クルマの世界を変えるかもしれない「Unreal Engine」
2つの世界が融合すれば、現状が大きく変化するのは当然のこと。「メタバース」が到来すると、自動車業界でも劇的な変化が起きるだろう。それがいつ起こるかは誰にもわからないが、ソフトウェア業界の関係者は、そう遠くないうちに起こると確信している。
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「メタバース」とは、フィジカル・リアリティ(物理的な現実)、オーグメンテッド・リアリティ(AR)、バーチャル・リアリティ(VR)の3つが一体となったもので、ある程度はすでに到来していると言える。人々が仮想のアバターを介して対話し、現実と仮想の世界がミックスされるのだ。
メタバースを実現する鍵の1つは、ゲーム開発などを手掛けるEpic Games社が開発したゲーム用エンジン、Unreal Engineだ。事業開発責任者であるダグ・ウォルフ氏によると、同エンジンを使用した世界最大級のオンラインゲーム「Fortnite(フォートナイト)」では、世界中から3億5000万人から4億人のプレイヤーがオンライン環境で交流していると推定されるという。
ウォルフ氏は、次のように語っている。
「わたし達は以前から、インターネットが3D化して永続的なデジタル世界となるメタバースが実現すると考えてきました。サイバー空間に入るという古い言い回しが現実のものとなり、それが急速に進んでいるのです」
「ビデオゲームを作ることで知られているツールが、このような形で関係しているという考えは新しく、人々に理解してもらうには時間がかかりました。1つはこの革命が起きていること、もう1つは自動車メーカーが注目する必要があるということです」
開発者の思い描く風景を再現できる3D技術
オンラインゲームの開発者が、カーデザイナーやエンジニア、マーケッターと交代することで、ゲームソフトは新型車を作るためのツールとなり、その使いやすさから圧倒的な力を発揮する。一部の高度な状況を除いて、デザイナーやエンジニアは、自分が想像するものを形にするのにプログラマーを必要としない。
この方法は実践的で、共有も簡単だ。ウォルフ氏は、製品やブランドをリアルタイムのデジタル3Dで表現することが、企業の標準的なプレゼンテーション方法になりつつあると主張する。例えば、オンラインで利用できる自動車メーカーのカーコンフィギュレーターのほとんどは3Dになっている。
「CAD(コンピュータ支援設計)における3Dは20年以上前からありましたが、まだまだクレイモデリング(粘土による実物大の模型)の方が重視されていましたね。コンピューターから実際に消費されるものへの変換は、大きな距離がありました」
「人々は、購入したり、作業したり、製品のライフサイクルを通して関わったりするものの3D表現を見たいと思っています。自動車業界にとっては、マーケッターの使用するツールが、デザイナーやエンジニアが使用するツールと同じであり、またクルマのヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)を支えるツールと同じであることを意味します」
ウォルフ氏はこの概念を、本物の「デジタルツイン」であり「信頼できる唯一の情報源」と表現し、さらに3Dデータを保存する場所を、いくつもの「サイロ」から1つのデジタルな場所に移すものだと述べている。ある企業が、まだ存在しないクルマを紹介する映像を作ろうとしたとき、必要なのはUnreal Engineの開発範囲内で使用できる3Dの「アセット」だけで、映像制作者が好きなようにレンダリングすることができる。
これまでは、3Dの壁を背景に映像を撮影すると、視差(視聴者の視点から見た物体のずれ)が感じられなかったが、ゲームエンジンを使うことでそれが解消される。
この技術は、テレビシリーズ「The Mandalorian」が制作されているドイツ・ミュンヘンのハイパーボール・スタジオで撮影された、フォルクスワーゲンID.4の広告にも使われた。巨大なLEDの壁により、3D背景セットをリアルタイムに生成するだけでなく、実際の場所と同じように本物の「照明」と「反射」を生み出す。
Unreal Engineは、ダイムラーでも使用されている。クラウド(ローカルに設置されたサーバーではなく、インターネットを介してアクセスされるサーバー)を介して分散された低コストのコンピューティングを使用して、デザイナーやエンジニアが世界各地の拠点でVRモデルを共有できるようにしている。
ウォルフ氏によると、ダイムラーではこの新しい手法を「エンジニア向けのマルチプレイヤー・オンラインゲーム」と呼んでいるという。CADデータとマルチユーザーのゲーム環境のパワーを可能な限りシンプルな方法で統合しているのが特徴だ。BMWも、ビジュアライゼーション戦略の中心としてUnreal Engineを使用している。
現実と仮想空間を組み合わせた自動車体験
次の段階は、この技術をクルマのHMIに使用することだ。煩雑なレンダリングに頼らず、HMIデザイナーが3Dグラフィックを直接操作することで、プロセスが大幅に短縮され、イメージ通りの仕上がりになる。
この方法でHMIを作成したのは、ゼネラル・モーターズが初めて(新型ハマーEVで)だ。技術が発展すれば、メタバースがクルマの中に入ってくることも考えられる。現実と仮想現実の違いという点では明らかな課題があるが、車内の環境や体験が誰も想像できないほど変化する可能性もある。
こうした商業的な側面によって、技術の進歩が加速していくだろう。Epic Games社はサポートを有料化しているが、Unreal Engineの入手と使用は無料だ。製品の販売収益が一定の基準を超えた場合にのみパーセンテージを受け取る。
「わたし達は、開発におけるソフトウェアの使用を収益化していません」とウォルフ氏は説明する。「当社の創業者でありCEOのティム・スウィーニーは、ディベロッパーとプログラマーを生業としていますが、クリエイターの時点でマネタイズすることは間違っていると感じています」
「人々が成功するためのツールを提供し、その成功をマネタイズするための何らかの仕組みを見つけることが大切だと考えています。それがゲームで起きていることなのです」
自動車業界では、Epic Games社はメタバースの実現が収益に繋がると期待している。つまり、Unreal Engineにより構築されたメタバース上で、顧客がクルマを選び、試乗し、購入すると、自動的にコミッションが適用されるというものだ。
大胆な計画だが、自動車業界にかつてないほどの大きな変革をもたらす可能性があり、メーカーと顧客の両方が恩恵を受けることになるだろう。
フェラーリとオンラインゲーム
フェラーリ296 GTBは、Epic Games社がUnreal Engineで制作した世界最大級のオンラインゲーム「Fortnite(フォートナイト)」に登場した。同ゲーム内で実在するクルマが起用されるのは初めてだ。
フェラーリは、2017年からUnreal Engineを使って、296 GTBのコンフィギュレーターやウェブサイトに掲載されているPVなどを制作してきた。オムニチャネルと呼ばれる方法をとっているので、どの面に興味を持っても同じ体験が得られ、身近で使いやすいなものになっている。
フェラーリはすぐに、映像制作におけるゲーム用エンジンの可能性に気づいた。296 GTBの発表映像では、巨大なLEDバックスクリーンを使用して、制作チームが思い描く風景の中にクルマを配置した。参考画像をベースに、老舗のソフトウェアCinema 4Dを使ってプレビューを作成。
その後、Unreal Engineを使用して、画像のライティング、シェーディング、テクスチャを開発し、Ultra Dynamic Sky、Advanced Water MaterialなどのプラグインとBlueprint Scripting Systemを使用して、Disguiseという別のデジタル・プロダクションシステムと連携させた。
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