現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「高剛性」じゃなく「たわむ」ホイール! S660モデューロXの足もとには衝撃の技術が使われていた

ここから本文です

「高剛性」じゃなく「たわむ」ホイール! S660モデューロXの足もとには衝撃の技術が使われていた

掲載 更新 5
「高剛性」じゃなく「たわむ」ホイール! S660モデューロXの足もとには衝撃の技術が使われていた

専用チューニングで仕立てられた純正コンプリートカー

 ホンダの純正アクセサリーブランドとして知られるモデューロ。アルミホイール、サスペンション、エアロパーツの3つを軸に、安心して使える車検対応のカスタマイズアイテムを多数ラインナップしている。

「ジムニー」と「S660」が合体したら? 魔改造なトランスフォーム・オフロード車「S-ROCK」

 そしてモデューロパーツを一式装着した状態で販売されるコンプリートカーがモデューロXだ。車両とパーツ、取り付け工賃もセットになったパッケージなのだが、単にモデューロパーツを付けた状態でクルマごと売りますよ、というものではない。

 ルックスだけでなく、空力特性やサスペンション性能を考慮し、走りまで含めてトータルプロデュース。専用のテストコースでトライアルを繰り返して、じっくりとセッティングを煮詰めて開発されたスペシャルな1台がモデューロXとなる。

 だからモデューロパーツと違い、新型のデビューからしばらく経ってからの販売になるし、対応車種もかなり限られる。またモデューロXの専用パーツも数多く用意されるが、それらは基本的に単体で購入は不可。もちろん保安基準には適合しているので、車検などは問題ない。

スーパーGT供給ホイールをモチーフにした「MR-R01」

 S660のモデューロXは2018年に登場。主な装備はグリル一体型のフロントバンパーやリアロアバンパー、5段階減衰力調整機構付のサスペンション、ブラックスパッタ仕上げのアルミホイール、ドリルドローター&スポーツブレーキパッドなど。

 内装もシートやステアリングが専用マテリアル&カラーになり、メーターやコンソールプレートなどにモデューロXのロゴも入る。

 何かと注目度が高いのは見た目の変化も大きいエアロパーツだろうが、今回は改めてアルミホイールにスポットライトを当ててみたい。

 商品名は「MR-R01」。デザインは開口部を大きく取った8本スポークで、見方によっては細身の4本ツインスポークのような印象もある。軽快かつスポーティなルックスだが、それもそのはず、これはスーパーGTでNSXに供給されているレーシングホイールがモチーフ。

 正確にはそれとデザインを共有する市販NSX用の「MR-R03」というモデルがあり、そのS660向けバージョンといった感じだ。

 ちなみにMR-R03は鍛造製で、フロント用19インチが38万5000円/1本、リア用20インチは44万円/1本もする。

 MR-R01は鋳造製だしサイズも小さいので、フロント用15インチが3万6300円/1本、リア用16インチが3万8500円/1本とグッとお手頃になる(※MR-R01はブラックスパッタ仕上げのもの。価格はいずれも税込)。

ホイールをあえて変形させることで走りを向上する

 だからといって「見た目だけレーシーなホイールでしょ」と侮ってはいけない。MR-R01は公道を走るスポーツカーであるS660に最適な剛性バランスを追求している。具体的には適度な「たわみ」を生む剛性になっているのだという。

 手で触っても柔らかさなど感じないアルミホイールだが、実はコーナリング時などは若干たわんで(=変形して)いる。クルマが曲がろうとする時、遠心力によって車体は外側横方向に引っ張られる。するとまずタイヤがたわみ、続いてホイールもたわみ、サスペンションが動いて車体がロールする。

 ホイールの変形は剛性が高いほど小さくなり、その方がコーナリング性能も良いといわれている。確かにサーキットのようにフラットな路面を走る分にはそうだろうが、一般道においては違った側面もあるのだという。モデューロを展開するホンダアクセス広報によると、

「タイヤがブレイクするくらいのGが掛かった際、高剛性だけを追求したホイールでは、その瞬間に弾かれるようにタイヤのグリップが失われます。しかし剛性を最適化することで、限界域でのタイヤのスライドがマイルドになるんです」。

 考え方としては、ホイールをサスペンションの一部として扱うのだという。前述のように、路面からの入力は、タイヤ→ホイール→サスペンション→ボディの順だが、ただなすがままにホイールをたわませるのではなく、サスペンションのように任意にたわませるということか。

