もくじ
ー 5代目フォレスター、どう変わった?
ー 2.5ℓ、2.0ℓHV それぞれの立ち位置は
ー 2.5ℓ、2.0ℓHV 乗った印象の違い
ー 2.5ℓと2.0ℓHV どちらを買うべき?
ー スペック
5代目フォレスター、どう変わった?
厳密に言えばアウトバック(グランドワゴン)が先行するが、これはレガシィの派生モデルでもあり、専用開発のスバルクロスオーバーSUVの始祖にはフォレスターを位置付けるのが適当だろう。
5代目となる新型は初代以来のアウトドアホビーに適したレジャーワゴンというコンセプトを継承深化させたモデルである。アウトドアホビーの現場での走破性や使い勝手だけでなく、目的地までの過程を心地よく過ごせるというオン&ラフロード適性の高次元での両立が、昔も今も変わらぬ同車の大きな特徴である。
ハードウェア面ではSGP(スバル・グローバル・プラットフォームや改良型のパワートレインが見所となる。従来車では2ℓのNA仕様とターボ仕様の2構成だったが、新型ではNA 2.5ℓとシリーズ式ハイブリッドの2ℓの構成となった。
2.5ℓ車が従来の2ℓ車に代わる標準設定であり、排気量アップは実用動力性能の向上と共にフォレスターが上級にシフトしたことを示している。現行スバルXVのポジショニングを考慮すれば当然だろう。
ハイブリッド車は従来ターボ車に代わる設定となるが、高性能より高効率、あるいはエコ・プレミアム志向にシフトした結果であり、後項で述べるがこの辺りは時代の変化を積極的に捉えた結果とも言える。
いずれにせよ、フォレスターの職人気質型の頑固さとSUVが市場の幹へと成長した「今」を感じさせる構成である。
2.5ℓ、2.0ℓHV それぞれの立ち位置は
2.0ℓ、2.5ℓHV それぞれの立ち位置は
どこから見てもフォレスターの新型以外の何物でもない、というのが初見の印象。フォレスターのユーザーが求める要素を過不足も演出もなくまとめている。
パワートレインは型式では同社従来ラインナップと同じだが、直噴の採用などの最新技術を導入し、部品数で約90%にも及ぶ変更が加えられている。ミッションにはスバル独自のチェーン(張力)式CVTを採用し、7速マニュアル変速モードを備える。
インプレッサ/XVから採用されているSGPはフォレスター用の設計変更も加えられているが、ホイールベースは共通である。しかし、最低地上高はXVよりも20mm高い220mmに設定され、スペック面からも悪路踏破性が走行性能の要点となっているのがわかる。
試乗すれば直感的にその狙いが伝わってくる。登降坂が連続するワインディング路での2.5ℓ車の特徴は扱いやすさである。例えば、動力性能では狭い回転レンジで急激な変速(回転変化)を抑えた変速制御により狙った加減速を得られる。
同じように走らせていてもダウンシフト頻度や高回転域使用時間はドライバーにかかる精神的負担に影響する。「足るか足らないか」ではなく、自然体で操れる気楽さは従来の2ℓ車、あるいはインプレッサ/XVに対しても車格上を実感させていくれる。
ハンドリング、悪路の走破性を検証
フットワークは軸周りの不要な揺れの抑え込みとコーナリング時の前後輪の負荷バランスの安定が印象的だ。大負荷でもサスストローク速度を抑えている割りには路面当たり感は穏やか。据わりがよく雑味の少ない良質な乗り心地は見所のひとつだ。
ハンドリングの特性は弱アンダーステア状態を頑固に維持するタイプ。オーバースピードやアクセル踏み過ぎ等では何時でも前輪から逃げていく。
当然修正は適切な速度、アクセル開度にすればよく、それだけで望むラインに戻せる。付け加えるなら操保舵力はけっこう重めの設定で、制動を維持しながらラインを絞り込むような状況のステア操作にも適したものだ。
要するにハイアベでも安心の高速ツアラー型のハンドリング。新しいパワートレインと相まって、平均車速が高まっても距離が伸びても運転ストレスを最小限に抑える走行特性である。
ラフロード性能については最低地上高とともに改良型Xモードが注目点。本格派には及ばないにしても限界踏破性をオフローダー側に拡げている。
ハードな状況になるほどクルマのスペック以上にドラテクも重要になるのだが、Xモードを雪&ダートにセットすればクロカン走行に不慣れなドライバーでも苦労少なく操れる。
片輪泥濘の登坂も試したが、ホイールスピンを起こしたところでアクセルを一定に保っていると、後はXモードが空転輪に断続的にブレーキを掛けてクルマを前に押し出してく。
