■高性能なパトカーは交通違反の抑止力になる!?
警察車両というと真っ先に思い浮かぶのがパトロールカー(以下、パトカー)でしょう。警察官が制服で乗車し巡回をおこなうなど、地域の犯罪抑止や交通違反の取り締まりに使用するもので、昨今ではトヨタ「クラウン」が主流になっています。
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また、高速道路などで取締りをおこなう交通機動隊、市街地などを巡回する警ら用など、用途によってパトカーの車種はさまざまです。
そこで、パトカーに採用されたクルマのなかから、記憶に残るモデルや話題になったモデルを5車種ピックアップして紹介します。
●日産「GT-R」
1980年代に、市街地を巡回する警らパトカーに日産「スカイライン2000GT」が数多く導入されました。
決して速いクルマではありませんでしたが、それまでのパトカーの主流だったトヨタ「クラウン」や日産「セドリック」の鈍重なイメージからすると、当時の若者の憧れでもあったスカイラインがパトカーとして登場したことで、イメージを刷新する意味があったのかもしれません。
その後、スカイラインが高性能グレードである「GT-R」を復活させ交通警察隊に導入されると「GT-Rのパトカーに狙われたら逃げられない」とまでいわれるようになりました。
そして現在は、最高出力570馬力を発揮する3.8リッターV型6気筒ツインターボエンジンを搭載する「GT-R」も交通警察隊に採用されています。
現行型であるR35型GT-Rのパトカーを全国で初めて導入したのは栃木県警ですが、2018年に栃木県在住の個人による寄付という形で寄贈されました。
導入に至った背景には、栃木県には日産の研究施設や工場を所有しているということもあったのでしょう。
●ホンダ「NSX」
1990年に国内で発売されたホンダ「NSX」は、世界初のオールアルミモノコックのシャシに、最高出力280馬力の3リッターV型6気筒DOHCエンジンをミッドシップマウントした本格的スポーツカーです。
当時、国内メーカーの乗用車では最高額でありながらも、バブル経済の追い風もあり発売当初で3年分のバックオーダーを抱えたという逸話があります。
外観や性能から和製スーパーカーといわれ、欧州製のスーパーカーを大きく上まわる品質としたことで、スーパーカーの概念を変えたクルマとして国内外で商業的な成功を収めました。
そんなNSXですが、1992年に栃木県警へ導入され話題になりました。ホンダが栃木県警に寄贈したことが新聞でも報じられたほどです。
日産「スカイラインGT-R」やトヨタ「スープラ」など国産車の高性能化が進むなかで、速度超過などの違反行為の増加に対する抑止効果も狙っていたのかもしれません。
●スバル「インプレッサWRX STi」
世界ラリー選手権(WRC)で勝つために、スバル「レガシィRS」の後継として生まれた「インプレッサWRX」は、モータースポーツの世界だけでなく公道でのパフォーマンスも国内トップクラスのクルマでした。
なかでも「インプレッサWRX STi」は、スバルのモータースポーツ用エンジンや車両開発などを担う「スバルテクニカインターナショナル」の手が入ったモデルで、エンジン、シャシ、サスペンション、エアロパーツなど、そのままでも競技に出場できるくらいの性能を持ったモデルです。
そのインプレッサWRX STiのパトカーが、埼玉県警に存在しました。
ラリーカーそのままのような、大型バンパーとボンネット上のエアインテーク、巨大なリアスポイラーもパトカー仕様でも取り外されることがなかったばかりか、マフラーもSTiのものが装着されたままで、イベントなどに登場すると水平対向エンジン独特のボクサーサウンドを響かせました。
また、STi仕様ではありませんが、埼玉県警以外にも警察車両としてインプレッサWRXや1.5リッターエンジン搭載モデルが採用され、ツートーンカラーのパトカーはもちろん、覆面パトカーもあり、取り締まりや捜査活動に使用されていました。
■最強の覆面パトカーとして恐れられたモデルとは
●日産「スカイラインGT-R 40thアニバーサリー」
日産「スカイラインGT-R」が登場して、その高性能さから交通警察隊に導入されていましたが、4代目スカイラインGT-Rである「R33型」では、4ドアGT-Rのパトカーも存在しました。
この4ドアGT-Rは、スカイライン発売40周年を記念してオーテックジャパンの手によって限定販売されたR33型 GT-Rの4ドア仕様「スカイラインGT-R 40thアニバーサリー」で、「大人のための国内最高性能4ドアスポーツセダン」をコンセプトに、1998年に期間限定で440台が生産されました。
スカイラインGT-R 40thアニバーサリーは、R33型2ドアGT-Rのシャシをベースに4ドア化され、搭載されるエンジンや駆動系、サスペンションは2ドアGT-Rそのもので、ワイドトレッドとするために、リアフェンダーとリアドアは専用に作られました。
このスカイラインGT-R 40thアニバーサリーはツートーンカラーのパトカーだけでなく、覆面パトカーとしても導入され、主に高速道路や自動車専用道路での交通取り締まりに利用されたようです。
●スズキ「キザシ」
2009年にスズキ初のアッパーミドルクラスセダンとして発売された「キザシ」は、最高出力188馬力の2.4リッター直列4気筒エンジンを搭載し、ボディサイズは全長4650mm×全幅1820mm×全高1480mmの3ナンバー車で、日米欧向けに販売したグローバルモデルです。
外観のデザインはスタイリッシュで、欧州や北米で走行テストを重ね、四輪独立懸架による上質な走りと、乗り心地のよさの両立を目指していました。
価格が278万7750円(消費税8%込)と、当時のスズキのラインナップのなかでは高価だったことと、受注生産のみ(日本国内)ということもあり、販売は極端に低迷してしまいます。
登録台数の少なさから珍しい存在のキザシですが、警察車両(捜査車両)としての導入は多く、「キザシ=覆面パトカー」と認識されていたほどで、実際に5台ものキザシを導入している警察署があります。
覆面パトカーは隠密行動をする必要がありますが、珍しいキザシでは逆に目立ってしまうという矛盾がありました。
※ ※ ※
自動車メーカーの本拠地や生産拠点がある地域では、ハイパフォーマンスカーを地元の県警の高速道路交通警察隊に寄贈することも以前から多く、日産「フェアレディZ」やマツダ「RX-7」のパトカーなどが存在しました。
ほかにも過去に栃木県警ではフォード「マスタング」、新潟県警ではポルシェ「911」など、輸入車のパトカーがありました。
取り締まりに使われるパトカーは高性能である必要がありますが、見た目の威圧感も重要だということで、そうするとパトカーに採用されるクルマは限定されるということでしょう。
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