ルパンのクルマがBEVに
「ルパンのクルマがBEV(電気自動車)になった」
【画像】ルパンのクルマが進化【500と500eを比較】 全82枚
2022年4月上旬、夕方のテレビニュースが、フィアット新型「500e」について報じた。
このように、横浜で開催されたメディア向け試乗会に参加したメディア関係者が、新型500eに対して好意的な感想を持つ中、主催したステランティスジャパンによると「技術面でより詳しく知りたい」という声も多かったという。
そこで、日をあらためてオンラインで日本とイタリアを結び、新型500eの開発担当者と日本のメディアが直接情報交換する場が設けられた。
情報交換の中身に触れる前に、新型500eに関するこれまでの流れを紹介したい。
新型フィアット500eが世に出たのは、2020年3月。
本来はスイス・ジュネーブモーターショーでワールドプレミアの予定だったが、ちょうどその頃、新型コロナ感染症がグローバルで拡大しはじめたため、ジュネーブモーターショーは開催数日前に急遽、キャンセルとなってしまった。
そのため、新型500eはその時点ではまだめずらしかったオンラインでのデータ公開という形で世に出た。
その時点では、急激なBEVシフトのトレンドがはっきりと見えていなかったこともあり、新型500eについて自動車業界では「ポテンシャルは感じるものの、市場でどこまで受け入れられるかは未知数」といった雰囲気があった……。
ステランティスの挑戦
ところが、2020年後半から2021年にかけて、英国ジャガーが「2025年までに……」、スウェーデンのボルボは「2030年まで……」とBEV専業メーカーへの転換を宣言した。
さらに、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)は2021年7月、地球環境に対するグリーンディール政策で、自動車に対する厳しい規制について公表した。
「2035年までに欧州域内で販売する新車100%が事実上、BEVまたはFCV(燃料電池車)」という方針だ。
これを受けるかのように、ダイムラー(現:メルセデス・ベンツ)は「市場環境が整えば、2020年代末までグローバルで新車100%をBEV(またはFCV)にする」と発表し、日系自動車メーカー各社は衝撃を受けた。
メルセデス・ベンツは自動車創世記から自動車業界の牽引役であり、その事業方針はグローバルに極めて大きな影響力を持つからだ。
さらに、興味深いのが、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とPSA(プジョー・シトロエン)が融合して誕生したステランティスの将来に向けた事業方針だ。
合計14ものブランドによって、電動化やライフスタイルに合わせた商品展開を仕掛けてきた。
その中で、フィアットは2027年に欧州でBEV専業メーカーとなり、その中核として新型500eが果たす役割が大きい。
ほとんどすべてが新設計
こうした欧州を基点とするBEVシフトの大波が日本市場にも押し寄せている。
日系メーカー各社、ドイツ勢、フランス勢、さらには伏兵として韓国ヒョンデ(現代)も日本市場にBEVを本格導入する。
そうなると重要なことは、商品の差別化だ。
新型500eには、先進技術とファッション性がほど良くブレンドされている点が、メディアやユーザーの注目を浴びている理由であろう。
さて、フィアット本社関係者とのオンライン意見交換に話を戻すと、「先代500eとの技術的、また開発方針に対する違い」に関する質問があった。
フィアット側では先代を「500カリフォルニア」と呼ぶ。米カリフォルニア州の環境規制であるZEV(ゼロエミッションヴィークル)規制法への対応が、導入の主な理由だったからだ。
当時の米クライスラーが2010年1月、北米自動車ショーでコンセプトモデル「500EV」を発表。
そもそも、2000年代にクライスラーはBEVプロジェクト「ENVI」があり、500EVもその流れを汲むはずだった。
その後、搭載する電池メーカーの選択などで修正などがある中、500の車体を活用するかたちでのBEV化となった。
一方、新型500eでは「車体は先代とはまったく別物。電動コンポーネンツで先代と共有するのは全体の4%にとどまる」という、新設計である。
フィアットらしいモノづくり
バッテリーパックは24kWhから42kWhへとほぼ2倍の電気容量になった。
「新しい車体における運動特性を十分に考慮し、パック全体としてコンパクトな設計とした」という。
冷却方法は液体を使うが「外気温があまり高くない春の時期などでは、冷却用のバルブを閉じて、冷却溶剤はモーターや制御系部品向けに集約される」という特長を紹介した。
搭載する電池セルの種類やサプライヤーについては未公開だったが、体積あたりのエネルギー密度、または質量あたりのエネルギー密度ともに先代500eと比べて大きく向上していることをデータで示した。
電池パックの補償期間については「8年間、または走行距離16万km(10万マイル)としており、その場合の電池パック全体としての劣化は30%程度(70%残)を想定している」という。
また、ドライビングモードについて「スポーツモードがないのは、500eの商品性を考慮した結果。また、シェルパモードというネーミングはマーケティング的な要因が大きい」と説明した。
シェルパモードは、電池残量が少なくなった場合、最高速度を80km/hに制限し、エアコンやヒーターを自動的にオフして電池消耗を実現する。
リースやサブスクリプションモデルでの販売を強化する新型500e。日本でのBEV普及に大きな役割を果たしてくれそうだ。
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みんなのコメント
デザインは素晴らしいのでエンジンも積んでほしかった。
フロアは左ハンドル用のままなの?