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「ジャミロクワイ」ジェイ・ケイが仕上げたBMW「3.0CSL」にプレ値はつくのか?

掲載 更新 7
「ジャミロクワイ」ジェイ・ケイが仕上げたBMW「3.0CSL」にプレ値はつくのか?

■新車当時ポルシェ「911カレラRS」より高価だったBMW「3.0CSL」とは

 英国「シルバーストーン・オークション」社が2021年3月下旬に開催したオンライン限定オークション「The Race Retro Live Online Auction 2021」では、ロック界のレジェンド「ジャミロクワイ」のジェイ・ケイ(Jay.K)が、過去13年間にわたって所有してきたという1972年型BMW「3.0CSL」が出品され、世界中のファンの間で大きな話題となった。

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 ジェイ・ケイは、同じシルバーストーン・オークション社が2020年5月に開催した「THE MAY LIVE ONLINE AUCTION 2020」にも、1972年型のBMW3.0CSLを出品していたのだが、今回の出品車両は昨年の個体とはボディカラーや仕様も異なる別モノである。そこで今回VAGUEでは、2020年の出品時の記憶も交えて、このオークションでのレビューを届けることとしよう。

●ツーリングカーレース用のホモロゲートスペシャル

 ジェイ・ケイ氏は、英国「アシッドジャズ」レーベルから輩出されたスーパースターユニット「ジャミロクワイ」を主宰するアーティストとして、全世界にその名を轟かせている。

 また、彼はクラシックカー・コレクターとしても超一流で、自身のアイコン的存在としても知られるフェラーリのほかにも、マセラティやポルシェ、アストンマーティン、フォード「マスタング」などの素晴らしいクラシックモデルを数多く蒐集しているという。

 なかでもBMWはお気に入りのブランドのようで、ジェイ・ケイ・コレクションのなかでもかなりの数を占めていたのだが、2020年5月のオークション出品に続いて、今回2台目の3.0CSLを出品したことになる。

 ツーリングカーレースがヨーロッパ各国で絶大な人気を得ていた1971年。BMWがETC(ヨーロッパ・ツーリングカー・チャレンジ)選手権制覇を目指して投入した3.0CSLは、同時代に生産されていた豪奢で美しい4座クーペ「3.0CS」をベースとして、ツーリングカーレース用のFIA「グループ2」ホモロゲートのために開発されたエボリューションモデルだった。

 ドイツ語で軽いことを意味する「Leicht(ライヒト)」の頭文字「L」を添えた車名が示すように、左右ドアをアルミ化、サイド/リアウインドウをパースペックス樹脂製に置き換え、パワーウィンドウも廃することによって、3.0CSの1400kgから300ポンド(約136kg)の減量に成功したと謳われていた。

 蛇足ながら、前回の出品時の公式カタログ解説では「約200kgの減量」と記されていたが、今回はより緻密なキュレーションがおこなわれたようだ。

 一方エンジンは、初年度の3.0CSLでは3.0CSと共用のキャブレターつき2985cc・180psがそのままコンバートされたが、1972年の中期型ではインジェクション化されるとともに、3000cc以上のクラスに移行するために3003ccへと拡大。さらに1973年の後期型では3153cc・206psにパワーアップされたといわれている。

 新車として発売された際には、あのポルシェ「911カレラRS2.7」よりも数百ポンドほど高価だったという3.0CSLは、約3年の生産期間に総計1039台がラインオフした希少車。そのうち右ハンドル仕様車は、イギリスおよび英連邦市場向けに500台が作られたにすぎないとのことである。

 さらに、ETC選手権における目覚しい戦績などのヒストリー要素も加味されて、現在の国際マーケットでは高い評価を得るのが常となっているのだ。

■元ジェイ・ケイのヒストリーつき3.0CSLが、約1750万円で継続販売中

 今回、シルバーストーン・オークション社「The Race Retro Live Online Auction 2021」に出品されたシルバーメタリックのBMW3.0CSLは、イギリス市場向けに500台が製作されたとされる右ハンドル車の1台である。

 中期型にあたる1972年の生産車両で、エンジンは206ps/5500rpmの最高出力を発生する3003ccバージョンを搭載する。

●1973 BMW「3.0 CSL directly from Jay Kay」

 また、この時期から選択可能となったフロントの巨大なエアダムスカートやボンネット左右のフィンなどを装備する一方で、「バットモービル」というニックネームの起源となった、巨大なリアウイングは装備されていない。