タイヤの性能を100%使い切ることができる

 ホイールのたわみによってタイヤのブレイクを防ぐ、またはマイルドにする。それはタイヤの性能を使い切るということでもある。S660のモデューロXに標準設定されているタイヤは、ヨコハマの「ADVAN NEOVA AD08R」という、ストリート向けながら非常にグリップ性能の高いモデルだ。

 そのタイヤがブレイクするような状況は限られるだろうし、滑った瞬間にトラクションコントールも効く。しかし、タイヤの限界性能ギリギリまで使い切れるというのは、特にS660ユーザーにとっては有用だろう。限界の高さは心の余裕にも繋がる。

 サーキットと違い、一般道では橋の繋ぎ目やマンホールのフタもあるし、わだちやデコボコした路面も多い。ホンダアクセス広報によると、「ギャップを越えた際の突き上げ感なども、MR-R01は柔らかくなる。比べていただければ乗り心地の変化は体感していただけると思います」とのこと。

試行錯誤でリム剛性とディスク剛性のバランスを最適化

 最適なたわみを生むため、MR-R01ではタイヤと密着する部分の「リム剛性」と、スポーク部分の「ディスク剛性」のバランスにこだわって作られている。開発にあたっては、様々な厚みのリムと、スポーク裏の肉抜き具合の異なるディスクを複数用意。両者を色々なパターンで組み合わせ、走行テストを繰り返すことで理想のバランスを追求した。

 ある程度は理論上の計算で設計できるだろうが、実際に走ってみなければ本当の性能は分からない。これまでたわみを生かす設計のホイールは例がなかったこともあり、完成までには手間も時間も掛かったという。

「モデューロ開発アドバイザーの土屋圭市さんも、最初は『剛性バランスで本当に走りが変わるの?』と少し懐疑的でしたが(笑)、テストしてもらったら『こんなに違うんだね』と驚かれていました」。

S660専用ホイールだけど他車種流用もアリか!?

 そんな画期的な性能を持つMR-R01は、モデューロX採用パーツながら単品で購入もできる。というか、もともとはモデューロXが登場する前に純正オプションとして開発されたモデューロパーツなのだ。それが非常にいい出来だったため、モデューロXにも採用された次第。むしろ、このホイールに合わせてモデューロXの専用サスペンションが開発されている。

 サイズはフロント用が15インチ×5Jインセット+45、リア用は16インチ×6.5Jインセット+50、いずれもP.C.D100-4Hと純正と同一。カラーはモデューロXで採用されているブラックスパッタリング仕上げのほか、マイチェン前のモデューロXに使われていたステルスブラック塗装、スタンダードなプラウドシルバー塗装の3タイプあり。

 S660専用ホイールという位置付けだが、当然サイズさえ合えば他車種にも付く。フロント用はほとんどの軽自動車に問題なく付くだろうし、リア用もカスタマイズした軽自動車やコンパクトカーなら履けなくもない。

 ホンダアクセスとしては「保証の対象とならず装着はおすすめしない」としながらも、N-ONEオーナーズカップのモデューロ車両にMR-R01(フロント用)を採用した例もある。もちろん自己責任にはなるが、興味のある人は試してみるのもいいかも!?

