■「スズキ」vs「ダイハツ」! 販売台数を左右するほどだった「低燃費性能」の変遷
およそ10年前の2010年代前半、低燃費性能を誇るハイブリッドカーの急速な普及とともに、カタログ燃費の優劣が、販売を左右するほどの影響力を持っていました。
なかでも軽自動車の世界では「スズキ」vs「ダイハツ」の熾烈な低燃費記録の戦いが繰り広げられましたが、それも次第に泥沼化。気付けば競争も終息していました。
軽の燃費競争とは一体何だったのか、ここであらためて振り返ってみます。
ここのところ頻発しているさまざまなものの値上げ。これはクルマにまつわるものも例外ではなく、我々のお財布を直撃しています。
なかでもガソリン代の高騰は、自動車ユーザーには非常につらいものとなっており、再び燃費性能の高いクルマへの注目が集まっていますが、2010年代前半にも熾烈な燃費競争が繰り広げられていた過去がありました。
燃費性能の違いが、当時新車販売促進策の一環としておこなわれた「エコカー減税」や「エコカー補助金」の有無も左右し、販売台数を大きく左右していました。
そんな燃費競争の時代を代表する存在だった軽自動車が、2011年9月に登場したダイハツ「ミラ e:S(以下ミラ イース)」(初代)と、同年12月に発売がスタートしたスズキ「アルト エコ」(7代目「アルト」ベース)です。
当時、超低燃費を記録するためには、トヨタ「プリウス」に代表される「ハイブリッド」という飛び道具として搭載するのが必須条件だった時代でした。
低燃費を実現する一方で、バッテリーやモーターといった高価なシステムを必要とするため、通常のガソリンモデルに比べ車両価格は高価なものとならざるを得ません。
しかし、価格の安さがなによりも重要視されるのが軽自動車です。とくにミラ イースやアルト エコは、軽のなかでももっともベーシックなカテゴリーに属します。
そのため既存技術のブラッシュアップを重ねることで、燃費性能を向上させたのです。
ハイブリッド車とは異なることを表した「第3のエコカー」の名キャッチコピーで登場したミライースは、ガソリン車トップ(当時)の30.0km/Lというカタログ燃費を引っ提げて登場。
低価格かつ低燃費というミラ イースの登場は、衝撃を持って市場に受け入れられました。
(※なお本記事でのカタログ燃費表記はすべて「JC08モード燃費」の数値で統一します)
■ダイハツの低燃費記録「30.0km/L」に素早く対抗したスズキ
そんなミラ イースの登場からわずか3か月後、スズキからは7代目のアルトをベースとした低燃費仕様のアルト エコで対抗策にでます。
こちらはベースのアルトと同型のエンジンとトランスミッションを搭載しながらも、より摩擦抵抗を抑える処理を施したほか、車高を15ミリ下げ、専用形状のフロントバンパーを採用することで空気抵抗までも低減。
ミラ イースが採用した停車前アイドリングストップも、ミラ イースが7km/h以下で作動するところ、アルト エコは9km/h以下で作動するようにするなどし、カタログ燃費はミラ イースをわずかに上回る30.2km/Lを達成していたのです。
さらにアルトエコは2013年2月の改良で「スズキグリーンテクノロジー」と称して、減速エネルギー回生機構の「エネチャージ」や「新アイドリングストップシステム」などの採用によって、燃費性能を33.0km/Lまで向上。
ガソリン車ナンバーワンの燃費性能という地位を確固たるものとする変更を実施しました。
しかしミラ イースも黙ってそれを見ていたわけではありません。
2013年8月のマイナーチェンジで「e:Sテクノロジー」を大幅進化させました。
■コンマ以下の削り合い……次第に「泥沼化」していく低燃費競争の行く末
マイナーチェンジでミラ イースは「クールドi-EGR」を採用し燃焼効率の最適化を図っただけでなく、フリクションロスの低減を徹底追求。
CVTの制御を見直してハイギヤード化を図ることで、アルトエコを上回る33.4km/Lという数値を叩き出したのです。
さらにミラ イースは先進安全装備である「スマートアシスト」を一部グレードに採用したほか、エントリーグレードの価格を5万円下げて74.5万円とする低価格化も併せて実施しし、形勢逆転を狙ったのでした。
一気に燃費性能で逆転されてしまったアルト エコですが、同年12月には一部改良モデルを発表しています。
こちらはフリクションロスの低減やパワートレインの制御最適化のほか、エンジンの圧縮比を高めるなどの改良を行って、燃費はついに35.0km/Lを実現しました。
再びナンバーワンの座を明け渡すことになったミラ イースでしたが、2014年7月の一部改良で、こちらもエンジンの高圧縮比化を行うだけでなく、エンジン自体のアトキンソンサイクル化、デュアルインジェクターの採用など大幅なパワートレインの改良を実施。
カタログ燃費は35.2km/Lと、アルト エコをわずかに超えることを成功させています。
その後、アルトは2014年12月に8代目へとフルモデルチェンジを実施。小型軽量化を突き詰めた設計とし、ついに37.0km/Lを達成するまでに至っています。
ここをピークに、軽の熾烈な燃費競争は一旦終焉を迎えることになりました。
■もはや「低燃費」なのは当然! 購入者が重視するポイントも大きく転換した
2017年にはミラ イースも2代目へとフルモデルチェンジを果たしますが、燃費性能は初代最終型と同じ35.2km/L。
アルトも、2021年にフルモデルチェンジした現行型の9代目モデルでは、マイルドハイブリッドモデルでも33.1km/Lと、なんとアルト エコ時代よりもカタログ燃費は悪化しているほどなのです。
とはいえ30km/L台なら、すでに十分すぎる低燃費といえます。
ユーザーの「イマドキのクルマは燃費性能がよくて当たり前」というイメージが市場に定着してきたこととも相まって、カタログ燃費の数値が、かつてほど気にされなくなってきたといえるかもしれません。
さらに2018年10月から、よりリアルな使用環境に近い「WLTCモード燃費」がカタログ燃費表記の主体となった影響も少なくないでしょう。
一方で、極端な燃費性能を追い求めるがあまり、日常使いでのドライバビリティ(運転操作のしやすさや自然さ)の低下や、乗り心地の悪化といったネガティブな要素が生まれてしまったことも否めません。
購入するユーザーも、カタログ燃費がコンマ単位で優位に立つことよりも、使い勝手の良さや車両に備わる付加価値などに重きを置いたクルマ選びをするようになりました。
燃費の面では不利な大柄ボディを持つ軽スーパーハイトワゴンが、広い室内や使い勝手の良さで支持され、軽でもっとも売れている事実からも明らかです。
こうしたいくつかの要因が重なって、極端な燃費競争も終息することになりました。
とはいえここまでガソリン代が高騰してくると、ふたたび燃費性能が気になってきてしまうというのもまた事実。
今後も商品力や低価格をキープしたまま、燃費性能もアップした欲張りなニューモデルが登場することを期待したいところです。
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