モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が現在モーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回は第1期ランサーエボリューションの集大成ともいえるランサーエボリューションIIIについて解説しよう。
迫力のエクステリアと完成度の高さで人気モデルに
初代ランサーエボリューション登場以来エボリューションIIまでは、ラリーベース仕様としてグループAのホモロゲーション取得と国内のモータースポーツユーザーを対象としていた面が強かった。しかし、蓋を開けてみるとスポーティなスタイルの4ドアセダンで使い勝手が良く、一般普及仕様のGSRを買って街乗りに使うユーザーもかなりいることがわかった。その傾向を理解した三菱自動車はランサーエボリューションIIIの立ち位置をエボリューションIIまでと少し変えて、競技ユーザーだけでなく一般ユーザーに乗ってもらうことを意識した。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
例えばエボリューションIIIはエクステリアひとつを見ても、確かにグループAホモロゲーションモデルとしての空力性能を考えた面はあるにせよ、過剰なまでのエアロパーツ装備が目立つ。これは一般ユーザー向けの「見た目」を重視した結果であることは否定できない。一般にランサーエボリューションシリーズはエボリューション(I)からエボリューションーションIIIまでを第1期と見るがその第1期ランサーエボリューションの完成形といえるのがエボリューションIIIであり、もっとも人気のあるモデルといえる。
エボリューションIIIのパワーユニットは、従来と同じく4G63型だが,最高出力は270psとなりエボリューションIIからさらに10psのアップとなった。これは圧縮比を8.5が9.0までアップしたことやターボのコンプレッサーホイール形状を最適化することにより達成されている。9.0の圧縮比というのは当時のターボ車としてはかなり高い部類である。通常、ターボ車はノッキングを防ぐために圧縮比を低くして過給圧を上げることによってパワーを稼ぐ傾向になるのだがそうするとターボラグが大きくなって扱いづらいエンジン特性となってしまう。エボリューションIIIはエンジン本体の性能の良さを追求した点でも光るクルマとなった。
もうひとつ特筆するポイントがある一般に使用する場合には関係なかったのだが、グループA用のために二次エア導入システムを装備したことだ。二次エア導入システムとは、吸気をバイパスしてエキゾーストマニホールドの排気タービン前に導くことによりアクセルオフ時の負圧を低減し、タービンの回転低下を抑える機構。これによってターボラグを少なくすることができる。
ただし、このシステムは市販車では作動しないようにしてあった。これに関連してWRCではアンチラグシステムとかミスファイアリングシステムなどとも呼ばれる機構が用いられた。二次エア導入システムは吸気をタービン前に送るだけだが、もっと積極的にタービンを回す機構であり、それを実現するためにあらかじめ準備された機構でもあるわけだ。
駆動系を見てみるとビスカスカップリングをセンターデフに組み込んだフルタイム4WDという点では変更はない。ただ、国内でモータースポーツで使用する場合には、チューナーの駆動系に関するノウハウも蓄積してきて、乗りやすくなったという評判が聞かれるようになった。どのカテゴリーに出場するにしろフロントとリアに多板式LSDは必須だったが、ドライバーの好みに合わせてFR的に乗るのであればリアLSDを強く、FF的に乗るのであればフロントLSDを強めるなどのセッティングが試されるようになっていった。
細部の煮詰めが行われ、王者としての地盤を強固なものにした
サスペンションに関してはフロントが、ストラットリアがマルチリンクを引き継ぐ。ここはエボリューションIIで改善したため大きな変更はないが、リアサスペンションのジョイント部のピロボール形状の変更など細部を煮詰めている。
エクステリアは冒頭でも触れたが、WRCのイメージを強調したエアロパーツが目立巨大なリアウイングやフロントエアインテーク、サイドステップなど地味ながらスポーティという印象で売っていたランサーエボリューションが派手路線に転向したと感じたユーザーも少なくない。WRCでの活躍のイメージもついたため、当初のホモロゲーション用のクルマか商売になるクルマとして三菱自動車的に格上げされた結果でもある。そのために見た目のインパクトに重点が置かれたのも頷けるところだ。
国内のラリーやダートトライアルでは、リアウイングが大きな効果を生むまでのスピード域にはなかなか達しないというのが実情だった。ただフロントエアダムの両サイドにブレーキ冷却用のエアダクトを設けたのは実用面で重要だった。とかくブレーキに負担のかかるランサーエボリューションには有効なパーツだった。
ボディ剛性はエボリューションIIと同等でもちろん一般ユースなら必要十分なものになっている。モータースポーツではサスペンションや駆動系のセッティングが進むと同時にボディの剛性まで考慮に入れたセッティングが行われるようになっていた。
モータースポーツでの活躍を見ていこう。1995年APRC(アジパシフィック・ラリー選手権)に全力を注ぎ込んだ三菱自動車戦は第1戦のインドネシアラリーからランサーエボリューションIIIを投入し、その意気込みを見せた。デビューウインこそ逃したが、第3戦のマレーシアラリーから最終戦タイラリーまで破竹の4連勝を飾り、その強さはどのマシンをも寄せ付けず、マニュファクチャラーズとドライバーズの両タイトル獲得は当然の結果と見えた。
WRCには1995年シーズン途中の第4戦ツール・ド・コルスから参戦を開始。そしてAPRCも兼ねるWRCオーストラリアラリーでデビュー3戦目にして、早くも優勝してみせた。翌1996年には、エボリューションIIIの圧倒的なスピードがさらに証明されることになった。トミ・マキネンのドライブに・9戦中5戦勝を達成したのだ。エボリューションIIIはマキネンを初のWRCドライバーズチャンピオンに押し上げるとともに、三菱自動車に念願だったWRC初タイトルをももたらすこととなった。
ランサーGSRエボリューションIII主要諸元
●全長×全幅×全高:4310×1695×1420mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1260kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:270ps/6250rpm
●最大トルク:31.5kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:10.2km/L
●車両価格(当時):296.8万円
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みんなのコメント
ミニカ弾丸、ミラージュサイボーグR、FTO 、GTO 、ランエボ、面白い車をたくさん造っていたのが懐かしいです。
剛性感とかNVHとかはやっぱりイマイチだけど、走るには軽さが一番だと感じさせてくれる
そして4WDで安定して走れるし、4G63はトルクがあって扱いやすさもバツグン
にしてもエボ1~3どころかエボシリーズ全てを街中で見なくなったなぁ・・・
以前はあれほど遭遇していたのに