これまで数多くのレーシングドライバーにインタビューを行ってきたオートスポーツweb。今回は未来のトップドライバー候補“ネクスト・スター”として、これから日本のモータースポーツ界を担う若手ドライバーにスポットを当てる企画を始動。第1回は2024年のFIA-F4にHELM MOTORSPORTSから参戦し、第2戦で初優勝を挙げた森山冬星に話を聞いた。
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HELM MOTORSPORTS、車両変更となる2024年のFIA-F4に4台体制で参戦。チャンピオンを目指す
──森山選手は現在21歳ということで、モータースポーツをはじめたきっかけを教えて下さい。
森山冬星(以下、森山):僕は覚えていないのですけど、もともと祖父がモータースポーツをしていて、僕が3歳くらいのころに初めてサーキットに行ったことがきっかけです。
──森山選手のキャリアでハイライトとなる部分を教えて下さい。
森山:2019年から全日本カート選手権OK部門に参戦して、2021年に鈴鹿クラブマンレースのスーパーFJにステップアップして、2022年に2勝を挙げてチャンピオンを獲りました。その年にはHRS-Suzuka(ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿)フォーミュラクラスのスカラシップを獲得して、昨年からFIA-F4に参戦しています。
──昨シーズンはHFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)からの参戦でしたが、今季はHELM MOTORSPORTSに移籍となりました。加入の経緯を教えて下さい。
森山:いろいろな人のおかげで(HELM MOTORSPORTSと)知り合うことができ、3月下旬のスプリングトレーニング直前に、本当に急遽オファーをいただき乗ることが決まりました。
──HELM MOTORSPORTSというチームの雰囲気はいかがでしょうか?
森山:チームの雰囲気はすごく良くて楽しいです。僕は勝手に『プライベーターだったら3番手でもいいでしょ』みたいな雰囲気なのかなと思っていたのですけど、全然そんなことなく、HELM MOTORSPORTSさんは(平木)湧也さんと(平木)玲次さんをはじめ、みんなが勝ちに来ていますし、勝つためにレースをしています。第2戦で勝つことができましたし、チームの雰囲気はすごく良いと思います。
──そのFIA-F4第2戦での初優勝についてお聞きします。まずレースの内容はいかがでしたか?
森山:後ろから迫られてはいましたけど、冷静にレースを運ぶことができたので自分的には文句なしでした。ですが、湧也さんから「セーフティカー明けのリスタートはダメだろ」という指摘は受けました。実は前日の第1戦から言われていたことだったんですけど、第2戦がもっとダメだったことは自分でも思っていました。リスタートでアクセルを踏むタイミングをミスして、タイヤが温まっていなかったので空転して1コーナーで並ばれてしまいました。そこは反省点です。
──第2戦はレースウイーク中に発生したエンジントラブルの影響でTGR-DC RS F4、HFDP with B-Max Racing Team、PONOS RACINGといったチームが出場を見合わせたなかでの優勝でした。
森山:第1戦も手応えがありましたけど、自分のミス(編注:トップ争い中の接触でペナルティ)で取りこぼしてしまいました。第1戦も勝てたと思っていますし、第2戦で優勝することはできましたけど(他車が)出場していないので、やっぱり……どこかモヤモヤしていた気持ちはありました。
もともと育成チームにいたので(育成ドライバーたちを)『やっつけたい』という気持ちでサーキットに来たのに、出場しないという……。何と言っていいか分からないような気持ちはありましたけど、次戦以降で勝てるように頑張ろうという気持ちに切り替えて、しっかりと自分の走りに集中することにしました。
──今季残りのレース、HELM MOTORSPORTSと一緒にどのように戦っていきたいですか?
森山:今シーズンは本当にチャンピオンしか狙っていません。自分とチームにとっても本当に一戦一戦が大事なので、開幕戦のようなミスは絶対にできません。最低でもレースでも表彰台を狙い、厳しいレースでも勝てるようにしっかりと頑張りたいです。
■世界への思いと憧れのドライバー。メンタルコントロール対策にはじめた趣味
──ここからは森山選手のパーソナルな部分を聞いていきたいと思います。まず、森山選手は今後どのようなレーシングドライバーになりたいですか?
