電動バイクの世界選手権 Moto Eでも活躍したメーカー「エネルジカ」
次世代の主力モビリティと目されて久しいEV。特に都市部では電動四輪車や電動キックボードをたびたび見かけるようになりましたが「電動バイク」はまだ普及のスタートラインに立ったばかりという印象です。しかも、電動バイクといってもスクーターの形をしたものがほとんど。そんな中で、イタリアのメーカー「エネルジカ」は、フォルム・性能ともに従来の内燃機関を搭載した大型スポーツバイクに匹敵する電動バイクを製作しています。
【画像14点】571万円で171馬力超!イタリアの電動スーパースポーツバイク「エネルジカ エゴ+」を写真で解説
エネルジカの実力は折り紙付きで、2019年に開始された電動バイクで行われるワンメイクレース「FIM Enel MotoE World Cup」に、2022年まで「エゴ コルサ」というレーシングマシンを供給していました。今回取り上げる「エゴ+」は「エゴ コルサ」の公道向けバージョンといったモデルです。
エネルジカ エゴ+の航続距離は400km超!? 高性能かつ実用性も確保
エゴ+の最高出力は126kW、馬力(ps)で言えば171.3馬力です。これは筆者が所有している1000ccスーパースポーツモデル、カワサキ ニンジャZX-10R(2016年型マレーシア仕様)とほぼ同じ値。また、最大トルクは215Nm。これはハーレーダビッドソン最新モデル、CVOストリートグライド(排気量1977cc)の183Nmをも上回っています。そして、最高速度は240km/h、0-100km/h加速は何と2.85秒! まさに驚異的な性能ですね。
さて、電動バイクでよく課題として挙げられる「航続距離」についてはどうでしょうか? こちらは、市街地走行想定で420km、高速道路を巡航する場合は200kmが目安となっています(スロットルを戻すことで発電する「回生ブレーキ」の利用頻度により異なるとのこと)。つまり、短距離走行を想定したスクータータイプの電動バイクでは難しかったツーリングもこなせるということです。充電時間も、急速充電なら30分~40分で済みます。
充電ポートのひとつは4輪EVでよく用いられているCHAdeMO規格。サービスエリアや自動車ディーラーなどに設置されているので、ルートの途中で1ヵ所、充電ポイントを見つけておけば、日帰りツーリングならほぼほぼ問題ないでしょう。
で、実際のところ電動スポーツバイクって「速いの?」
やはり、ライダーとして気になるのは「実際に乗ってみるとどんな感じなのか」ですが……ありがたいことに、筆者は試乗する機会を得ました。場所はサーキットで、試乗したのは短時間(数分)でしたが、とても興味深いマシンでした。
キーオンで電源を入れてスタータースイッチを押すと、無音で発進スタンバイ。アイドリングから鼓動を感じる内燃機関との違いが、早くも感じられます。クラッチはなく、アクセルを開けるだけでスムーズに発進。ホームストレートで加速感を試そうとアクセルをワイドオープンすると、ものすごい力強さでダッシュ! リヤタイヤが「キュッ」と鳴るのが聞こえました。このインパクトはリッタースーパースポーツ以上です。
ストレートから第一コーナーへの進入前、かなり早めにブレーキを掛けます。車重が約260kgあるので制動距離に余裕を持ったほうがいいかな……と思ってのことでしたが、スピードを落とすのに難儀することはまったくなく、入力に対して十分な制動力が発揮され、安定してコーナー進入の準備ができました。
回生ブレーキも自然な効きです。サスペンションはマルゾッキ製倒立フロントフォークとビチューボ製リヤモノショックの組み合わせ、ブレーキシステムは前後ともにブレンボ製、タイヤはピレリのスポーツタイヤ「ディアブロ ロッソ3」を採用しています。丹念に作り込まれたと感じられる車体と、これら実績あるメーカーのパーツ・タイヤの組み合わせには、信頼が持てます。
コーナリングは、ペースを上げるにつれて車重を意識する必要が出てきますが、ツーリングペースくらいならば挙動に大きな影響はない感じです。左右の切り返しも同様。コーナーからの立ち上がりではアクセルをジワッと開けていきましたが、唐突感のないスムーズな加速で立ち上がっていけました。スポーツバイクとして、思いのほか自然に楽しめることにはとても感心させられた試乗でした。
なお、気になる車両価格ですが、日本では571万円~となります。一般的な内燃機関採用大型スポーツバイクと比べると割高感がありますが、こんなハイレベルなスペックを持つ公道向け電動バイクは、今のところこのモデルしかないと言えます。各地にある販売店で試乗できる場合もあるので、興味を持った方はぜひ実車に触れてみてください!
report●林 康平 photo●柴田直行/林 康平
エネルジカ「エゴ+」主要諸元
最高出力:126kW(171ps)
最大トルク:215Nm(21.9kgm)
最高速度:240km
航続距離:420km(市街地)
0-100km/h加速:2.8秒
シート高:810mm
充電時間:急速充電30~40分、普通充電7~8時間
■水冷3相のハイブリッド同期モーターを搭載。モーターとインバーターで冷却システムを共有することでコンパクト化と熱効率の向上を実現しています。
■充電ポートはシート下に2つ装備。1つはCHAdeMO規格。普通充電では7~8時間かかります。車両に付属する普通充電用ケーブルは、エアコン用などに使う3口ソケットに対応したものです。
■フロントは330mm径のブレーキディスクをダブルで装備。ブレーキキャリパーはブレンボ製で、ラジアルマウントの4ポット。
■リヤは240mm径のシングルディスクに2ポットキャリパーをセット。リヤサスペンションはサイドマウントされています。
■モーターを動かすためのバッテリー搭載で車重が重めとはいえ、剛性を確保しつつスイングアームの裏側を肉抜きするなど、極力軽量に仕上げる工夫も見られます。
■削り出し部品を各部に採用。タンデムステップステーも削り出し。
■なお、国内では登録上は250ccクラスと同等の扱いとなるため、車検はない。ただし出力が20kWを超えるので、運転には大型自動二輪免許が必要。
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バッテリーはいくらするのかが大事だと