライバーに努力を強いるわけではない。いつの間にか慣れて違和感がなくなるまで、それほど長い時間を必要としない。
霞ヶ関入路から首都高速に上り、首都高速横羽線をチョコっとだけ走って撮影を終えると、単騎、アクアライン経由で木更津に渡り、内房の高速道路で高速性能を確認する。100km/h走行時のエンジン回転はというと、例によってロールス・ロイスにはタコメーターがついていない。代わりにパワー・リザーブを示すメーターがついていて、それは100%のうち、10%程度しか使っていないことを教えてくれる。
アクセルを深々と踏んでみれば、みるみるうちにとんでもない速度に達する。猛然と、しかし、あくまでエレガントに。そして、それこそ矢のように。しかして、かの那須与一が射た矢だって、21世紀のゴースト・ブラック・バッジほどの正確さと安定性を披露することはないだろう。
ゴースト・ブラック・バッジは全長×全幅×全高=5545×2000×1570mmの巨軀で、ホイールベースは3295mmもある。オリジナル・ミニだったらラクに入ってお釣りがくる長大さである。わが、といっても「私が持っている」という意味ではないですが、レクサスLSより100mmも長い。めちゃくちゃデッカいのである。車重は全輪駆動ということもあって、車検証の数値で2540kgに達する。
ものすごく重たいものが、かくも猛然と、しかしエレガントに加速し、法さえ許せば、高速を安心して、やすやすと維持できるのは、600ps、900Nmというものすごい力を発揮する6.75リッターV12ツイン・ターボと、フロント:ダブル・ウィッシュボーン、リア:マルチ・リンクのサスペンション、全輪駆動と後輪操舵という駆動システムの恩恵であるにちがいない。
ナビゲーション・システムと連動し地図を読み解きながら変速するトランスミッション、カメラで前方の路面を読み取る電子制御のエア・サスペンションが快適性に貢献してもいるだろう。
低速時にはフワフワだったエア・スプリングは速度が増すにつれ、ドライバーに悟られることなく、路面からの衝撃をしなやかに包み込み、余分な動きを完璧に押さえ込んでいる。つまり、フワフワしない。なのに、乗り心地は快適で、フツウのゴーストに較べて2インチも大径のホイール&タイヤがバネ下で暴れるそぶりはまったくない。
路面のつなぎ目や凸凹路面を高速で通過すると、若干のショックはある。でもそれは路面の状況をドライバーに伝えることを目的としたショックであって、ようはドライバーにとって必要な情報としてのショックなのである。
富津中央インターチェンジで折り返し、LOWモードを試してみる。すると、高回転時にしか聞こえてこなかったエンジン回転が心持ち、低回転時から聞こえてくる。音質は高性能エンジンのそれだけれど、音量は耳をつんざくものではない。
8ATのプログラムが変わったことで、加速は明らかに速くなってもいる。それでいて、乗り心地はスムーズかつしなやかなままで、しかし電気自動車とは異なり、エンジンの息吹と変速ショックをかすかに乗員に伝えてくる。
ただ静かなだけではなくて、このクルマは生きている。
ニッポンの未来は明るい!ゴースト・ブラック・バッジは、フツウのゴーストの「走る・曲がる・止まる」性能を、ちょっとずつ引き上げることで生まれた、ロールス・ロイス史上最強にして最高のドライバーズ・カーなのだ。
なお、ブラック・バッジ・シリーズは2016年に「常設型ビスポーク・モデル」としてレイスとゴーストから始まり、翌年ドーン、2019年にはカリナンにも追加されている。日本市場では、ほかの国より人気が高く、ファントムを含む国内の販売数のうち40%をブラック・バッジが占めているという。
受注生産を基本とするロールス・ロイスは日本市場でも堅調で、ゴーストの2022年分は完売。JAIA(日本自動車輸入組合)の統計によると、2022年度上半期は138台で、前年同期比123.2%を記録している。
ロールス・ロイスが描いたブラック・バッジのオーナー像、すなわち「リスクを冒し、古い因習に挑んで成功を収めた反骨の「ディスラプター(破壊者)」たちがかくもわが国に生息しているのだとすれば、ニッポンの未来は明るい!
文・今尾直樹 写真・小塚大樹
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