85kWhのバッテリーに合計407psのモーター
メルセデスが量産する乗用車としては初めての純EVが、初めて英国の地に降り立った。EQC400は中サイズの5シーターSUVで、4輪駆動システムに400馬力以上の最高出力を誇る。加速力は多くのホットハッチを超える鋭さを持ち、車内空間には大人5名と、その小旅行に必要な荷物を積むのに充分な広さがある。加えてメルセデス・ベンツらしいラグジュアリーさも兼ね備える。
7万ポンド(910万円)にふさわしい内容に聞こえるだろうか。純EVだから、排気ガスを一切出さないことも、重要なセールスポイントとなる。プラットフォームは同じSUVのGLCと共通しており、EQCが完全な専用設計を施されたEVというわけではないが、搭載されるメカニズムはメルセデス・ベンツだから、最善なものが搭載されている。
エネルギー源は85kWhの容量を持つリチウムイオン・バッテリーで、テスラと同様に床下に搭載。実際に利用可能な容量は80kWhとなるという。ライバルモデルのアウディEトロン・クワトロは95kWhのバッテリーを搭載するが、利用可能な容量は83.6kWhに留まっている。ジャガーIペースの割合は、さらに少ない。
EQCには前後ふたつのモーターとプラネタリーギアを搭載し、総合での最高出力は407psで、最大トルクは77.4kg-m。最大トルクはアウディEトロンやジャガーIペースよりもかなり高い。
ボディサイズは、大きなアウディとコンパクトなジャガーの中間。車重は2495kgもあり、当面は大きな駆動用バッテリーを搭載するEVにとって、避けることができない問題ではある。アウディよりもわずかに軽いものの、ジャガーよりは300kgほど重たい。ボディサイズの割に重い理由は、既存のプラットフォームを流用したところが大きく、それはアウディと同様でもある。
最新のメルセデス・ベンツらしい車内空間
恐らく金額当たりで得られる航続距離は、EVを購入する際の重要な判断基準でもあるだろう。EQCの航続距離は、オプションの装備にもよるが、WLTPテストでアウディとほぼ同じとなる最大で416km。469kmを誇る軽量なジャガーには及ばない。またテスラ・モデルXに一番大きなバッテリーを搭載すれば、505kmが走れると公表されている。反面、EQCの価格はアウディやテスラよりも安価ではある。
英国でじっくりとEQCを走らせてみたが、エクステリアデザインは高級EVには物足りない、というのが率直な感想。GLCとの差別化をするためにも工夫されてはいるが、どこか似通った雰囲気も漂わせている。ひと目見てメルセデス・ベンツとわかりにくい点もEQCには不利に働くと感じるが、これからEQブランドのモデルが多くリリースされることで、見え方も変わってくるはず。今の段階での判断は少し早いのかもしれない。
一方でインテリアデザインは、新しく興味深い処理と、明確にメルセデス・ベンツ・ブランドの一員であることがわかるエレメントがバランスし、成功していると思う。前席も広々しているし、後席も子供3名か、大人2名がゆったり座れる空間がある。ダッシュボードに用いられている素材や、デザイン処理も見慣れたメルセデス・ベンツ流のものだが、革新的な雰囲気も同時に与えられている。
ただしインテリアの触覚的な質感やソリッド感では、アウディにはやや及ばないとも思う。成形の都合なのか、わずかだがパーツのラインが不自然だったり、トリムパネルを押すと場所によって軽いきしみ音を立ててしまうようだ。それでも、ハイテク感満載でラグジュアリーなオーラには満ち溢れている。
5種類のドライビングモードと回生ブレーキ
ドライビングポジションはSUVの基準で見るとやや低め。乗り降りのしやすさと、全方向への視界の良さを両立させている。インスツルメント・パネルの機能とインフォテインメント・システムには、継ぎ目すらわからないような1面の超ワイドモニターに集約されている点も、最新のメルセデス・ベンツらしい。もちろんタッチ式モニターではあるが、ステアリングホイールのリムに配されたコントロール・スイッチや音声コントロール、センターコンソールのタッチパッドなどでも操作は可能だ。
ドライブモードは他のメルセデス・ベンツと同じセレクターを介して変更でき、「スポーツ」から「最大レンジ」モードまで5種類が用意されている。ステアリングホイールの裏にはパドルが付いており、5段階からアクセルペダルを戻した際の回生ブレーキの効きの強さを選ぶこともできる。