また、トラコンの解除も含めて、さらに厳しい状況に対応した深雪&泥濘モードを新たに加えて、安心走行領域を拡大。アウトドアホビー用のレジャーワゴン用途には過剰と言えるほどの踏破性を備えている。
2.5ℓ、2.0ℓHV 乗った印象の違い
先代XVに搭載されていた2ℓの1モーター&2クラッチのシリーズ式を踏襲するが、駆動モーター(発電機)を除いて大幅な設計変更が加えられている。直噴や新型EGRの採用などエンジンやミッションも大改良型である。
とはいえ駆動モーターは10kW、ハイブリッド用バッテリーは充放電レートに優れたリチウムイオン電池を採用しているとはいえ容量は約0.6kWhでしかなく、ハイブリッド最前線で燃費や動力性能を競うタイプではない。
興味深いのはハイブリッドの特徴を活かしたドライブフィールの造り込み。低中速域での踏み込み直後のトルク立ち上げの「キレ」に電動を有効活用。純内燃機車とは一味違った即応感が印象的。初期トルクが大きいので無駄踏み込み量も減少し、実燃費向上にも役立つ。
ただし、速度域が高まってくるとNA 2ℓの印象が強くなる。加速時のダウンシフトに回転上昇、使用回転域の高さなど、「回して稼ぐ」感覚は強い。電動アシストも用いるが、明確な意志を持った加速では積極的に中高回転を使用する変速特性でもある。つまり、ファントゥドライブの演出なのだ。
そう思わせるのはフットワークにも一因がある。2.5ℓ車に対しては車重と重量配分が異なるが、サスチューニングも嗜好を違えている。限界付近の安定性重視では共通するものの、ハイブリッド車は操舵初期や追舵の応答を高めている。
2.5ℓ車が「ぐりぐり」とノーズをねじ込んでいく回頭感なら、ハイブリッド車は「スパッ」と向きを変える。初期応答だけなのでドライビングスタイルに影響するほどではないが、相対的に軽めに設定された操舵感もあって、2.5ℓ車よりもかなり軽快。言い方を換えるならインプレッサ的である。
なお、新型車の売り物のひとつ、居眠り脇見警告や顔認識によるシート&ミラーポジションメモリーのドライバーモニタリングシステムはハイブリッド車(アドバンス)のみに設定されている。
2.5ℓと2.0ℓHV どちらを買うべき?
新旧乗り比べると、居住性や積載性の向上代は多少のレベル。ただ、内外装の雰囲気や居心地はグレードアップしているし、ドアの開閉音からして違っている。
空調は前者後席ベンチレーション付きでXブレイクにはスライドレール付きの床面ボードや夜間の作業性を高めるリアゲートランプを装備。雰囲気だけでなく居心地や使い勝手もグレードアップした。
走りの質感も向上して、アイサイトも最新バリエーションのツーリングアシスト仕様。新Xモードも全車標準。文字通りの「全面改良」である。
従って実用的なアウトドアホビー向けSUVとしてのコスパはトップレベルだ。
ただ、2.5ℓ車とハイブリッド車の選び分けは要注意。走りのテイストでは従来からのフォレスター派なら2.5ℓ車、インプレッサ等のスポーティキャラのスバル車からの乗り換えならハイブリッド車がしっくりくるだろう。
パワートレインタイプもグレード展開も価格差が少ないだけに、買い得云々より使用目的や嗜好的な要素を押さえた選択が重要である。
スペック
スバル・フォレスターXブレイク
■価格 292万円
■全長×全幅×全高 4625×1815×1730mm
■最高速度 –
■0-100km/h加速 –
■燃費 13.2km/ℓ(WLTCモード)
■CO2排出量 176g/km(WLTCモード)
■車両重量 1530kg
■パワートレイン 水平対向4気筒2498cc
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 184ps/5800rpm
■最大トルク 24.4kg-m/4400rpm
■ギアボックス CVT
スバル・フォレスター・アドバンス
■価格 310万円
■全長×全幅×全高 4625×1815×1715mm
■最高速度 –
■0-100km/h加速 –
■燃費 14.0km/ℓ(WLTCモード)
■CO2排出量 166g/km(WLTCモード)
■乾燥重量 1640kg
■パワートレイン 水平対向4気筒1995cc+モーター
■使用燃料 ガソリン
■最高出力(エンジン) 145ps/6000rpm
■最大トルク(エンジン) 19.2kg-m/4000rpm
■最高出力(モーター) 13.6ps
■最大トルク(モーター) 6.6kg-m
■ギアボックス CVT
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