こんな記事も読まれています

もう“永遠の2番手”じゃない。ヌービル、悲願のWRC初タイトルは「諦めず頑張り続けたご褒美。残る全てはオマケだ!」
もう“永遠の2番手”じゃない。ヌービル、悲願のWRC初タイトルは「諦めず頑張り続けたご褒美。残る全てはオマケだ!」
motorsport.com 日本版
「くっそかっこいいやん!」トライアンフの新型ミドルアドベンチャー登場にSNSは好感触
「くっそかっこいいやん!」トライアンフの新型ミドルアドベンチャー登場にSNSは好感触
レスポンス
メルセデス・ベンツ「Gクラス」の電動仕様「G580」のスゴさとは? 戦車みたいに“その場”で旋回! BEV化にて舗装路も悪路も「走りが格上」に
メルセデス・ベンツ「Gクラス」の電動仕様「G580」のスゴさとは? 戦車みたいに“その場”で旋回! BEV化にて舗装路も悪路も「走りが格上」に
VAGUE
「横で積む」それとも「縦に置く」? 知らないドライバーも多数! 外した「夏タイヤ」の「正しい積み方」正解はどっち!?
「横で積む」それとも「縦に置く」? 知らないドライバーも多数! 外した「夏タイヤ」の「正しい積み方」正解はどっち!?
くるまのニュース
初めてのスポーツバイクにオススメ 『境川サイクリングロード』を走ってみた
初めてのスポーツバイクにオススメ 『境川サイクリングロード』を走ってみた
バイクのニュース
サインツ予選2番手「マクラーレンに勝ってタイトルをつかむため、最大限のポイントを獲得する」フェラーリ/F1第22戦
サインツ予選2番手「マクラーレンに勝ってタイトルをつかむため、最大限のポイントを獲得する」フェラーリ/F1第22戦
AUTOSPORT web
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
Auto Messe Web
【カワサキ×IXON】初コラボでジャケットを設定!2024秋冬から販売中!緑がチラチラ、かっこいい!  
【カワサキ×IXON】初コラボでジャケットを設定!2024秋冬から販売中!緑がチラチラ、かっこいい!  
モーサイ
残す? それともクビ? レッドブル、ラスベガスでも大苦戦セルジオ・ペレス処遇を最終戦後の会議で決定へ
残す? それともクビ? レッドブル、ラスベガスでも大苦戦セルジオ・ペレス処遇を最終戦後の会議で決定へ
motorsport.com 日本版
4K映像 × EIS手ブレ補正機能搭載のバイク用ドライブレコーダー「AKY-710Pro」の予約販売が12月末スタート!
4K映像 × EIS手ブレ補正機能搭載のバイク用ドライブレコーダー「AKY-710Pro」の予約販売が12月末スタート!
バイクブロス
悲願の「全固体電池」が実現間近! ホンダが2020年代後半の量産開始を目標にしたパイロットラインを初公開
悲願の「全固体電池」が実現間近! ホンダが2020年代後半の量産開始を目標にしたパイロットラインを初公開
THE EV TIMES
ホンダ『N-BOX JOY』の走りを変える! ブリッツの「スロコン」「スマスロ」が登場
ホンダ『N-BOX JOY』の走りを変える! ブリッツの「スロコン」「スマスロ」が登場
レスポンス
「えっ…ホント!?」マイ自転車に取り付ければ“電動アシスト化”! フル充電で約50kg走行する「P.Wheel」って何?
「えっ…ホント!?」マイ自転車に取り付ければ“電動アシスト化”! フル充電で約50kg走行する「P.Wheel」って何?
VAGUE
究極の新型「爆速ラグジュアリーSUV」実車公開! 史上最もパワフルな「新型ディフェンダーオクタ」が置かれたイベントとは
究極の新型「爆速ラグジュアリーSUV」実車公開! 史上最もパワフルな「新型ディフェンダーオクタ」が置かれたイベントとは
くるまのニュース
全長3.4m切り! ダイハツ「車中泊“特化型”軽バン」がスゴい! 超デカい2段ベッド×ちょうどいい感じの「シンプル仕様」! カスタムセレクト「コンパクトAS」どんなモデル?
全長3.4m切り! ダイハツ「車中泊“特化型”軽バン」がスゴい! 超デカい2段ベッド×ちょうどいい感じの「シンプル仕様」! カスタムセレクト「コンパクトAS」どんなモデル?
くるまのニュース
茨城県唯一の本格的石垣城砦「笠間城」に昂る!
茨城県唯一の本格的石垣城砦「笠間城」に昂る!
バイクのニュース
【ハーレー】カタルーニャサーキットでレース仕様ロードグライドのテスト走行を実施
【ハーレー】カタルーニャサーキットでレース仕様ロードグライドのテスト走行を実施
バイクブロス
えぇぇぇ!? 三菱製[軽スポーツ]が今めちゃくちゃ[アツい]って知ってた??
えぇぇぇ!? 三菱製[軽スポーツ]が今めちゃくちゃ[アツい]って知ってた??
ベストカーWeb

みんなのコメント

5件
  • スチールホイールの方が乗り心地がいい、というのは、ホイールが僅かに撓むことによるもの。
    タイヤの入力をホイールがハブに伝える際の振動の入り方や周波数毎の振動伝達特性が異なることで、同じタイヤでも騒音の感じ方や振動の入り方が変わる。ホイールが振動を吸収せずにサスペンションに入りボディに伝わる事で、乗り心地の悪化を招くこともある。
    ホイールを軽量化し、不快な振動を伝えず、ハンドリングを向上させる…ってとても凄い事。
  • 群サイでセッティングしたんですよね土屋さん
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

203.2315.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

102.8630.0万円

中古車を検索
S660の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

203.2315.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

102.8630.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村