今年のはじめにオスロで試乗した時は、ダイナミクス性能の磨き込みが必要だと感じられたEQC。今回の英国試乗でも、心を打つほどの洗練性とまでは及んでいなかったが、車内の落ち着きのある快適性は充分に優れているものだった。
5種類あるドライブモードと、5段階の回生ブレーキの設定で、自分好みの組み合わせを見つけるのには少々時間がかかる。クルーズコントロールとナビゲーション・システムからのデータを利用し、回生の設定を自動的にクルマ側で調整させることもできるが、ドライバーが効きの強さをパドルで調整した方が走らせやすい。マニュアルモードで減速するように、パドルで都度変えるのが良さそうだ。またコンフォートやスポーツモードでは、アクセルペダルのやや人工的な味付けが改善される様子。
満足感の高いドライビングフィール
EQCは先進的な半自律走行システムも搭載する。基本的に有用ながら、まだシステム任せにしておいて大丈夫な場面と、ドライバーが介入すべき場面とが不明確に生じてしまい、運転のしやすさが明確に向上するわけではない。だが特に混雑した高速道路などで、半自律走行システム任せでも安心して乗っていられる点は、明確なメリットだ。
積極的にドライビングをした時の満足感も高い。スポーツモードでは、EVということもあってレスポンスは良好。低速域からの加速も本当に鋭い。ジャガーIペースやテスラ・モデル3ほどドライバーに対する訴求力は高くないかもしれないが、アウディEトロン・クワトロは凌駕していると思う。間もなく比較テストも行う予定だから、結果が楽しみだ。わたしの感覚としては、ディーゼルエンジンやトップスペックのガソリンエンジン・モデルより優れた結果を残すと予想する。
ステアリングフィールは、どこか1枚フィルターを挟んだ印象を受けるひともいるだろう。しかし、ダイレクト感は充分あり、きついコーナーやインターチェンジでも、不安感を感じることはない。ボディコントロールは比較的ソフトな部類ながら、低速走行時は快適で、高速域でも充分に締まりのある正確な身のこなしを披露する。
トルクベクタリング機能も備える4輪駆動システムは、滑りやすい路面でも極めて高いトラクションと安定性を保持。ドライバーとの対話性という面では濃いわけではないものの、不足のないハイスピード・ドライブを楽しむことができる。
エンジンを搭載したクルマの完全なる代替モデル
メルセデス・ベンツが公表するWLTPによる航続距離は、おそらく苦労せずに実際に走ることができるだろう。かなりハイペースで、よりエネルギーを必要とするルーティングでの試乗だった今回、フル充電状態から290km程を走行したのだが、まだ56kmは走れると表示されていた。英国で平均的な、80~110km/h程度のスピードでクルージングをしていれば、5kmWhという高効率での走行も可能で、385km程度の距離は走れることになる。
もしラグジュアリーEVに興味があるのなら、メルセデス・ベンツEQCは有力候補として考えるべきだろう。だが、最も重要なストロングポイントが、ほかのライバルと比較して希薄な点は否定できない。周囲の目を引く特徴のあるアピアランスと、驚かされるようなドライビングの、両方だ。ラグジュアリーさや実用性の高さで、圧倒的なレベルというわけでもない。
だとしても、包括的な完成度の高さや、クルマとしての実用性の幅を考えれば、最も優れていると評価しても良いほどの説得力を持っている。スタイリングは、派生モデルの展開によって感じられ方も変わると思う。
純EVへ期待するすべて、興奮や洗練性、静寂性や落ち着き、先進的な技術、あるいは新しいモノへの興味などは、EQCは間違いなく満たしている。内燃機関を搭載したクルマの完全なる代替モデルとして、7万ポンド(910万円)を支払うのに相応しい仕上がりだといえる。
メルセデス・ベンツEQC 400 4マティックAMGラインのスペック
価格:7万4530ポンド(969万円)
全長:4762mm
全幅:1884mm
全高:1624mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.1秒
航続距離:373−416km
CO2排出量:−
乾燥重量:2495kg
パワートレイン:ACシンクロモーター2基
バッテリー:80kWhリチウムイオン
最高出力:407ps
最大トルク:77.4kg-m
ギアボックス:プラネタリーギア・シングルスピード
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みんなのコメント
余計なもの積まないで、もう少し軽くしたほうがいいんじゃない?