クリスマスシーズンの旅が好き!
岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第174回
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わが家の旅は1年に1度か2度。行く先はほとんど決まっている。いちばん多いのはハワイ。次に多いのはウィーン。その次は、パリ、ロンドン、ミラノ、ミュンヘン、サンフランシスコ辺りが並んでいる。
若い頃は、長距離を移動して、多くの場所を訪ねる旅が多かった。が、最近は1カ所から動かない旅ばかり。旅をする季節は、ハワイを除けばほとんど冬。夫婦共々、寒さには強いが暑さには弱い、、、のがいちばんの理由だ。
加えて、冬を選ぶ理由はもうひとつある。とくに、ヨーロッパは「クリスマスシーズンの雰囲気が大好き!」だから。さらに言えば、この時期のヨーロッパは観光客が少なく、飛行機もホテルもとりやすい。
飛行機は好きな席がとれるし、好きなホテルの好きな部屋もとれる。心地よい旅をするために、これは大切なポイントのひとつだ。
クリスマスシーズンのヨーロッパの街は、美しくイルミネーションされているし、活気もある。街は華やかだし賑わっている。
そう、賑わっている、、、のだが、観光シーズンのような「ザワザワした」感じではない。街に出ているのは地元の人達がほとんどなので、「賑わってはいても、どこか落ち着いている」、、、そんな雰囲気なのだ。
「寒くて夜の長い季節なんてイヤ!」という人が多数派だとは思う。、、、が、わが家的には「クリスマスシーズンのヨーロッパって最高!」となるわけだ。
クリスマスシーズンのヨーロッパが好きな理由のひとつには、クリスマスマーケットの存在もある。いや、もしかしたら、これがいちばん上位に位置する理由かもしれない。
僕にとって、クリスマスシーズンとは「クリスマスマーケットが開かれている時期」と言い換えてもいい。もし、クリスマスマーケットがなかったら、、、いくら寒いのが好きとはいっても、真冬ではなく、晩秋か初冬を選んでいるかもしれない。
クリスマスマーケットで、「モノ」を買うことはほとんどない。買うのは温かい飲み物と温かい食べ物。そしてブラブラ歩く、、、ただそれだけだが、楽しい!
地元の人達はホットワインを手に談笑している。白い息を吐きながら、、、。そんなハッピーな光景を見ていると、こっちもハッピーな気持ちになる。温かくなる。
いちばん最近行ったのはウィーン、、、シュテファン寺院広場のクリスマスマーケット。一昨年のことだ。コロナがなければ昨年も今年もどこかのクリスマスマーケットに行っていただろう。
最近は怠惰な旅しかしていないが、クリスマスシーズンのヨーロッパは、そんな怠け者のわれわれにはうってつけ。街の中心エリアにあって、クリスマスマーケットも徒歩圏内にあるホテルを選べばいい。
例えば、ウィーンなら、ホテルは「ザッハー」がいい。ケルントナー通り(ウィーンでいちばんの目抜き通り)にあるホテルだ。
好きなレストランも、好きなカフェも、ショッピングエリアも、、、すべてが徒歩圏内にある。シュテファン寺院広場のクリスマスマーケットも、ブラブラ歩くのにちょうどいい距離にある。
クリスマスシーズンのヨーロッパでは教会にもよく足を運ぶ。クリスチャンではないが、青山学院育ちなので、賛美歌は好きだし、クリスマスミサも好き。
クリスマスシーズンの教会なら、美しいクリスマスツリーも見られるし、特別な飾り付けを見られることもある。
特別な飾り付けといえば、今まででいちばん「美しい!」と思ったのはノートルダム寺院のそれ。黄色のリボンでシンプルに装ったものだ。黄色にはいろいろな意味があるようだが、僕は「愛を象徴する色」と受け取った。
あの装いを思い出す度に、大きな火災に遭ったノートルダム寺院の、1日も早い復興を願わずにはいられない。
クリスマスシーズンの教会では、運が良ければクリスマスコンサートにも出会える。オルガンだったり、合唱だったり、、、。
