現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > プリウスの役目は終わったのか? 元祖HV車の功績と現在の立ち位置

ここから本文です

プリウスの役目は終わったのか? 元祖HV車の功績と現在の立ち位置

掲載 49
プリウスの役目は終わったのか? 元祖HV車の功績と現在の立ち位置

 1997年12月、「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーで歴史的な登場をはたした、トヨタ「プリウス」。

 世界初のハイブリッド量産車として華やかなデビューを飾り、また先進技術搭載車でありながら使い勝手と省燃費性能を併せ持った存在として重宝されたプリウスは、かつて販売台数ナンバーワンの座を獲得。

プリウスの役目は終わったのか? 元祖HV車の功績と現在の立ち位置

 しかし直近2021年度(2021年4月~2022年3月末)の年間販売台数は44,935台(前年同期比76%)に留まり、登録車販売ランキングでは15位まで順位を落としている。

 もちろんかつて「ほぼ唯一のハイブリッド車としての選択肢」だった頃と比べると、日本自動車界の様相は大きく変化しました。ではプリウスはその変化についていけているのか? それとも取り残されているのだろうか?

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOYA

初代プリウスは売れば売るほど赤字だった!?

 初代プリウスに搭載されたのは、1.5L ミラーサイクル式ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステム。10・15モード燃費は28km/Lと、当時としては驚異的な数字だった。

 ボディは5ナンバーサイズで、ちょっと高さのあるセダンという印象。室内空間は広く、後部座席でも大人がラクに座れる高効率パッケージングであった。

 車両本体価格は215万円から。この価格は「21世紀へGO」という語呂合わせから付けられた価格、という噂もあったが、こうしたジョークがあったことも面白いエピソードだ。バッテリーやモーター、制御ユニットなど、新たに搭載されたテクノロジーを考えると、当然この価格では利益が出なかったため、初代プリウスは売れば売るほど赤字だったといわれている。

初代プリウス。奇抜なデザインではなく、カローラのような親しみやすさも感じられた。それでいてフロントグリルまでシームレスにつながるボンネットなど、斬新なディテールで先進性もしっかりアピール

時代がプリウスに追いついた!! 三代目は大ヒットを記録

 ただ、販売において、プリウスは二代目までは苦戦をしていた。メカニズムの観点からするとお得な値段だったとしても、同クラスのカローラに比べたら相当割高であるし、いくら燃費がよくても通常のモデルサイクルでは、価格差をガソリン代で回収するのは難しい。バッテリーだっていつまで持つのか未知数。ハイブリッドだからといってめちゃくちゃ走りが良いわけでもない。ネガティブな要素を考えていくと、新しいもの好きでなければ簡単には手が出ない存在だった。

 ところが、2009年5月に登場した三代目プリウスは大ヒットとなった。ハイブリッドシステムはほとんど新開発ともいえる「リダクション機構付THS-II」を搭載し、高速道路での燃費向上を図って1.8Lのガソリンエンジンを採用した。スタイリッシュでモダンなデザインもバランスが良く、プリウスのクリーンなイメージに直結するものだった。

 もちろんメカニズムやデザインだけが売れた原因ではなく、著名なハリウッドスターやセレブが「エコカー」に乗ることの意義を発信してプリウスを選んでいたことや、政府のエコカー減税、補助金導入によるバックアップも大きかった。日本では2009年から2012年の年間販売台数で首位、2015年に登場した4代目も2016年と2017年、2019年の前半まで首位を獲得。プリウスはこうして人気モデルへと駆け上がった。

エコカーの代表選手として存在意義を維持できるか!?

 プリウスのすごいところは、ハイブリッドモデルとして先進的なメカニズムを搭載しているのに、いたって走りが「普通」であるところだ。ものすごいスポーティなわけでもなく、運転が難しいわけでもない。デザインも決して奇抜ではなく、親しみ深さがありつつも、先進性と機能性を随所に盛り込んだディテールだ。

 もし初代プリウスの価格が庶民には手の届かないほど高かったり、ハイブリッドシステムが既存の高級車の一パワーユニットとして登場していたとしたら、ここまでハイブリッドは浸透していなかっただろう。プリウス自体は初代も二代目もヒットしなかったとはいえ、三代目の登場までには確実に「庶民が買えるエコカー=プリウス」として認知されていた。今これだけハイブリッドが浸透しているのもプリウスの存在があったからこそだ。

 ところが今は、SUVもミニバンもコンパクトカーも高級セダンもハイブリッドが選べるし、クリーンディーゼルやダウンサイジングターボによってエコカーの選択肢は広がっている。欧州モデルを中心にバッテリーEVも続々と登場しており、プリウスを選ぶ理由が少なくなくなっている。

 プリウスがあくまでもエコカーの絶対王者として残りたいのであれば、次世代のエコカーとして進化していくのが必要だと筆者は考える。「カーボンニュートラルとは選択肢を1つに(つまりバッテリーEV一点に)絞ることではない」と主張する豊田章男社長の言葉通り、トヨタは、バッテリーEVのほかにも、プラグインハイブリッド車や水素エンジン車の開発にも積極的だ。

 もし次のプリウスが「水素エンジン+モーター」のようなハイブリッドとして登場するなら、トヨタの看板モデル、そしてエコカーの代表選手として存在意義を維持できるが、はたしてどうなるか。

