かつてはほとんどのターボ車に装備されていた、ボンネットのエアインテーク。ターボ車のエンジン廃熱のための空気の取り込み口として装備されていたものですが、「エアインテークがある=高性能車」であったことから、クルマ好きの間でもてはやされた装備です。
デザインのポイントとしても受け入れられたエアインテークですが、存在自体がかっこよかったリアウイングと同じように、その効果のほどには疑問を抱いている方も多いようです。今回は、エアインテークがかっこいいクルマをご紹介するとともに、エアインテークは本当に役に立っているのかについても、考察してみようと思います。
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文:吉川賢一
写真:SUBARU、NISSAN、HONDA、BMW、TOYOTA、MITSUBISHI、ベストカー編集部
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エアインテークがカッコいいクルマ
●スバル レヴォーグ
レヴォーグは、2020-2021年カーオブザイヤー大賞を受賞した、今もっとも注目されている国産車です。ボンネットのエアインテークといえば「スバル車」というほど、スバルはターボ車のエアインテークにこだわり続けてきたメーカーですが、WRX S4が生産終了となったことで、現在、エアインテークのあるスバル車は、このレヴォーグのみとなってしまいました。
インタークーラーを、ラジエーターのように車両前方に配置すると、重心から遠い位置に重量物を置くことになるので、回頭性に悪影響を及ぼしてしまいます。スバルこだわりの水平対向エンジンは低い位置にあるため、その真上にインタークーラーをレイアウトし、ボンネットのエアインテークから空気を取り込み冷却する、という仕組みをスバルは採用しています。背が低い水平対向エンジンとの相性を考えての装備なのです。
レヴォーグのボディサイズは、全長4755×全幅1795×全高1500mm、ホイールベース2670mm 重量は1580kg、1.8L直4ターボ、177ps/30.6kgmだ
全グレードで177ps/30.6kgmを発揮する新開発の1.8L水平対向4気筒直噴ターボを搭載 エアインテークから入った空気が、エンジン真上のインタークーラーにあたる位置関係となっている
●日産 GT-R R35型
GT-Rのボンネットにある「穴」は、「NACAダクト」といい、アメリカ航空諮問委員会(NACA)で開発されたエアインテークです。R34型スカイラインGT-Rの時代から装備されるようになったNACAダクトは、R35型になると2カ所となっています。
排気量3.8リッターV型6気筒ツインターボから排出される熱は、相当なもの。NACAダクトはこの廃熱処理のため、という役割のほか、実は空力性能にも貢献している装備です。
時速300kmでの超高速巡行を想定して設計されているGT-Rにとって、空力性能は非常に重要。フロントグリルや、NACAダクトからとり入れた空気が、エンジンルーム内をどのように流れ、ボディサイドからどのようにして抜くのかを考え、このNACAダクトは装備されています。
GT-R R35型のボディサイズは、全長4710×全幅1895×全高1370mm、ホイールベース2780mm 重量は1740kg、3.8L V6ツインターボ、570ps/633Nmだ
2007年12月の発売開始時点では、480ps/588NmだったV6ツインターボエンジンも、2020年モデルでは570ps/633Nmにまでパワーアップしている
●ホンダシビックタイプR
ホンダの誇る高性能スポーツFFマシン「シビックタイプR」にも、エアインテークは装備されています。厳つめのフロントフェイスに目がいきがちですが、タイプR専用となるアルミフードにはエアインテークが設けられており、これによってエンジンルーム内にフレッシュな空気を取り入れ、そして空気の流れと共に廃熱をしています。
エアインテークが、かなりキャビン寄りの位置にあるため、エンジン本体に風を当てるというよりも、エンジンとダッシュパネルとの隙間に風を送り、エンジンルーム内の熱気を循環させるような役割だと思われます。大開口のグリルからも空気を取り入れているため、エンジンフード内は、比較的、熱気が逃がしやすくなっているのかもしれません。
高出力・高レスポンスの2.0リッターVTECターボエンジン 低慣性モノスクロール・ターボチャージャーに加え、多段噴射インジェクターによる直噴システム、フレキシブルな過給圧制御が可能な電動ウェイストゲートを採用し、過給レスポンスを高めるとともに、燃費性能も追求した
シビックタイプRのボディサイズは、全長4560×全幅1875×全高1435mm、ホイールベース2700mm。重量は1390kg、2.0リッター直4 VTECターボ、320ps/400Nmだ
●BMW MINI クーパーS
日本でも広く人気のある、MINI(BMW MINI)。このMINIのスポーツよりのモデル「クーパーS」にも、エアインテークがボンネットに装備されています。
小さめのサイズではありますが、フロントグリルから取り込まれてラジエーターを通過した空気とは異なる経路でエンジンルーム内に導かれるので、エンジンルーム内の廃熱をするためのものだと考えられます。フロントグリルのすぐ後ろにあるため、その効果のほどは、何とも言えないところですが、スポーツ心をくすぐるキャッチーなアイテムでもあります。
MINIクーパーS 3DOORモデルのボディサイズは、全長3835×全幅1725×全高1430mm、ホイールベース2495mm。重量は1270kg、2.0L 直4ターボエンジン、192ps/280Nmだ
エアインテークは空気抵抗になる
エアインテークは、かつてはターボエンジンの廃熱をするためには必須と考えられていましたが、現在では、高性能ターボ車であっても、エアインテークを設けないクルマが多くあります。なぜなら、エアインテークはその存在自体が空気抵抗になるためです。
近年は、フロントグリルの開口部を限界まで大きくすることで、インタークーラーやエンジンルーム内にこもる熱の排出を行っています。こうした設計ができるになったのは、エンジンルーム内の空気の流れを、正確にシミュレーションできるようになったからです。
しかしながら、高性能ターボ車のアイコン的な意味合いとして残している車種や、レヴォーグのように水平対向エンジンのレイアウト上の都合などで、エアインテーク前提の設計がなされている場合も多いようです。
ちなみにフロントグリルやエアインテークは、「広いほど良い」というわけではありません。エンジン始動直後はエンジンを素早く温めたいからです。これを両立するアイテムとして、必要な時に開け閉めできる「グリルシャッター」という技術アイテムもありますが、その話はまた別の機会にしたいと思います。
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みんなのコメント
その熱の原因の1つにターボもあるだろうが、ターボだから付いてるってのはなんか違うと思う。