■見た目は普通で高性能だった軽自動車5選
「羊の皮を被った狼」といえばプリンス「スカイライン」が有名で、見た目は普通で高性能エンジンや、高性能なサスペンションを搭載したクルマのことを示します。
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もっとシンプルにいうと「見た目は普通で速いクルマ」ではないでしょうか。
今回、軽自動車のなかから「見た目は普通で高性能なクルマ」を5車種紹介します。ただ、ご存知の通りいまの軽自動車は上限64PSの馬力規制があります。したがって「狼」というほどは荒ぶってはいませんが、いまでは考えられないほどの中身の軽自動車ばかりです。
●ホンダ「トゥデイ Xi」
ホンダは1974年に一旦軽自動車市場から撤退しますが、1985年に「トゥデイ」発売によってホンダの軽自動車が復活します。
その「トゥデイ」も幾度かのモデルチェンジを経て、最終型がこの2代目「トゥデイ」でした。
発売は1993年で、先代にはなかった4ドアもラインナップし使い勝手を向上。そして今回紹介する「トゥデイ Xi」もラインナップされました。
「トゥデイ」は全グレードで660ccのE07A型直列3気筒エンジンを搭載していましたが「トゥデイ Xi」のエンジンは「ビート」に搭載されていた3連独立スロットルを採用しています。
最高出力は「ビート」の64PSよりも少しマイルドになって58PSでしたが、車重は「ビート」が760kgに対し、「トゥデイ Xi」は680kgと80kgも軽かったため、加速ではビートより速く、隠れた軽スポーツカーとも言えます。
●スズキ「セルボモード SR-Four」
スズキの高性能軽自動車といえば「アルトワークス」ですが、この「アルトワークス」を超える内容のエンジンを搭載したのが「セルボモード SR-Four」です。
「セルボモード」は550cc時代の「セルボ」から数えて4代目となり、1990年に発売されました。「セルボモード SR-Four」のエンジンは直列4気筒DOHCターボの「F6B型」ですが、このエンジンが搭載されたのは「セルボモード SR-Four」のみでした。
もともと「セルボモード」は「アルト」の上位にあたるスペシャルティカーという位置づけですが、ここまで凝ったエンジンを「セルボモード SR-Four」のみに搭載したというのも、バブルという時代背景があったからでしょうか。
ほかにも「セルボモード SR-Four」はピレリタイヤを標準で採用していたり、後期型では4輪ディスクブレーキが装着されていたりと、軽自動車らしからぬ装備で話題となりました。
■各社がスぺシャルモデルを用意する時代に登場した軽
●ダイハツ「ミラ X4」
ダイハツ「ストーリア」のモータースポーツベース車「ストーリア X4」は713ccから120PSを発揮する、まさに「羊の皮を被った狼」でしたが、その元祖的存在が「ミラ X4(クロスフォー)」です。「ミラ TR-XX」の4WD版という位置づけで、装備も充実しAT(TR-XX X4)も用意されていました。
1990年に発売された3代目「ミラ」ではFFの「ミラ TR-XX」というホットモデルが存在しましたが、ライバルだった「アルトワークス」は4WDだったため、対抗すべく4WDの「ミラ X4」が開発されました。
「ミラ X4」は「ミラ TR-XX」の4WD版という位置づけで、装備も充実しAT(TR-XX X4)も用意されていました。「ストーリア X4」と違い、「ミラ X4」はモータースポーツベース車ではなかったからです。
しかし、ストイックなモータースポーツベース車もあり、それが「ミラ X4R」です。装備は簡素化され、エンジン内部やターボチャージャーが「ミラ X4R」専用の部品として強化されおり、ラリーやダートトライアルに参戦するために販売されました。
当時は、ダイハツが「ミラ」、スズキが「アルトワークス」、スバルが「ヴィヴィオ」でラリーなどに参戦しており、三つ巴で激戦を繰り広げていました。そして各社ともスペシャルモデルを用意するという、いまでは考えられない時代でした。
●三菱「ブラボー MZ-G」
世の中に軽ハイトワゴンが登場する以前、軽自動車のワゴンといえばワンボックスタイプの商用バンをベースにしたものが主流でした。三菱「ブラボー」もバンの「ミニキャブ」をベースにしたワゴンです。
この「ブラボー MZ-G」は1991年に発売されました。注目すべき点はエンジンで、直列3気筒DOHC15バルブターボが搭載されていました。
3気筒15バルブということは1気筒5バルブです。これはF1のエンジンにも採用された手法で、たくさんの空気を吸い込み、パワーを上げることができました。
そもそも市販車で5バルブエンジンを持っていたのは、国産では三菱とトヨタ、ヤマハのみで、海外ではフェラーリとVW、アウディくらいです。
軽ワンボックスワゴンにこんな高性能エンジンを搭載していたのも驚きですが、当時の三菱では5バルブエンジンが高性能軽自動車用として定番で、「ミニカ」「パジェロミニ」のほか商用車の「タウンボックス」などにも搭載されていました。
■パワー競争の象徴的存在の軽
●ダイハツ「フェロー MAX SS」
いまでこそ軽自動車は64PSを超えることなく馬力競争は終焉していますが、1960年代から1970年代にかけて、軽自動車が360ccだったころはパワー競争が勃発していました。
きっかけとなったのはホンダ「N360」と言われています。「N360」は発売時点で31PSあり、他車は25PS前後しかありませんでした。そして「N360」に追いつけ追い越せと馬力競争が始まったのは自然な流れです。
ダイハツは「フェロー」を軽乗用車の主軸に置き、パワー競争に参加します。そして1970年に軽360cc時代で最強となる「フェロー MAX SS」が登場します。
「フェロー MAX SS」は水冷2サイクルエンジンを横置きでフロントに搭載し、前輪を駆動するFFとなっていました。
ツインキャブのエンジンは40PSと他を圧倒する高出力を発揮。最高速度は公称で120km/hをマークし、それにともない足回りも強化されていました。
高性能なエンジンは低速トルクが細くなるという弊害もあり、タコメーターの3000rpm以下がイエローゾーンになっていて、かなり気を使うエンジンだったことでしょう。
その後、排ガス規制が強化されると各社ともパワーダウンを余儀なくされ、馬力競争も終わりを迎えました。
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