森山:やっぱり、スター性に溢れて、みんなから憧れられるドライバーがいいですね。僕は『みんなに勇気を与える』といったヒーロー的なことが結構好きなので、そういったドライバーになりたいです。人間味溢れるといいますか、怒りや喜びをすべて表現できたらいいなと思っています。
──憧れのレーシングドライバーなどはいますか?
森山:ルイス・ハミルトンやシャルル・ルクレールといったF1ドライバーです。スター性がありますし、世界的に有名な選手だとアスリートとしても評価されるので、やっぱり憧れますね。
──先ほど「人間味溢れる」と言っていましたが、そのあたりのF1ドライバーとの共通点はありますか?
森山:あまり日本人は怒っている感情を出さないかと思いますけど、僕はけっこう出てしまいます(苦笑)。そういった部分は似ているかなと思っています。
──森山選手は、レース中に熱くなるタイプなのですか?
森山:かなり熱くなってしまうタイプなので、カート時代からメンタルコントロールが課題です。そういった感情の部分は直らないので、やっぱり難しいです。なので、1年くらい前から趣味でゴルフをしています。
──ゴルフをはじめてからはメンタルコントロールに変化はありましたか?
森山:ゴルフもミスをしたりするとかなり苛つくことはありますけど、少しマシになりましたね。ちょっとは感情をコントロールできるようになっていると思います(笑)。
──感情的な部分はレース中だと、どのように出てしまうのでしょうか。
森山:やっぱりタイムが出ないときや、クルマが自分の思っているような動きではなくて下位に沈んだときなどは、すごくフラストレーションが溜まってしまいます。もうフラストレーションが溜まった次の日、もしくは家に帰った瞬間にゴルフに行っています。
──レーシングドライバーということで、クルマは好きなんですか?
森山:僕は意外にクルマはあんまりで……、なるべく日頃は運転したくない派です。自動車免許は持っていますけど、なるべく運転しないようにしています。
──では、感情的な部分が短所だとしたら、長所はなんでしょう。
森山:諦めないことですね。どんな状況からでも這い上がる気持ちなど、メンタルの部分は強いと思っています。
──なるほど。そんな森山選手は現在大学4年生ということですが、大学生とレーシングドライバーのすみ分けはどうしていますか?
森山:僕はどこに行っても“素”なので、本当にあまり分けていません。大学は少し疎かになっているかもしれませんけど……(苦笑)。
──大学卒業後は完全にレーシングドライバーに集中すると。
森山:そうですね。そういった意味では、自分の人生を考えると、本当に今年にかかっていると思います。だからこそ、今年このHELM MOTORSPORTSさんに加入することができて良かったと思っています。
──今後の目標や自身が考えているステップアップはありますか?
森山:やはり来季は育成に戻ることを目標にしています。なので、育成ドライバーに戻るからには、今年は絶対にチャンピオンを獲得します。プライベーターでチャンピオンを獲得することができれば育成に戻ることができると思っているので、まずは育成に戻ることがひとつの目標です。そのうえでスーパーフォーミュラやGT500クラスにステップアップできるように、しっかりとレースを戦いたいです。
──このレースに参戦したいというカテゴリーはありますか?
森山:今はもう何のカテゴリーでも参戦したいです。でも、やっぱりF1ですね。僕は昔から世界を見ているタイプだったので、F1には絶対に行きたい。ずっとそう思っています。
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最初は緊張からか、少し余所余所しい受け答えだったものの、途中のゴルフの話題くらいからは笑顔をみせながら話をし始めた森山。その爽やかな表情の内側にはメーカーの育成から外れた悔しさをバネにしたレースに対する真面目な取り組み方や、今季にかける思いを感じ取ることができたインタビューだった。
■プロフィール 森山冬星(もりやま・とうせい)
2003年1月10日大阪府出身。2019年に全日本カート選手権OK部門で1勝を挙げると、2021年鈴鹿クラブマンレースのスーパーFJにステップアップ。2022年に同シリーズで2勝を挙げてチャンピオンに輝くと、HRS-Suzukaフォーミュラクラスのスカラシップを単独で得る。2023年にFIA-F4で四輪デビューし、2024年はHELM MOTORSPORTSから参戦、第4戦を終えてランキング2位につけている。
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