自動車業界統合の波
ホンダと日産の経営統合について議論が活発に行われるなか、国内に自動車メーカーが14社もあることに対して「多すぎるのでは?」という意見がインターネット上でよく見られる。
「EV」が日本で普及しない超シンプルな理由 航続距離? 充電インフラ? いやいや違います
この14社という数字は、日本自動車工業会が定める
「乗用車、トラック、バス、二輪車など国内において自動車を生産するメーカーを会員として設立され、自動車メーカー14社によって構成されています」
に由来している。具体的には、
・乗用車メーカー:8社(スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車)
・トラックメーカー:4社(いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックス)
・二輪車メーカー:2社(川崎重工業、ヤマハ発動機)
となっている。今回のホンダと日産の経営統合は、14社体制が限界を迎えた兆しなのかもしれない。
メーカー過多が抱える課題
ホンダと日産の経営統合に関する報道をみていると、自動車会社が多いほど、研究開発費の分散や非効率性、経営資源の分散による
・電気自動車(EV)、自動運転の開発競争での遅れ
・国内外でのシェア縮小といったリスク
があるという。
今の時代にあっては、1社単独でグローバルな競争を繰り広げるのは無理難題であり、1社で立ち向かえるのはトヨタぐらいという意見もあるくらいだ。日本の自動車メーカーの乗用車新車販売台数と輸出台数をみると、
●乗用車新車販売台数
・1990年:510万2659台
・2022年:344万8297台
・2023年:399万2727台
●乗用車輸出台数
・1990年:448万2130台
・2022年:332万1385台
・2023年:397万8141台
新車販売台数、輸出台数いずれも、ピークだった1990年から落ち込んでいることがわかる。2023年は、2022年の半導体不足などによる生産減の反動で増加しているものの、国際競争の激化を考えると決して安閑としていられない状況だ。
もちろん、この先の生産の先細りは、自動車メーカーだけでなく国内の下請け会社過多にもつながってくる。このような背景から、自動車メーカー再編により、経営資源の集中による技術競争力を強化、効率的な開発体制の構築、部品の共通化などによる生産コストの削減など、体制の再構築が求められているのかもしれない。
トヨタG vs ホンダ+日産+三菱自
ホンダと日産、および三菱自の経営統合が実現すると、
「トヨタグループ vs ホンダ+日産+三菱自」
の二大勢力となる。実のところ、現時点においてもトヨタは、ホンダ、日産、三菱自を除いたほとんどの会社と、以下のような資本関係がある。
・100%出資子会社:ダイハツ
・業務資本提携:スバル、マツダ、スズキ、ヤマハ、日野、いすゞ
このように、すでにトヨタ中心とした一大グループが出来上がっており、ホンダ、日産、三菱自(日産と業務資本提携)がトヨタか外国資本の軍門に下らないかぎり、まとまるのは自然な流れだったのかもしれない。
今後は、ホンダ+日産+三菱自で、EV開発やモビリティサービスでのシナジー効果を発揮し、ホンダの四輪車に加え幅広い分野における技術力、日産の電動化ノウハウ、三菱自のSUV・4WD技術およびアセアン市場といった各社の強みをどこまで活かせるかにかかっているといえよう。
メーカー再編の課題とリスク
自動車メーカー再編は、ある意味“劇薬”であり、課題とリスクが残るのはいうまでもない。そもそも、ホンダ、日産、三菱自ともに、企業文化や従業員のプライドといったマインド面も大きく異なっている点が気になるところだろう。しかし、持ち株会社方式により経営統合する見込みであり、各社の独自性は確保できる見通しだ。
問題は、経営資源配分やグループとしての経営戦略をどこまで落とし込めるかにかかっているといっていい。また、グループとして効率化をすすめるにあたり、重複する業務や研究開発、グループ会社、あるいは下請け会社やサプライチェーンまで整理するとなると、大規模なリストラの可能性も秘めている。
また、企業の統合では、常に独占禁止法の懸念がつきまとう。ホンダ、日産、三菱自の経営統合による市場に与える影響は未知数であるが、少なくとも競争単位の減少による競争制限的な企業結合とはならないだろう。
