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実用的なピープルズ・カー上陸──新型フォルクスワーゲンID.4試乗記

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実用的なピープルズ・カー上陸──新型フォルクスワーゲンID.4試乗記

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アントニオ猪木さんは10月1日に旅立たれましたけれど、猪木さんのフレーズは生きている。電気ですかぁ。電気があれば、なんでもできる。いくぞ~。1、2、3、ダーッ!!

というわけで、フォルクスワーゲンのEV(電気自動車)の世界戦略車、ID.4が11月22日に発表された。それに先駆け、横浜で試乗会が開かれ、ID.4の日本仕様でみなとみらい地区をドライブしたので報告します。

ID.4はフォルクスワーゲンが2020年に本国で初公開したEVのコンパクトSUVである。全長×全幅×全高=4585×1850×1640mmの3サイズは、フォルクスワーゲン(VW)でいうと、ティグアンよりも65mm長くて10mm幅広く35mm低い。ボディを真横から見ると流麗で、「風によって形作られたようなデザイン」とVW自身も表現しているように、空力を大いに意識している。実際、CD値はSUVとしては低い0.28を達成しているという。

ホイールベースはティグアンより95mm長い、2770mmもある。つまり、その分、居住スペースがたっぷり取られている。天井が少々低いということはあるけれど、床下に後輪を駆動するプロペラシャフトがいらないので、後席のフロアはフラットで広々している。

リチウムイオンバッテリーとバッテリーの制御システムは、そのフラットなフロアの前後アクスル間の下に置かれた堅牢なアルミニウム製のハウジングのなかにおさめられている。前後のオーバーハングがティグアンよりも短いのはモーターがスポーツバッグに入るほどコンパクトだからだ。

本国にはSUVらしく、前後アクスルにモーターをそれぞれ搭載する4WDもあるけれど、日本仕様はとりあえずRWD(後輪駆動)のみで、モーターの出力と電池容量の違いでふたつのタイプが設定されている。すなわち、「Lite Launch Edition」と「Pro Launch Edition」である。ライトは52kWhのバッテリーで、最高出力170sと最大トルク310Nmのモーターを装備し、WLTC モードで最長航続距離は388km。プロは電池容量が77kWhに増やされ、最高出力は204psにアップ(トルクは同じ)、航続距離は561kmに延びている。前者は499万9000円という、500万円を切る車両価格が大きな魅力だ。

試乗車は上位モデルのプロ・ローンチ・エディションで、価格は636.5万円。ライトとの差別化を図るべく、ヘッドライトが光を感知するとハイビームからロービームに自動的に切り替わるマトリックスLEDに、ホイールが18インチのスチール製から20インチのアルミ製になっていたりする。

シンプルなインテリア早速、ドアを開けてみましょう。ちょっと驚いたのは運転席まわりのデザインがシンプルで洗練されていることだ。ステアリングホイールのところにタブレット型のPCの小さいの、みたいなスクリーンがひとつ、ダッシュボードの真ん中にちょっと大きめのスクリーンがもうひとつあるという、ただそれだけ。

それでいて温かみがあるのは、ダッシュボード上部とドア・パネル、シートの一部にブラウンのレザレットという人造皮革が貼られているからだ。ほんのちょっとしたデザインのマジックだけれど、意外とお金がかかるのでしょうか。

スターターのスイッチはあるけれど、それを使わずとも、電子キーを持って乗り込むだけで起動し、いつでも走り出せる。従来のシフトノブの代わりに、ドライバーの目の前の小さめのスクリーンの横に設けられた「ドライブモードセレクター」というのを回してDレインジに切り替え、アクセル・ペダルを踏み込めば走り出す。

モーターのトルクは強力で、後ろから押されている感がある。ちょっと強めに右足に力を込めると、トルクがモリモリッといきなり湧き出し、リアがグッと沈み込む……ような気がする。

