「ティーポ33」をも思わせる優雅なボディ
歴史をさかのぼれば1900年代初頭にその源流を持つ「アルファ ロメオ」。1920年代には、のちにフェラーリを創業するエンツォ・フェラーリもドライバーとして活動していた、スポーツカーメーカーとして知られていた。
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第2次世界大戦後はイタリア国営企業となり、ジュリエッタやジュリア、スパイダーといった名車を生産していたが、1970年代になり、環境問題がクローズアップされはじめてからは、技術的な対応が遅れて販売台数が減少。80年代には日産と提携するなど、経営の立て直しを図ったが好転はせず、1986年にフィアットがアルファ ロメオの全株式を購入し、グループ企業となった。
久しぶりのFRモデル復活
その後アルファ ロメオは、国営時代の最後に開発が始まったモデルである「164」を発売。さらにフィアット傘下となって開発された初めてのモデルである「155」が、DTMやBTCCなどのツーリングカーレースで活躍し、日本でも人気が回復していく。そして1998年に登場したのが、アルファ ロメオ史上で最大の販売台数を記録した「156」だった。
ここに至ってアルファ ロメオは、かつての栄光を取り戻すべく、極秘に新たなプロジェクトをスタートさせた。それは「75」を限りに途絶えていたFRレイアウトのスポーツモデルを開発する、というものだった。その結果生み出されたのが「8C」である。
極秘に、というのは大げさな言い方かもしれないが、実際その当時、8Cというモデルについては、噂話すら聞こえてこなかった。多くの場合、新しいモデルが発表される時期が近づくと、なんらかの噂が伝え漏れてくるものだ。
ところがこの8Cに関しては、まったくの情報なしでいきなり、2003年のフランクフルトモーターショーで、市販前提のコンセプトモデルとして発表された。そこで分かったのは、ベースとなったのは同じフィアット傘下のメーカーである、マセラティ3200GTをベースとしたものであるということと、2シーターのFRであるということだった。
2006年には、エンジンを4.7L V8に変更した市販モデルを発表。450ps/7000rpmというパワーと、49.0kg-m/5000rpmというトルクを持ち、トランスミッションはリヤ車軸に置くトランスアクスル方式で、「Qセレクト」と称する6速セミATを採用。ボディタイプはクーペの「8Cコンペティツィオーネ」と、オープントップの「8Cスパイダー」の2タイプをラインアップしていて、生産台数はそれぞれ500台となっていた。
お披露目前に完売した8C
合計してもわずか1000台しか存在しない「8Cコンペティツィオーネ」と「8Cスパイダー」。当然というべきか、オーダーが殺到して、日本ではお披露目する前に完売している状態だったと聞いている。
その状況は世界的にも同じだったようで、アルファ75以来アルファ ロメオ車が正規輸入されていなかったアメリカでも8Cシリーズは販売され、やはり瞬殺だったと聞く。
ちなみに、8Cコンペティツィオーネのイタリア本国の割り当て台数は、500台中70台。日本にも同じ70台が割り当てられた。ところがアメリカには99台が割り当てられている。しかし8Cスパイダーは、日本にはコンペティツィオーネと同じ70台が割り当てられたが、アメリカは35台のみ。
そんな35台のうちの1台が、2022年8月19日にモントレーで開催されたRMサザビーズオークションに出品された。赤、イタリア語で「ロッソ」のボディカラーは、アルファ ロメオを象徴するもので、2009年式で走行距離は3733マイル(約6000km)。オスカー・デイビス氏が新車で購入し、コレクションしていたというのがこの個体の素性だ。
新車価格は2650万円
新車当時、日本での販売価格は2650万円。アメリカでは29万9000ドルで販売されていたが、このオークションでのエスティメート(落札予想価格)は30万ドル~40万ドル(邦貨換算約4100万円~5500万円)となっていた。新車価格と500台しかないモデルであるということを考えれば、妥当なものといえるだろう。そしてオークション当日の落札価格は、36万8000ドル(邦貨換算約5000万円)だった。
すでにアルファ ロメオは、今後のモデルは電動化するということを表明している。すなわち、おそらくは2度と手に入らないであろうアルファ ロメオの、ICE(内燃機関)のピュアスポーツカー。そういった希少性を考えれば、40万ドルを超えるのではと予想していたが、その予想は外れてしまった。
クルマをリセールバリューを念頭に語るのは正直なところ好きではないのだが、8Cは所有して損のない1台だと言えるだろう。
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