 クルマ自体がエコカーであることが大前提となってきている昨今、プリウスが生き残るには総合的な性能でもライバルを圧倒していく必要がある。ハンドリングや実用性、デザインなどでどこまで存在感・優位性を示せるか。次期プリウスにも大いに期待している。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

こ、これアウトランダーじゃね!? 決算説明から見えた[日産PHEV第1号車]は三菱からのOEMか?
こ、これアウトランダーじゃね!? 決算説明から見えた[日産PHEV第1号車]は三菱からのOEMか?
ベストカーWeb
日産「フェアレディZ」にワゴンが登場!?  実は「ステージア」ベースで「リーフ」リアゲートを移植…車検をとって公道走行可能なカスタムカーでした
日産「フェアレディZ」にワゴンが登場!? 実は「ステージア」ベースで「リーフ」リアゲートを移植…車検をとって公道走行可能なカスタムカーでした
Auto Messe Web
実はサーキットより面白い? 本気のオフロード走行のススメ SUV人気の裏にある魅力
実はサーキットより面白い? 本気のオフロード走行のススメ SUV人気の裏にある魅力
AUTOCAR JAPAN
「オートモビリア」って、なに? ミニカーや古本などがずらりと並んだ「アミューズメントゾーン」にはキャンギャルも登場して熱気に包まれてました
「オートモビリア」って、なに? ミニカーや古本などがずらりと並んだ「アミューズメントゾーン」にはキャンギャルも登場して熱気に包まれてました
Auto Messe Web
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
乗りものニュース
沼にハマる 『レトロモビル2025』でフランス車の魅力に迫る 高い技術力と芸術的デザインの融合
沼にハマる 『レトロモビル2025』でフランス車の魅力に迫る 高い技術力と芸術的デザインの融合
AUTOCAR JAPAN
トヨタ「86」&スバル「BRZ」用クラッチは「歯打ち音」を低減!「ヤリス」用は半クラが扱いやすい…待望のアイテムが「小倉クラッチ」からリリース!
トヨタ「86」&スバル「BRZ」用クラッチは「歯打ち音」を低減!「ヤリス」用は半クラが扱いやすい…待望のアイテムが「小倉クラッチ」からリリース!
Auto Messe Web
先端の「クマ」も再現 ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(2) 受賞多数のオープンボディ
先端の「クマ」も再現 ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(2) 受賞多数のオープンボディ
AUTOCAR JAPAN
帽子を焦がしたレーシングシャシー ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1) バラバラからの再生
帽子を焦がしたレーシングシャシー ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1) バラバラからの再生
AUTOCAR JAPAN
トヨタ勝田貴元、惜しくも優勝逃す2位フィニッシュ……3.8秒差で僚友エバンスに軍配|WRCラリー・スウェーデン
トヨタ勝田貴元、惜しくも優勝逃す2位フィニッシュ……3.8秒差で僚友エバンスに軍配|WRCラリー・スウェーデン
motorsport.com 日本版
スズキの超ハイルーフ「本格SUV」に期待大!「ジムニー」超える“悪路走破性”に「まるで軍用車!?」な斬新デザイン採用! 日常から“アウトドア”まで大活躍の「エックスヘッド」コンセプトがカッコイイ!
スズキの超ハイルーフ「本格SUV」に期待大!「ジムニー」超える“悪路走破性”に「まるで軍用車!?」な斬新デザイン採用! 日常から“アウトドア”まで大活躍の「エックスヘッド」コンセプトがカッコイイ!
くるまのニュース
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
WEB CARTOP
被災3年…ついに架設スタート! 阿武隈川を渡る国道399号“軽くなる”新しい橋の姿は?
被災3年…ついに架設スタート! 阿武隈川を渡る国道399号“軽くなる”新しい橋の姿は?
乗りものニュース
“ランクル250”をハードコアにカスタマイズ!? オフロードチューニングのスペシャリストが最新コンプリートカー「AT37」を発表!
“ランクル250”をハードコアにカスタマイズ!? オフロードチューニングのスペシャリストが最新コンプリートカー「AT37」を発表!
VAGUE
FDJ2がMIDホイール一色に! 公式ワンメイク化でドリフトシーンに新時代到来!!…大阪オートメッセ2025
FDJ2がMIDホイール一色に! 公式ワンメイク化でドリフトシーンに新時代到来!!…大阪オートメッセ2025
レスポンス
【特集】レッドブルの非情なドライバー育成……しかし彼ら以上にドライバー育成に注力してきた存在はゼロ
【特集】レッドブルの非情なドライバー育成……しかし彼ら以上にドライバー育成に注力してきた存在はゼロ
motorsport.com 日本版
前の車との「車間距離」めちゃ大事! でも運転中「どうやって」測る!? 「高速」や「一般道」で適切な車間を取る方法とは
前の車との「車間距離」めちゃ大事! でも運転中「どうやって」測る!? 「高速」や「一般道」で適切な車間を取る方法とは
くるまのニュース
まるでリアルRPG!? 目指せ鈴鹿8耐優勝! レーシングライダー石塚健が新チーム立ち上げを発表
まるでリアルRPG!? 目指せ鈴鹿8耐優勝! レーシングライダー石塚健が新チーム立ち上げを発表
バイクのニュース

みんなのコメント

49件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.33538.1万円

中古車を検索
プリウスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.33538.1万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村