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レーシングドライバーが斬る! クルマの足まわりの「硬い」「柔らかい」ってそもそも何?

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レーシングドライバーが斬る! クルマの足まわりの「硬い」「柔らかい」ってそもそも何?

硬い・柔らかいは曖昧な表現で人によって捉え方は異なってしまう

自動車雑誌やネット記事で新車のインプレッションなどを見ていると「このクルマは足が硬い」とか「サスが柔らかくて乗り心地がいい」とか評されていることが多い。それはそれで感覚的な意味は伝わってくるのだけど、問題は同じクルマの評価でもA氏は「硬い」と評し、B氏は「柔らかい」と評していたりして、評論家レベルでも一貫性がないということが多くのユーザーが疑問に感じているところではないだろうか。

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そもそも足まわりの硬い柔らかいはどういうことなのか。自動車工学的にはサスペンションの硬い柔らかいは固有振動数で表す。固有振動数は1/2π√k/m(m:質量、K:バネ定数)の公式で求められる数値で、1秒間あたりの振動回数を示しHz(ヘルツ)の単位で表される。一般的な乗用車では1~1.5ヘルツ、スポーツカーなどは2Hz~、レーシングカーだと5Hz以上といったような数値になる。

そうは言われても一般的な方はピンとこないだろう。また自動車メーカーはサスペンションスプリングのバネ定数を公表しないのが一般的であるし、車輪ごとの質量や荷重値も不明なので自動車評論家などが試乗会で試乗し、そこで固有振動数を計算して求めるなどということは不可能だ。単純に使用しているコイルスプリングのバネ定数の数値でスプリングの硬さ自体を知ることができたとしても、それはほとんど意味をなさない。

たとえば5N/mmのバネ定数を持つコイルスプリングを車重の軽い軽自動車に装着すれば硬くなるが、大きく重い高級車に装着したら柔らかく感じられる。同じ車両同士であればバネ定数の絶対値で硬いか柔らかいかの差は出てきても、異なる車両同士では意味をなさなくなる。また速度域や旋回加速度によっても荷重は異なり、ゆっくり走っている場合とサーキットを攻めている場合では同じバネ定数でも固有振動数は変わってくるわけだ。

そこで、クルマのインプレッションのなかで「硬い」と評価されたときに、そのクルマの重量や走行姿勢、車速、路面入力などの諸情報が併記されているかどうかが極めて重要になってくる。

理論的に一般道をゆっくり走っていると「硬く感じる」サスペンションも、サーキットを全開で攻めると「柔らか過ぎる」と印象が変わるものだからだ。そこで僕の場合は「サーキットを全開で攻めたとき、ヘアピンコーナーでロールが大きくサスペンションが柔らか過ぎる」と表現したり「一般道で路面のつなぎ目など小さな段差をゆっくり通過する際のハーシュが抑えられ快適性が高い」などと、印象を感じた際の走行状況を解説するように心がけている。

入力がドライバーに伝わるまでにはバネ以外に多くの要因が存在

また足まわりの硬い柔らかいはサスペンションコイルスプリングのバネ定数だけによるのではなく、路面から車体を通じドライバーへと伝わっていく振動伝達の経路にも多くの要因が存在する。コイルスプリングはそのうちのひとつに過ぎないのだ。

ほかに何があるかというと、振動の伝達経路を見ていくとわかりやすい。路面からの振動はまずタイヤに入りホイール、ハブ、ブッシュ、アーム、マウントブッシュ、クロスメンバー、ショックアブソーバ、車体フレーム、フロアパネルそしてシートレールからシートを通じてドライバーへと伝達され、ステアリングコラムからステアリングホイールを通じてドライバーの手にも伝わる。これらを通して感じた振動数を硬いか柔らかいかの二択だけで表現するというのはあまりにも乱暴だろう。

サスペンションアームがアルミか鋳鉄か、クロスメンバーはアルミダイキャストか鋳鉄か、ショックアブソーバの減衰特性や封入ガスの圧力は、など振動の伝達経路を知ることは、乗り心地や足まわりの硬さを評価する際に重要な情報源になるのだが、それをインタビューしても答えてくれるメーカーはほとんどない。

マツダCX-8でリヤサスペンションのショックアブソーバアッパーマウントに、アルミダイキャストにインシュレーターラバーを仕込んだ手の込んだパーツを採用していた。それは一般道での乗り心地が素晴らしく、快適性が高く感じられたことの要因を尋ねた際に足まわりの担当エンジニアから新規採用パーツとして示されたのだが、それが主要因だと納得できるものだったわけだ。ただ同じアッパーマウントをCX-3やアテンザにも採用したが、こちらではCX-8ほどの効果が感じられず、クルマが代わり荷重が変われば印象も違ってくるいい例と言えた。

現代はさまざまなライターが雑誌やネットなど多くのメディア媒体でいろいろな表現をしてクルマの試乗記を紹介している。そこで表現される「足が硬い」とか「柔らかい」という評価はあまりに抽象的過ぎるだろう。読者の皆さんにおいては、自分の信頼できる評論家を見出だし、その記事をフォローして役立てていくことが大事だろう。

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