 ポップス界のレジェンドであるジェイ・ケイは、新車から数えて6人目のオーナーとして、2008年にこの3.0CSLを入手したという。

 この個体はジェイ・ケイが購入した段階で、すでに一度レストアを受けていたとされる。新車時の元色は鮮やかなイエローだったそうだが、1984年にこの個体を手に入れたウェールズ在住の元オーナーのオーダーにより、BMW純正の「ダイヤモンド・シュヴァルツ(ダイヤモンドブラック)」に塗り替えられた。

 次いで、この修復を担当したピーター・ウォルシュ氏が自ら入手。イーストサセックス州シェルウッドゲートのBMWスペシャリスト「ミュンヘン・レジェンド(Munich Legends)」社を介してジェイ・ケイに販売されるまでの間には、BMWカークラブなどが主催する様々なコンクールイベントなどに出品された事実も判明しているようだ。

 また、再塗装に伴ってベアメタルの状態まで剥離してボディワークを施す傍ら、エンジンについてもマーレ社製高圧縮ピストンとハイカム、タイミングチェーンのフィッティングまで含めた完全なリビルドがおこなわれていたことも、車両に添付されたヒストリーファイルには事細かに記されている。

 加えてビルシュタイン社製のスプリングとダンパーは、アルピナ製のアロイホイールともに新品に交換されたが、これらのアフターパーツは現在では事実上入手不可能とのことである。

 2度目のレストアは、ジェイ・ケイのオーダーにより購入元のミュンヘン・レジェンド社でおこなわれた。当時7000ポンドを費やしたボディ総剥離の再塗装により、現在のBMW純正「ポラリスシルバー」に色替えされた。また、作業工賃だけでも2万650ポンドをかけてメカニカルパートのオーバーホールを行った上に、このプロセス中に取り付けられた部品のために、さらに8232ポンドが支払われたという。

 この個体は、現在でもジェイ・ケイ本人がかなりの頻度でドライブを楽しむ一方、2020年10月には「クラシックヒーローズ」社に940ポンドを支払って燃料ポンプ、リレー、フィルターを新調。2020年12月には、ブレーキフルード交換などのフルサービスでさらに1295ポンドを費やしたばかりであることも、すべてサービスファイルに記載されている。英国での車検も残されており、手に入れたらすぐに走らせられる状態にあるのだ。

 ちなみに、2020年5月の「THE MAY LIVE ONLINE AUCTION 2020」に出品された、同じく「元ジェイ・ケイ」の白い1972年型3.0CSLは、エアロパーツつきの「バットモービル」ではなく、当時の英国マーケットで選択可能だった「シティパッケージ」仕様。当時のロードユーズを見越して前後のバンパーなども装備された個体だった。

 そしてエスティメート(推定落札価格)は13万5000ポンド-15万5000ポンド、日本円換算で約1814万円-2082万円に設定されていたものの、入札は振るわなかったようで、残念ながら「Not Sold(流札)」に終わっている。

 一方、今回のシルバーの3.0CSLは、なぜかドル換算の14万-16万ドルでエスティメートが設定されていたが、オークションハウス側とジェイ・ケイとの間で合意していた「リザーヴ(最低落札価格)」にはまたしても届かず、前回の白い個体と同じく「Not Sold」という結果となってしまった。

 現在ではシルバーストーン・オークション社営業部門によって、11万5000ポンド、日本円に換算すれば約1750万円のプライスで「Buy it now(継続販売)」となっている。

 2000万円前後で推移してきた、近年のBMW3.0CSLのマーケット相場価格。さらに「元ジェイ・ケイ所有車」というヒストリーも合わせれば、なかなかリーズナブルとも思われるのだが、読者諸兄はいかが感じられるであろうか?

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みんなのコメント

7件
  • これこれ!
    古い02ターボもカッコいいが
    この3.0CSLは特にカッコいい。
    今のBMWの面は何なんだ?
    カッコ良い鼻面だけを
    横へ広げてみたり、
    縦に伸ばしてみたり、
    コレこの面が一番!
  • このフェイスの車は好きだねぇ~ ナツイです
    フェンダースポイラーには流石に苦笑いするけど この時代の車っていいよね あの時代を駆け巡った各技術者は天才だと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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