WEC世界耐久選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦するキャデラックのワークス活動を担うチップ・ガナッシ・レーシングは、キャデラックとのパートナーシップを2024シーズンをもって終了する。
3月にこの件が発表されて以来、キャデラックの活動を担う後継チームについては、さまざまな噂が飛び交っているが、WECの欧州ラウンド最終戦となるル・マン24時間レースを前にして、この話題をパドックで耳にする機会が増えてきているので、最新の情報をまとめてみたい。
チップ・ガナッシと離別するキャデラックの新たな提携先をめぐるウワサ。英国籍チームが有力か
■ポルシェに新たな動き
2023年にキャデラックVシリーズ.Rがデビューして以来、WECでそのチームを率いるのは、かつてBMWモータースポーツでエンジニアとしてF1に従事し、その後ポルシェへ移籍してLMP1のテクニカルプロジェクトリーダーを務めたスティーブン・ミタスだ。
以前にミタスはドイツのマンハイムにキャデラックチームのファクトリーを構えていると述べていたが、シュトゥットゥガルト近郊のレオンベルグへいつの間にかに移転し、さらにそこを何らかのトラブルにより退去、現在はアッファルターバッハにあるHWAの元フォーミュラEファクトリーを間借りして、HWAの3名の社員メカニックらが車両整備等にあたっているという。
レースウイークはフリーランスのエンジニアやメカニックが活動を支えているのだが、今季をもってそのフリーランスたちとHWAも役目を終えることになるようだ。
キャデラックのワークスチームを次に担うのは一体誰なのか? 現在、IMSAにおいてはアンドレッティ、WECではJOTAとユナイテッド・オートスポーツとの交渉が有力視されている。これらのどのチームも豊富な資金力と経験、パフォーマンスを備えており、キャデラックのワークスチームを担うには申し分ないと言える。キャディラックがどこのチームと本格的な交渉に入っているのか、とても気になるところだ。
ミタスは、現在シーズン真っ只中という事もあり、今後の件についてはコメントを控えているものの、彼のF1時代から長年の近しい関係の同僚からは、次のポジションへ向けては随分早い段階から動いているという情報を得ており、来年に彼が仕事に困る事はない、としている。
キャデラックの活動を担う候補のひとつとされるJOTAは、5月11日に開催されたWEC第3戦スパでは、ワークスチームのポルシェ・ペンスキー・モータースポーツを押さえ、ポルシェ963のプライベーターとして総合優勝を勝ち取った実力派。トヨタF1を経てアウディスポーツの代表として長年LMP1やDTMでアウディに数多くの栄光をもたらした立役者のひとりであるディーター・ガスがチーム代表を務めるJOTAは、力強いポテンシャルを発揮する一方で、今後もポルシェに留まるとなると『プライベーター』としてのポジションのままで、新たにLMDh用にファクトリーを構えたペンスキーを差し置いてワークスチームへの昇格は考えにくい。
ただし、キャデラックの活動を担えば『ワークスチーム』としてのステータスが手に入るだけでなく、資金面でもさらに豊かになることが予想される。
一方で、もうひとつの候補であるユナイテッド・オートスポーツの創業者はザク・ブラウン。F1のマクラーレンを率いるチーフ・エクゼクティブ・オフィサーとあり名実共に申し分ない上に、長年LMP2クラスの参戦経験がある上、今季のWECではLMGT3クラスの参戦のみとあり、キャパシティには余裕がある(ル・マン24時間レースでは2台のLMP2も参戦する)。
マクラーレンはキャデラックの競合ブランドではあるが、キャデラック・ブランドとしてはGT3マシンを所有していないので、問題はないものと考えられる。
サプライヤー関係者から寄せられた興味深い情報によれば、ポルシェは新たにカスタマーチームを探し始めたという。それが新規にビジネスを広げる意味での新チーム開拓なのか、それともJOTAがキャデラックへ移るのを見込んでのことなのかはつかめていないものの、来年のWECに関するヒントのひとつとなるだろう。
WECのパドックでさまざまな噂が交錯する中、ル・マン以降の進展に注目したい。
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