クリスマスミサでは、素晴らしい思い出がある。なんとなく行き、なんとなく出会ったロンドン郊外の町の教会。歴史ある、、、といった類ではない、小さくて質素な佇まいの教会だった。なにか催しがあるようで、教会の前には人が集まっていた。なんだろうと思い、なんとなく立ち止まって見ていたら、世話役らしき女性が歩み寄ってきた。
「よろしかったら、参加なさいませんか」と笑顔で声をかけられ、プログラムを手渡された。唐突なことだったので、僕は曖昧な返事をしたように記憶しているが、家内は「参加してみようよ」と興味津々。
プログラムを見ると、いわば「町内会のチャリティミサ」といったものだったのだが、シンプルなプログラムだった。寄付も募金箱にお金を入れるだけでよかった。
小さな町の小さな教会でのクリスマスミサはよかった。数十人の参加者が唄う賛美歌には、なぜか強く感情移入させられるものがあった。一曲だけ知っている賛美歌があったが、なにか胸が熱くなった。
声をかけてくれた女性にお礼を言って教会を出た。笑顔で見送ってくれた。周りの人たちも笑顔で、、、。町の名前は忘れたが、このクリスマスミサは一生の思い出になった。
「クリスマスシーズンの旅が好き!」とはいっても、すでに書いたように、最近のわが家の旅は怠惰そのもの。その一例として、一昨年、12月に行ったウィーンの「ある日の行動メモ」をご紹介しておこう。
ウィーンでの定宿は「ホテル・ザッハー」。国立歌劇場の隣であり、ウィーンの中心部という立地にある。大好きなショッピング街であるケルントナー通りにも面している。
まずは目が覚めるまで寝る。僕も家内も、時差で早く目覚めてしまうということがない。たまにそういうこともあるが、そのままベッドで目を閉じていると、再び眠りに入ってゆく。海外旅行に向いた便利な体質だ。
朝食はホテルで。ザッハーの朝食は美味しいし、レストランの装い/佇まいも好き。1日のスタートにはうってつけの時間が過ごせる。朝食が終わると部屋に戻り、コートとマフラーと手袋を着けて、ケルントナー通りの散策に出る。
クリスマスシーズンのウィーンの気温は0~5℃くらい。でも、風や雨がなければ気にならない。防寒の用意さえしっかりしていれば「気持ちがいい!」というのが僕と家内の受け取り方だ。
クリスマスシーズンのケルントナー通りは、午前中からけっこう人出が多い。でも、国立歌劇場前からシュテファン広場までは歩行者専用道路だし道幅も広い。なので、リラックスできる。
文字通りブラブラしながら、ウィンドウショッピングを楽しみ、シュテファン寺院広場のクリスマスマーケットを楽しむ。ランチは、カフェかマーケットの屋台で簡単に済ませてホテルの部屋に戻る。そして、なんとなくCNNを観たり、昼寝をしたり、、、。
夕方になると再びシュテファン寺院広場まで散策。同じ道を歩いても、昼間の表情と夜の表情は大きく変わる。それに、夜はストリートパフォーマンスなども多く見られるので、違う楽しさがある。
ディナーは早めにお気に入りのイタリアン・レストランで。ちなみに、ランチを軽めにして早めにディナー、、、には理由がある。
それはザッハートルテを食べるため。ほんとうは3時のおやつ辺りが良いのだが、その時間帯はカフェ・ザッハーが混んでいて落ち着けない。そこで、ディナーを早めにして、しばらく夜の散策を楽しんだ後、カフェ・ザッハーに。
1日を振り返りながらおしゃべりを楽しみ、ザッハートルテを、、、。このトルテ、かなりヘビーなので、ひとつを二人で食べる。
部屋に戻るのは22時辺り。一日中賑わっているケルントナー通りの人気もまばらになり始める頃だ。部屋に戻るとシャワーを浴びてから、CNNを観たり、メールやFBをチェックしたり、、、。そんなこんなで、なんとなく24~25時くらいになると眠くなる。
わが家の旅の怠惰ぶりがおわかりいただけただろう。でも、元々、街や店や人を観るのが好きなわれわれには、これで十分に楽しい。
去年も今年も海外には出られなかったが、来年のクリスマス・シーズンにはぜひ出たい。できればウィーンに行きたい、、そう思っている。
● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。
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