国産車の最高峰スポーツカーにして、日産を代表するブランド「GT-R」。デビュー以来、多くの羨望を集めてきた現行型R35型GT-Rは、毎年細かい改良を続け、デビュー時は480ps/60.0kgmだった3.8L V6ツインターボエンジン(VR38DETT)も、現在は600ps/66.5kgm(NISMO)まで高められている。
そんな現行型GT-Rもデビューから丸10年が経過し、11年目に突入した。さすがにそろそろ次期型開発のニュースが聞こえてくるはずだが、いっこうにそうした情報は入ってこない。それどころか関係者からは「開発中止となった」、「計画はあるが凍結されているようだ」とネガティブな噂ばかり。
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日産にはなんとしても、GT-Rブランドを守り続けていただきたいし、ぜひ次期型を開発し続け、デビューさせてほしい。
そんな思いから、自動車ジャーナリストの鈴木直也氏が特別寄稿してくれた。
日本の至宝、GT-R。新型開発のニュースをお待ちしています。
文:鈴木直也
■現行GT-Rは「どん底」の状態で開発計画が進められた
現行R35GT-Rの販売が開始されたのは2007年12月。デビュー以来すでに10年を超える時間が流れた。
次期GT-Rはどうなるのか? あるいは次期モデルは存在しないのか? 日産ファンならずとも、クルマ好きなら大いに気になるところではある。
現行型GT-Rもデビューから10年が経過。毎年外観、内装、エンジン等に細かい進化が加えられている
現実にはわれわれメディア関係者にも次期GT-R開発のニュースはまったく聞こえてこないのだが、もし仮にGT-Rが現行モデルで打ち切りだとしたら、それはあまりにもモッタイナイ話と言わざるを得ない。
R35GT-Rの最初のコンセプトカーが一般に公開されたのは2001年の東京モーターショー。この頃の日産がどういう状況にあったか、みんさん覚えていますか?
先代型にあたるR34GT-Rが生産を終了するのは2002年8月。それに先立つ2001年11月の東京モーターショーでGT-Rのコンセプトモデルがサプライズ発表された。その後、2003年の東京モーターショーで「2007年に市販」と発表、2005年の東京オーターショーではプロトタイプ仕様が公開された(写真は2005年発表のGT-Rプロト)
日産は有利子負債が2兆円以上にまで膨れ上がり、1999年にルノーの資本参加を受け入れてCOOとしてカルロス・ゴーンが着任。背水の陣で“日産リバイバルプラン”というリストラプログラムが始動する。
座間工場は閉鎖、村山工場は売却、サプライヤー系列はすべて白紙化……。最悪ともいえる経営環境下でGT-Rプロジェクトはスタートしているのだ。
これが何を意味しているかといえば、非情なコストカッターとして知られるカルロス・ゴーンをもってしても「日産にGT-Rは必要」という判断があったということだ。
おそらく、「日産の経営立て直し」そのものについては、カルロス・ゴーンは絶大な自信を持っていたはず。だから、焦点はもう少し長期的な展望にある。復活なった日産が成長してゆくためにはブランド価値を牽引するクルマが必須。そのためにGT-RとフェアレディZは最後の切り札として残す。これがリストラの嵐に耐えてGT-RとZが生き残った理由といえる。
いま振り返ると、これはまさに“慧眼”といっていい判断だった。
■EVや自動運転が「ブランドを代表」で本当にいいのか
もし仮に、R35GT-Rプロジェクトが中止になったとして、GT-Rが存在しないその後の日産を想像してみてほしい。ブランドを代表するクルマはEVのリーフで、環境/ハイテク分野には強いけれどスポーティなキャラクターは弱体化。ブランドイメージはかなり寂しいものとなっていたに違いない。
たしかに、現在はクルマ業界100年に一度の激変期で、EV、AI、自動運転、ライドシェア、モビリティ・アズ・ア・サービスなど、新たに手掛けなくちゃいけない新技術/新事業がゴマンと控えている。そんな中で(相対的に見れば)GT-Rみたいな伝統的スポーツモデルの重要度は落ちているのかもしれない。
けれども、ここで伝説的ともいえるスポーツカーを途絶えさせてしまうのは、長期的に見たらぜったいマイナス。存亡の危機に瀕していた日産リバイバルプラン時代ですら残したGT-Rを、3期連続で過去最高益(7050億円)を更新する経営環境下で放棄するのは理解できない。
日産の大きな欠点は「継続性の欠如」だ。どんなにいいクルマを造っても、あるいはどんなにいい開発・営業施策を講じても、それが長続きしないためライバルに逆転を許していまう。ルノー傘下で生まれかわったはずの日産だが、20年近く経つとまたぞろ昔の悪い癖が顔をのぞかせているのだろうか?
■競合他社にはない「独自のストーリー」を大切に
ともあれ、いまの日産の技術トレンドの中で次期GT-Rを実現しようとすれば、電動化が大きなテーマとなるのは必然。テスラのように高性能・高価格のEVスポーツを目指すのか、あるいはフェラーリやポルシェのように高性能エンジン+電気モーターのハイブリッドを目指すのか、方向はどちらかに絞られる。
いずれにしても、電動化パワーの可能性をアピールするツールとしてGT-Rを位置付けたいところだ。
たとえば、昨年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー“IMx”あたりをベースに思考実験してみるというのはどうだろう。
2017年の東京モーターショー、日産ブースの主役となったのは電気自動車SUV「IMx」だった
IMxのメインテーマは未来の自動運転EVだが、ツインモーターで320kW、700Nmというパワープラントは侮れない。トルクだけでいえばGT-R NISMOの652Nmを超えている。
しかも、このスペックは非現実的なものではなくリーフのモーター×2で容易に達成可能。これに、北米向けの3L V6ツインターボ(401ps/48.4kgm)を組み合わせれば、世界中どこへ出しても恥ずかしくないハイブリッドスーパーカーができあがる。
最近よく「ブランドには物語が必要」と言われるが、日産が力を注いでいるEVについても、競合他社と差別化するなら独自のストーリーが欲しいはず。GT-Rこそ、その物語を紡ぐ最大の武器になると思うのだけど、いかがでしょう。
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