とはいえ、独占禁止法の私的独占や共同の取引拒絶、優越的地位の濫用(下請法違反)といった行為に抵触しないように、グループとしての取り組みがより一層求められる。
海外メーカーの事例
ここで、海外自動車メーカーの巨大グループであるフォルクスワーゲン・グループとステランティスの事例をみてみよう。
フォルクスワーゲン・グループは、フォルクスワーゲンを筆頭に、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、シュコダなどを擁し、2023年は自動車販売台数2位にランクインしている。グループとしては、ヨーロッパ17か国のほか、北米、南米、アジア、アフリカの10か国に114の生産拠点があり、それぞれの市場に対応した自動車を生産。グループ内で小型車から高級車までセグメントごとのプラットフォームの統一を図っているところだ。
もちろん、ソフトウェア開発、バッテリー・エネルギー戦略、自動運転や各種サービスといったモビリティソリューションなど、多岐にわたる分野をグループで推進中だ。自動車販売台数の推移をみると、2010年の約7000千台から成長をつづけ、2019年に10956千台のピークを迎える。以降は、コロナ禍や半導体不足により減少に転じ、2023年に回復したものの9362千台にとどまっている。
最近ドイツでフォルクスワーゲンの工場閉鎖が話題になっているが、これは個別ブランドとしてのフォルクスワーゲンの問題だ。ただ、背景にはドイツ国内でのエネルギーや人件費などの高コストな自動車生産体制があり、日本国内の自動車産業も他人ごとではない。
ホンダと日産の経営統合に関する海外の記事では、直近の事例としてステランティスが取り上げられている。ステランティスは、2021年にフランスの自動車メーカー PSAグループとイタリアおよび米国の自動車メーカー フィアット・クライスラー・オートモービルズにより設立されたマルチブランドグループだ。グループは、アルファロメオ、シトロエン、フィアット、ジープ、オペル、プジョーなど14のブランドを擁している。
2023年は、トヨタ、フォルクスワーゲン、ヒュンダイに次ぎ世界販売台数第4位だった。2023年こそ、乗用車および商用車販売の好調によりグループの売上高が5.9%増加したが、2024年の1~6月期の世界販売台数は10%減少。12月1日には、カルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)の辞任が発表された。取締役会との見解の相違や、販売不振が原因ともいわれている。経営統合しても、グループをまとめきれなければ不安定な状況が続くこととなる。
再編の必然性と選択肢
今後は、2025年1月をめどに三菱自が経営統合の検討結果を出し、6月に最終合意、2026年8月に持ち株会社の上場を目指すとのことである。ホンダと日産が経営統合すると、トヨタ、フォルクスワーゲンにつづいて販売台数世界3位のグループの誕生となるという。今や、自動車メーカーの再編(グループ化・マルチブランド化)は、100年に一度ともいわれている自動車業界の変革期において必然といえるかもしれない。
また、日本の自動車産業が持続的に成長するために、プラットフォームや部品の共通化などを通じたコスト削減による価格競争力の維持や、付加価値の高い自動車を生み出すためにより大きな経営資源の投入が欠かせない。自動車メーカーの再編は、スケールメリットが得られる選択肢のひとつともいえよう。
もちろん、自動車メーカーの経営統合は、あくまでもスタートラインでありゴールではない。複数の異なる企業文化の会社が、これまでライバル関係にあった会社が手を結ぶのだ。自動車メーカーの従業員のみならず、関連する企業にとっても決して平坦な道ではないだろう。しかも、その険しい道を乗り越えて、経営統合の果実を得るのは数年先のこととなる。
国内に14社もの自動車メーカーが存在するのは多いのではないかという冒頭の意見には、市場の縮小や非効率性の観点から一定の妥当性がある。一方で、メーカーの多様性が日本の競争力を支えているという反論もある。
経営統合に関する記者会見で、ホンダの三部社長は
「2030年を見据えたら、開発期間を含め今の判断が重要になる」
と語っている。そこは、経営者としてのひとつの決断だろう。あなたなら、今回のホンダと日産の経営統合を含め、日本の自動車メーカー再編をどう考えるだろうか。
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