これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、個性あふれるデザインと質感の高さでコンパクトカー超えを果たした、ダイハツ ストーリアを取り上げる。
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】ストーリアは「We do COMPACT」を体現したダイハツ渾身のスモールカー!
文/フォッケウルフ、写真/ダイハツ
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■スモールカーの持ち味はそのままに上質感をプラス
1997年に創業90周年を迎えたダイハツは、「We do COMPACT」という企業スローガンを掲げ、小さなクルマの魅力をより強力に訴求していた。今回クローズアップする「ストーリア」はそんなスローガンのもと、気軽に使えて社会・環境に優しいスモールカーの持ち味はそのままに、安全性や走行性、快適性などを充実させたまさにダイハツの意欲作として注目を集めた。
“新1000ccスタイル”と銘打って登場したストーリアは、小さくて広い新コンパクトパッケージ、どこから見てもひと目でわかる全く新しいスタイル、快適な室内と広い荷室といった特徴を実現していた。
全長3660mm、全幅1600mm、全高1450mmというサイズは競合車よりもひとまわり小さく、居住性や実用性を満足させるには難しいチャレンジだったが、小さくて使い勝手のいいクルマを作るのはダイハツとってお手の物。日常的な用途で不満はなく、そのうえ内外装を上質に作り込まれていた。
1998年に登場した1.0Lエンジン搭載のコンパクトハッチバック。同年、OEM版のトヨタ デュエットも販売されている
どこから見てもひと目でわかるスタイルを目指してデザインされた外観は、セダンの上質感とハッチバックの実用性を融合させた3次曲面のリアウインドウとノッチ付きバックドアで構成される。
フロントまわりは縦形の大型異形マルチリフレクターヘッドランプを採用し、質感のあるメッキバンパーモールの効果も相まってじつに個性的な表情が演出されていた。ボディサイドはホイールアーチとロッカーモール、メッキサイドモールをあしらうことで小さいながらも躍動感が演出され、上質な雰囲気も漂わせていた。
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■小さなクルマでも質感にこだわった作りを貫く
車内は豊かな曲面構成の一体型インストルメントパネルで幅広感が強調されている。メーターは液晶ツイントリップ付きフラットパネル大型2眼メーターを採用(CX)し、操作性のいいダイヤル式ヒーターコントロールを全車に標準装備。
シート表皮は、グレーを基調とした大柄デザインのフルファブリックでカジュアル感を表現しており、上級グレードでは上質感のあるフルファブリックとすることでカジュアル感にシックな印象をプラスしている。
スタイリッシュでありながら合理性・実用性を兼ね備えていたのもストーリアのセールスポイントで、コンパクトカークラスでは珍しいセンターアームレスト付きフロントシート(AT車)としたり、センターアームレスト付き分割可倒式リアシートを採用したほか、車内には便利な収納スペースが豊富に設けられていた。
使い勝手重視のインテリアデザインだが、そこかしこにシルバーパーツが配置され質感にもこだわりがあった
搭載されるパワーユニットは、新開発の3気筒ツインカムエンジンで、電子制御インジェクションをはじめとしたメカニズムを組み合わせることで、最高出力60psを発生し、最大トルクはクラストップレベルとなる9.6 kg-mを実現。
数値だけを見れば際立った特徴とはいえないが、日常の足という用途を加味して、街なかで多用する実用域のパワー特性を重視したチューニングが施されたことによって、実際の走りは数値から想像するよりもパワフルな印象だった。
高トルク対応の新開発5速MTと変速ショックの少ない静かでスムーズな走りを実現する4速ATの効果もあって、ストレスなくドライブできるというのも走りにおける大きな特徴だ。そのうえ燃費はクラストップとなる21km/L(10・15モード、CL 2WDの5速MT車)を達成しており、排出ガスについても7都県市/6府県市指定低公害車基準をクリアするなど、優れた経済性や環境性能を有していた。
足まわりはフロントがストラット式、リアがトーションビーム式の組み合わせとし、欧州での走行試験を繰り返し、乗り心地と操縦安定性を高い次元で両立したと謳っていた。たしかに乗り心地に重きをおいたセッティングで心地よさは実感できたものの、荒れた路面では挙動の乱れがやや顕著に現れ、その収束もいまひとつだった感は否めずリーズナブルな小型車を実感させた。
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■モータースポーツを戦う高性能な派生モデルもラインアップ
ストーリアは1998年2月に登場し、2004年6月まで販売されていたが、その間、標準仕様のほかに魅力的な派生モデルをリリースしている。なかでもモータースポーツ競技のベース車両として発売された「ストーリア X4(クロスフォー)」は、ダイハツが作り上げたホットハッチとして話題となった。
フルタイム4WDの「ストーリア CL 4WD」の5速MT車をベースに、新開発JC-DET型713cc4気筒ツインカムターボエンジンを搭載。サスペンションは形式こそ同じだが、ショックアブソーバー、コイルスプリングが強化され、トランスミッションもクロスギヤレシオとして強化クラッチが奢られている。
もちろん、競技に不要な装備はすべて排除されるという、徹底した簡素化によってボディは約20kgの軽量化。840kgという車重に対して、120psというパワーは十分すぎるパフォーマンスで、リトルモンスターと呼ぶに相応しい走りを見せつけた。
X4は120psを発生するターボエンジンを搭載し、サスペンションやトランスミッションも専用品が採用された。モータースポーツ参戦用の車両だが、その走りに魅了されてオーナーになった人も少なくない
またストーリアは輸出され、海外では「シリオン」という名前で販売されていた。ヨーロッパ各国では新しいタイプのスモールカーとして人気を集め、ドイツ交通クラブ(VCD)が発表した1998年度の「環境にやさしいクルマ」調査において第2位に選ばれるなど、その実力が高く評価されていた。
2000年5月のマイナーチェンジでは、1.3Lエンジン搭載車を追加した上級シリーズを設定し、“小さな高級車”という価値に磨きをかけている。コンパクトカーをエントリーモデルと位置づけているメーカーとは異なり、小さなクルマをメインに作り続けてきたダイハツにとってのストーリアは、ダイハツのラインアップにおける上位機種で、実質的なフラッグシップといっていい。
だからこそ小さくても上質で使い勝手がよく、走りにも満足できることにこだわって作り込まれていた。大ヒットといえるほどの販売は記録していないが、オリジナリティに溢れた個性でユーザーに愛されたコンパクトカーとして、クルマ好きの間で記憶されている。
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みんなのコメント
カローラランクスとかもそうだったけど
する必要あった?