乗り心地は、街中を走っているときのほうが快適で、前235/50、後255/45の20インチというでっかいタイヤをプロ・ローンチ・エディションは装備しているから、さぞや硬かろう。と覚悟していたのに、タイヤの踏面の硬さはあるものの、大きなタイヤ&ホイールの存在はほとんど気にならない。ドッシンバッタンもバタバタも、ぜんぜんしない。車重が2140kgもあって、しかも重たい電池が前後アクスル間の床下に敷き詰め詰められているから、背は高いけれど、低重心なはずで、そういうことも乗り心地に貢献しているのかもしれない。

ボディ剛性は、電池が堅牢なアルミニウム製のハウジングで守られている、とか紹介されていたので、さぞや堅牢かと思いきや、意外とフツーだった。

みなとみらい近くの首都高速を走った限りにおいては、乗り心地は微妙にヒョコヒョコして、フラット感がイマイチのように感じられた。このあたりはコンテナを積んだ大きなトラックがひんぱんに走っているから、たまたまそういう荒れた路面のところを走ったのかもしれない。

ま、20インチで前後異サイズというタイヤは見た目重視だろうし、微妙にヒョコヒョコするというのも、微妙な話であって、別の日に乗ってみたら異なる感想を抱くかもしれない。なにぶん、微妙な話でして。

地産地消というわけで、ID.4には感心したところもあるけれど、さほど感心しなかったところもあった。さほど感心しなかったのは前述したように高速走行時の乗り心地がひとつ、もうひとつは静粛性である。

プレス資料には「非常に静かな駆動システムは、ほとんどノイズを発生しないため、約30km/hの速度から電子音を生成します」とあって、「ひゅうううううんっ」というEVとかHEV(ハイブリッド)によくある電池の制御系が発するようなサウンドを指していると思われる。その音が、(ま、これも微妙な話です)ちょっとばかし大きめだし、気持ちがいい音かというと……ゴニョゴニョでありまして、静粛性が際立つEVゆえ、ロード・ノイズも風切り音もちょっとばかし気になったりもした。

でもって、筆者はフォルクスワーゲンがこれらをよしとした理由について、しばし思いをはせた。だって、もっと乗り心地がよくて、もっと静かにすることもできたはずだから。それをあえてやらなかった。VWはおそらく、いまやるべきはEVを普及させることである、と考えたのではあるまいか。それには、おとな4人と荷物を乗せて、満充電で500kmの航続距離があって、しかもだれもが買える価格の、実用的なピープルズ・カーでなければならない、と結論づけた。そして、あくまで筆者の見立てによれば、量産のために、あるところで見切ったわけである。

ID.4は世界戦略車ということで、ヨーロッパだけでなく、北米、中国でも生産されており、日本仕様はメイド・イン・チャイナである。中国のほうが断然近いから、輸送時のCO2排出も削減できる。地産地消はたいせつである。

導入仕様のLaunch Editionには、VW、アウディ、ポルシェの3ブランドによる充電ネットワーク「プレミアム チャージング アライアンス」の年会費と、VW販売店での充電をひと月あたり60分まで、1年間無料で利用できる会員特典や、家庭に設置する普通充電器の設置費用10万円サポート、残価設定ローンの特別残価設定といった特典が用意されている。

おりしもCOP27(第27回気候変動枠組条約締約国会議)は終わったばかり。フォルクスワーゲンID.4、買うならいまでしょ。

その際ですね、18インチで、より乗り心地がよさそうなライト・ローンチ・エディションも気になるところである。日本人の平均的なクルマの移動距離は1日30km程度という説もある。ということは、ライト・ローンチ・エディションだって満充電で388km走れるはずで、実際の航続距離はその半分だとしても、1週間弱で1回、月に4回チャージすればよいことになる。

もちろん、航続距離は長いほうがいざというときにありがたい、というのも確かで、そうなると、プロ・ローンチ・エディションだけれど……う~む。悩ましい。

そうだ。天国のアントニオ猪木さんに聞いてみよう。

バカやろーっ。電気があれば、なんでもできる。1、2、3、ダーッ!!

文・今尾直樹 写真・田村翔

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