要人の警護や安全確保という視点で公用車選びは重要
地方自治体が公用車としてトヨタ・センチュリーを購入していることは、けっして珍しくないのですが、コロナ禍であり、けっして景気が良くないという状況において新たにセンチュリーを購入する事象がいくつか報道されるなかで批判の対象となっています。
ミニバンやSUVは大型でもFFなのに高級セダンがFRを採用するワケ
たしかにメーカー希望小売価格1996万2963円という高価なクルマを公用車にするくらいであれば、おなじトヨタであってもカローラならメーカー希望小売価格193万6000円~なので10台は買えるわけです。移動するだけであれば軽自動車も十分なはずです。税金という国民から預かったお金の使い方として、高級車を買うというのは間違っているという指摘はある意味で正しいように思えます。
とはいえ、そもそも論でいえば首長や議長に公用車を用意する目的はセキュリティのためです。移動中の安全を確保するためには公共交通機関を利用するより専用車にしたほうが警備面で有利になります。
ちょっと話は変わりますが、かつて銀行が経営破綻寸前になったときに頭取の専用車を廃止したことがありました。しかし、電車移動時のセキュリティを確保するために複数のSPを雇う必要があって、結果的に高くついたという笑い話もあります。
ですから、ある程度のセキュリティを考えると専用の公用車を用意するというのは合理的なのです。そうした安全面でいえばコンパクトカーよりも大きくて重いクルマのほうが衝突など事故に遭った際の被害も最小限に抑えることが期待できます。ですから、センチュリーはやり過ぎという声はあるかもしれませんが、ある程度のVIPを乗せるクルマであればEセグメント以上の乗用車を選ぶというのは妥当な判断といえるのではないでしょうか。
いってしまえば、トヨタでいえばクラウンを選んでおけばいいといえますし、最近では車内でのミーティングなどもしやすいアルファードのようなミニバンを選ぶのもありという風潮になっています。
日本のショーファードリブンという文化を守るために
では、公用車としてセンチュリーを購入する意義はないのかといえば、そこには意味があるといえます。基本的にセンチュリーは国産では唯一の純粋なショーファードリブンとして開発されています。個人所有をしているファンが存在していることを否定するわけではありませんが、メーカーとしては専属の運転手がいて、要人を乗せることを第一に考えたクルマづくりがなされています。
ショーファードリブンというのは単なる高級車ではありません。センチュリーの設計では後席の窓からVIPの方がバランスよく見えるようなデザインとするなど、通常の乗用車とは異なる配慮がされています。実際に座ってみるとわかりますが、後席も快適なだけでなく姿勢よく座りやすいような形状となっています。このように、それなりの作法に則って作られているのがショーファードリブンであり、それはEセグメントのセダンとは異なる自動車文化のひとつといえます。
はっきりいって、こうしたビジネスはスケールが拡大するものではありません。ですから、これまでセンチュリーを購入してきたようなユーザー(大企業、政府、地方自治体など)がセンチュリーの購入を控えるようになると、センチュリーの開発費が回収できなくなります。
トヨタがいかに大企業といえども、クルマづくりはビジネスですから儲からないクルマは消滅する運命にあります。そうなると国産のショーファードリブンが消えてしまう可能性が高まるのです。実際、国産ショーファードリブンとしてはセンチュリーの唯一のライバルであった、日産プレジデントがモデルライフを終えて10年が経っています。センチュリーがビジネスとして成立しなくなり、国産の純粋なショーファードリブンが消えてしまう日が来ないとも限りません。
その意味では、地方自治体など従来ユーザーがセンチュリーを一定の期間で買い替えることは、ある意味では自動車文化を守るための「式年遷宮」的な行為といえるのかもしれません。
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みんなのコメント
思います。
これ程までに完全なショーファーカーは、国産車では存在しません。
厳かながら気品もあり、日本の風土からのワビサビも感じられ、安全性、確実性も折り紙付き。
それなりの地位にある方、あんな下品な顔の車に乗れないでしょう。
自治体の財政等で、内部からそぐわないと判断されるのは仕方ないと思いますが、
外野がどーこー言う問題では有りません。
私は、公用車問題、その自治体で判断したのであれば、なんら問題無いと思います。