自動車は走れば何でもいい。そう考える人は多いし、間違いでもない。しかし、自動車の個性が薄くなり、EVやカーシェアリングが普及する「今」だからこそ、クルマに「遊び」や「冒険」を求めたい。伊達軍曹が贈る攻めの自動車選び。第10回は最後の「往年系メルセデス」となった、メルセデス・ベンツEクラス(W124)と190(W201)。
“目隠し”しても分かるドライブフィール郊外や地方都市に住まうのであれば話は別だ。しかし東京あるいはそれに準ずる都市に住まう者にとって、「実用」を主たる目的にクルマを所有する意味はさほどない。
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そんな状況下で「それでもあえて自家用車を所有する」というのであれば、何らかのアート作品を購入するのに近いスピリットで臨むべきだろう。
すなわち明確な実益だけをそこに求めるのではなく、「己の精神に何らかの良き影響を与える」という薄ぼんやりとした、しかし大変重要な便益こそを主眼に、都会人の自家用車選びはなされるべきなのだ。
そう考えた場合におすすめしたい選択肢のひとつが、カーマニアからは「W124」あるいは「W201」といった記号で呼ばれることが多い、ややクラシカルなドイツ製セダンだ。
「W124」とは4世代前のメルセデス・ベンツEクラスのことで、「W201」とはCクラスの前身に相当する、車名としては「190(イチキューマル)」となるコンパクトサルーン。ともに1980年代半ば頃から90年代半ば頃にかけて新車として販売されていた。
この2モデルについては十分以上にお詳しい人も多いだろうが、それでもあえて少々のご説明をするなら、W124ならびにW201とは「往年系メルセデスの最後となった世代」である。
1990年代半ばからのW210型Eクラスや、W201こと190クラスに代わって誕生した初代Cクラスは、さすがのメルセデスも、極端なグローバル化が進みはじめた当時の世相のもと「最善か無か」などという尊大なことは言っていられなくなり、コストコンシャスな作り方がされるようになった最初の世代だった。
もちろんそれ以前のメルセデス各車だって、当然ながらコストコンシャスな機械製品ではあった。エンジニアたちはちまちまと原価計算もしていたはずで、「最善のためなら何でもアリなのじゃああああ! 」などと喚きながら、湯水のように予算を使いまくっていたわけではない。
しかし、それでもどこか「最善のためなら何でもアリなのじゃああああ! 」という叫び声が聴こえてきそうだったのが1970年代までのメルセデスであり、その雰囲気と精神がまだかなり残っていたのが、ここで紹介したいW124とW201だったのだ。
新車時も中古となった今も人気は高いW124型Eクラス(またはミディアムクラス)とW201型190クラスとでは、ボディサイズはけっこう異なる。当然ながらEクラスのほうが大きくて立派に見えるわけだが、両者の乗り味には大きな差はない。ともに「鷹揚にして緻密」といったニュアンスのドライブフィールで、実際には不可能な話だが、仮に目隠しをされながら運転したとしても、「あぁ、これはメルセデスのW124か、もしくはW201ですね」と即座にわかる、そんなフィールであった。
2020年の最新世代だと、同様のブラインド状態で運転したならば「たぶんメルセデスだとは思うけど……もしかしたらBMWか、あるいはアウディかも? 」という感じになるはずだが、当時のW124またはW201は「明確に違う何か」だったのだ。具体的には「鷹揚にして緻密」という、前述のワン・アンド・オンリーなキャラクターである。
そんなワン・アンド・オンリーな存在ゆえ、新車当時も大いに人気が高かったW124あるいはW201だが、新車販売を終えてから数年がたった2000年頃も、やや手頃な予算で買えるようになったユーズドカーとして、新車時とはまた別のニュアンスで高い人気を誇るようになった。
5リッターのV8 DOHCユニットを搭載した500Eというスペシャルモデルはユーズドカーとしてもかなり高額で、700万~1000万円近いプライスで販売されていたと記憶している。だが通常の3リッタークラスの直6を積むW124や、2リッターの直4エンジンを積んだW201はせいぜい100万円から300万円ぐらいの、しかしメルセデスが「最善か無か」を地で行っていた時代の香りを十分以上に残す存在として、好事家たちに愛されたのだ。
しかし2000年代も半ばを過ぎる頃になると、さすがのW124やW201も単純に古くなり、それまで以上に「手がかかる存在」になったことで、プチブームは去った。一部のハードコアなユーザーや専門店はその後も変わらずW124に愛を注ぎ続けたが、客もお店も「ライトな層」は去っていったのだ。
何度目かの“買い時”を迎えているそして今、2020年。W124あるいはW201といった「最後のリアルメルセデス」は、何度目かの“買い時”を迎えているように思える。
そう考える理由は下記の3つだ。
1. ブームが去り、機械としても単純に古くなったわけだが、その分だけ、ハードコアな愛情を注がれた個体だけが今、美しい状態で残っているから(つまりダメな個体は土に還ったか、もしくは非常にわかりやすい形で劣化した)。
2. 500Eなどの特殊なモデルは別として、通常のW124やW201は、今や状態のよろしい個体であっても大して高いプライスにはならない(モノには相場というものがあるため)。そのように、もはや大して儲かるわけでもない商材をわざわざ丁寧に整備して販売している専門店は、今となっては自動車変態(←ホメてます)が大半であることが予想され、そういった愛すべき変態さんが整備して売っている車というのは(基本的には)ハズレ無しであるから。
3. 加えて昨今、いわゆる「相続系ワンオーナー車」が多数出回るようになってきたから。
上記1と2については説明不要だろうが、3は若干の注釈が必要かもしれない。
「相続系ワンオーナー車」というのは、40代か50代ぐらいの頃に新車としてW124やW201を買い、ずっと所有していた方が残念ながらお亡くなりになるか、あるいはご高齢となった関係で運転免許を返納したことで、もともと付き合いがあったヤナセなどの新車ディーラーに売却された個体のことだ。
で、ヤナセやシュテルンの認定中古車ショールームでは今さらW124やW201の中古車を置くわけにもいかないため、そういった個体は、ヤナセやシュテルンなどと付き合いのある「街場の専門店」へと流れてくる。
それが、ここで言う「相続系ワンオーナー車」で、そういった個体はたいていの場合、さほどの距離は走っていない低走行物件。なおかつディーラーに勧められるがまま、フルフルの点検および部品交換を20年以上にわたって受けてきている。ついでに言えば――これは絶対ではないが――純正の「レース製シートカバー」がずっと掛けられていたケースも多いため、シートの傷みも非常に少ない……という寸法なのだ。
そういった相続系ワンオーナー車であっても、前述のとおりモノには相場というものがあり、W124やW201の中古車相場というのは今や決して高くはないため、車両価格にしてせいぜい100万円台後半か、あるいは200万円ちょいぐらいのゾーンで探すことができる。
旧世代のエンジンゆえ、燃費は現在のクルマほど良いわけではない。またいわゆる先進安全装備の類も、当然ながらまったく付いていない。
だが、あの鷹揚にして緻密なドライブフィールと、今となっては当時の正統派から転じて「クラシカルでカワイイ! 」的にもなったデザインを愛でるのは、「どこのメーカー製のクルマもおおむね似たようなフィールとデザインになった」と言えなくもない2020年の今、大変にシブい行為ではないかと思うのだが、いかがだろうか。
文・伊達軍曹 編集・iconic
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